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◇Re:もう一つの戦い①◇

長かったので2つにわけました

 壺。

 ひんやりしていて、それでいてジメっとしていて、気持ちが良いものです。

 あの岩陰の数倍――いえ、数十倍くらい。


 ユーノはただいまお出かけ中。

 ナズチと共に、ゴブリンという生物を見つけに行きました。

 しかし……少し遅いですね。

 何かあったのでしょうか。


「ただいまー」


 おや、帰ってきました。

 何もなか――な、なんですか、あの緑色の生物は……!?


 わっちは咄嗟に隠れました。


「ナズミ、ただいま」


 ふ、蓋を開けないでください、ユーノ!

 わっちの居場所を晒してはいけません!

 わわわわ、鼻の垂れた緑色の生物が――近づいてくるではありませんか!


「おい、アンデッド娘。これはなんだ?」

「だからアンデッドじゃなくて人間だって……。この中にいるの、メルトスライムです。ナズミっていいます」


 どうして教えてしまうのですか!

 ユーノ、嫌いです……!


 ――翌日、ユーノが復讐の策戦を話し合うということで、光の入る窓を全て遮りました。

 テーブルにぼんやりと光るランプを置くと、緊張感がより一層強くなります。

 臓器のないわっちでさえ、苦しくなるような雰囲気です。

 しかし、あんなに形相をしているゴブリン――

 それなのに、なかなか優しくて驚きでした。

 〝生物は見かけによらない〟とはこのこと。

 森で無残な姿にされていたオヂサンらは例外ですが。


 ――お前が提案してみろ。

 ――ならば、私の策戦タクティクス、お教えしましょう。


 ……何やら言い合っているご様子。

 被り物をしているゴブリンとユーノです。

 両者、ピリピリしておられますね。


 ――一味いちみの内、女1人を拉致する。


 ユーノがそう言った瞬間、外で轟音が鳴りました。


「戦力分散もあるけど、それ以上に、冒険者一味のリーダーの核――つまり()()を破壊することを目的としている」


 なんてむごい発想なのでしょうか、ユーノ。


「お前、本当に人の娘か!?」


 スライムである私ですら、ゴブリンの言い分には同意してしまいます。

 ですが同時に、ユーノがきらきらと輝いて見えました。

 わっちも、何かおかしいのでしょうか。

 いいや、ユーノが変なだけですかね。


 ――そこのナズミも一緒に連れて行ってほしい。


 おや、わっちの話をしているみたいです。


「いいかな、ナズミ」


 どうやら、拉致をする際にわっちを連れていくとの話。

 もちろん、


「分かりました。全力でお手伝いいたします」


と返答しました。


 ――話し合いが終わり数時間後……。

 ゴブリンたちが帰ってきました。

 ご様子から予想するに、成功したようです。

 すぐに、ユーノがゴブリンたちに指示をし、わっちを壺ごと運んでいきました。





 まだ夕暮れでもないというのに、森は深閑しんかんとしておりました。

 ゴブリンたちの掛け足の音のみが静かに鳴っています。

 家を出てから、結構な距離を走った気が……。


「(……! おい、あれを見ろ!)」


 突然、ゴブリンたちが立ち止まりました。

 何かを見つけたみたいです。


「(小娘の言っていた奴らか? いや、だが紫髪の者は……)」


 水色の綺麗な髪をした女性の隣にいる男性。

 その男性が突如、私たちのいる方へ向かって剣を振ってきました。

 男性の振るった剣からは見事な空気の刃が――

 それも、木々を切り裂きながらやってきたのです。


「――! 防壁シールド!」


 盾を持ったゴブリンが前に出、横に長い透明な壁を作り出しました。

 なんと、こんなことができたのですか。

 しかしとても辛そうにしておられます。

 このままでは――


「ぬわあぁッ!」


 案の定、吹き飛ばされてしまい――

 防壁シールドを張ったままこちらに吹き飛んできます……!


 その防壁シールドは、わっち含めゴブリン全員を巻き込みました。

 あっ、わっちのうちを離さないでください、ゴブリン!


 パリィッ!


