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◇Re:もう一つの戦い②◇

「なっ――! 赤く……!?」


 男が驚きます。


「まずはゴブリンどもを――!」


 させません!

 わっちは地面を蹴り、ゴブリンたちの前に出ました。

 腕を交差させ、男の攻撃を受け止める。

 それから、痰を吐き出すように口から粘液を出し、男の顔に当てました。


「うわっ!」


 男がほんの少し仰け反り、力が弱まったところを空かさず蹴りで突き放す。

 間髪入れずに、私はゴブリンの周りに半球状の厚い粘膜を張りました。


「くそっ――スライムのくせに!」


 男は粘液を手で拭い、剣を素振り――

 その男を中心として、突風が当たりに吹き荒れます。


「きゃああぁっ!」


 女性が――!

 連れて行くという使命もあります。

 変に傷つけてはいけません。


 長く伸びるネバネバした粘液を飛ばし、綺麗に女性を掴みました。

 が、それ以上に勢いの反動が大きすぎて、伸び切った粘液で反発――

 女性は、本来跳ぶはずだった方向とは逆に跳び、樹木に顔面から当たってしまいました。

 はっ……やってしまった。

 本末転倒とはまさにこのこと。


「――雷の舞(ライトニングブレイク)!」


 男が剣を掲げそう叫んだ途端、周囲に怪しげな暗雲が。

 私は体の周囲を〝小さな穴の開いた粘膜〟で覆い、防御姿勢をとりました。

 攻撃を()()するのです。


 激しい稲光とともに、私の体を何十もの電撃が襲います。

 しかし、何の痛みもありません。

 むしろ――くすぐったいくらいです。


 暗雲が消え、目の前にはぜぇぜぇと息をする男がいました。

 どうやら体力をかなり消耗した模様。

 しかし、私は攻撃に特化したような技能(ワザ)は持ち合わせておりません。

 あの男が疲労しきって倒れるのを待つのが得策でしょう。

 もしくは――〝アレ〟を。


「――ス、スライムのくせに……!」


 私はナズミです。


「こうなったら――切り刻んでやる!」


 安直な考えです。

 ――はぅっ……痛みが。

 わっちもそろそろ限界が近づいているやもしれません。

 挑発をして攻撃を誘いましょう。

 倒れた方が負けなのです……!


「そのような考えでは、私になど勝てませんよ!」

「く、くそおおおおぉぉ!」


 ひ弱な雄叫びをあげ、男が襲ってきました。

 明らかに動きが襲いです。

 私は片方の腕を構えて防御姿勢をとりました。


 ガンッ!


 その刃は、鋼鉄の如く硬い体液には一切無害です。


「な、なんだ……と? 神様から貰った武器が通用しないなんて――!?」


 男は何か怯えていました。


「しょぼくれた攻撃ですね、アマアマです。いいえ、()()()()ですよ」

「――っ! っるせぇ!」


 男が剣を振ります。

 それを弾き、よろけた男に蹴りを一発。

 あまり強くはありませんが、これで男の疲労度を稼げるのなら何度でもやってやりましょう。


「はぁ、はぁ……」


 疲労がたまってきたみたいですね。

 うっ……なんだか、体がとろける妙な感じが。

 もう長くは持たないようです。

 仕方ありません、決着をつけてやりましょう。

 あまりやりたくなかったのですが――


「すみません、男の方。私たち急ぎの用があるのです」

「は、はぁ……?」

「少々手荒ではありますが、ある意味自業自得なので我慢をしてくださいまし」


 私は素早く男の背後に回り込み、足を蹴って転ばせました。


「先ほどの電撃、ありがとうございますね。美味しかったので、少々〝おすそわけ〟を」


 男を粘液の鎖で押さえつけ、無理くりに開口させました。

 そうして、先ほど張った膜を引きはがして口の中へ。

 男の口を閉じ、よく噛ませてごっくんさせます。

 さて。



【――ご飯の時間です(パラライズイーター)。】



「――っ!? うわああああああああ!」


 男の体からは電気が放出され、男は麻痺して動かなくなりました。

 大げさに泡まで吹いております。


「……ふぅ」


 わっちはゴブリンたちの粘膜を取りました。

 やっと終わっ……――!?

 な、なんですか!?

 苦しい、痛い、目が熱い。体が燃えるように熱いです。

 尋常ではない苦痛――全身が悲鳴をあげています。

 こ、このままでは…………!


 次の瞬間――わっちは自分の意志とは無関係に倒れてしまったのです。



 それからの記憶はありません。

 熱くて、痛くて。

 でも途中、何か温かな光を感じました。

 そうですね……。例えるならば、お日様に当たっているような感覚です。

 あれは一体――何の仕業だったのでしょうか。



 私が目を覚ましたのは、翌日の昼下がりでした。

 誰もいない小屋、小鳥のさえずり、溶けた毛布……。


 テーブルには、書置きがしてありました。



 ユーノちゃんへ


 悪いことをしてきます。


     クラリスより



 クラリス――?

 誰のことでしょうか。

 わっちが眠っている間に……おや、体が元に戻っております。

 昨日の記憶が欠けています。

 激しい痛みは覚えていますが。

 結局、水色髪の女性は捕らえることができたのでしょうか……。


 あたりをキョロキョロ見回すと、すぐ近くに割れたおうちがありました。

 そうです、修復しましょう。


 私は壺の破片を取り、1つ1つ形が合うもの同士を粘液でくっつけました。

 なんだか、新しい遊びができたようで楽しいです。

 今度から定期的にお壺を割りましょうか。

 …………いや、やめておきます。


 壺を修復し終えた頃、外で足音がしました。

 ユーノが帰ってきたのでしょうか。

 よく耳を澄ますと、複数の足音が聞こえます。

 どうやら、3名のようです。


 ナズチが扉を開け、ユーノが入ってきました。

 水色の髪の女性も一緒のようです。


「おかえりなさいませ」


 のわっ!?

 ユーノが私に飛びついてきたではありませんか。


 ――ごめんね、ごめんね。


 と、私の胸の中で静かに謝っております。

 ふふ、まだまだユーノも子どもです。


「ユーノのせいじゃありませんよ」


 それだけ言って、ユーノを優しく包みました。

ビギビギってビギナーのことです。

次話もよろしくお願いいたします!(誤字があればご報告いただけると嬉しいです!)

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