 ああ、せっかくのいいお壺が。

 綺麗に割れてしまいました……。


「そこにいるのは誰だ!」


 ゴブリンたちが立ち上がり、武器を手に取ります。

 わっちも早く体を――


「我らは誇り高きホブゴブリン! 貴様らは……名を名乗れ!」

「……そうか、村の件だな」

「――つまり、お前らが!」

「ああ」


 ゴブリンたちの息が荒くなっています。

 憎しみが――伝わってきます。


「(我らがあの男の気を惹きます。ナズミさんは……あの水色髪の女を、どうか!)」


 そう言って、盾持ちゴブリンを前にし、束になって向かうゴブリンたち。

 攻撃をなるべく一か所に集めるのですね。

 バラバラになって戦わず、防御をすること重点を置いています。

 なるほど頭の良い方たちです。

 時間を稼ぐ――と。


 さて、人間への変態も完了しました。

 すぐにでもあの女性を――


『『『ぐわあぁぁっ!』』』


 ゴ、ゴブリンたちがやられています。

 やはり、先ほどの様な攻撃が多いと、防壁シールドだけでは――!


 わっちは、男が剣を振り下ろす前にゴブリンたちの前に立ちました。


「――粘液防壁デローシールド!」


 防壁シールドを張ったというのに、この衝撃――

 なんて強い斬撃波なのでしょうか……!


「ひゃぁっ!」


 粘液防壁デローシールドを破壊され、斬撃波がもろに体へ。


「うあぁ……っ」


 お、お腹が、削られて……。

 痛い、痛いです、こんな――今まで痛みなんて感じなかったはずなのに……!

 うっ、何かが上に上がってくるような――


「――うえええ! ごほっ、おぅ、おええぇぇ!」


 く、苦しい!

 分裂をしたいわけでもないのに、口の中からスライムが――

 と、止まりません!

 おかしい……、おかしいです!


「スライムか」


 分裂したスライムを踏みつぶし、私を見下ろす男。

 右手に持つ剣をゆっくりと左側へ。

 わっちを、〝斬る〟おつもりのようです。

 せっかく拾ってもらったというのに……わっちは、何もできずに生命いのちを斬られてしまうのでしょうか。

 オヂサンではないのに、わっちは無惨に殺されてしまうのでしょうか。


「少女の形をしたって、俺は惑わされない」

「――ナズミさん!」


 横からきた盾持ちゴブリンが、わっちのことを強く押しました。

 わっちはそのまま、横に倒れてしまいました。


 そして次の瞬間――

 盾持ちゴブリンが、男に斬られたのです。



 それはあまりにも衝撃的な光景でした。

 体が震えて仕方ありません。

 ゴブリンはその場に倒れました。

 赤い液体が、緑色の雑草に染みて、土が赤く染まって――

 他のゴブリンたちも、その場景にあんぐりと口を開けています。

 言葉になりません。

 それ以降、ゴブリンはピクリとも動かなくなりました。


 ――死んだのです。


 防壁シールドを使わなかったのは、『時間がなかったから』なのでしょうか。

 何にせよ、私の実力不足で死んでしまったのです。

 いいえ――死なせてしまった。


「はぁ……はぁ……はぁ――」


 殺される。コロされる。

 ――みんな、このままだと殺されてしまう。

 わっちのせいで、わっちのセイで――


「ああ、ああぁ……!」


 体が熱くてたまりません。

 胸が苦しくて辛いです。

 息が止まるような、体が締め付けられるような……気持ち悪いです。


「おええぇ……」


 吐き気がとまりません。

 いえ、()ではなく〝嘔吐〟が止まらないのです。


 わっちは自分の口となる部分を手で押さえました。

 なんだか、体が赤くなってきて……。

 熱くて、業火の中にいるみたいで、苦しくて、体が震えて――


 …………。


 これ以上、被害を増やすわけにはいきません。

 ゴブリンたちを守ってみせます。

 必ず。



 ――――最期の生存本能インスティンクト・メルト



 体が益々熱せられ、ドロドロとした赤い粘液が地面に滴ります。

 心なしか体がより硬くなった気が……。

 全身を強く握られているような痛みはありますが――



 これなら、守りきれる――!

スライムかて生物。死ぬ前に子孫を残そうとします。

次話もよろしくお願いいたします!(誤字があればご報告いただけると嬉しいです!)

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