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◇壊した平凡◇

メルトスライムのナズミの中のお話です。一人称になります。蛇足。

ちょっと独特な世界観ですが、温かい目で見守ってあげてください。

<●><●>

 スライムは何も食べません。

 スライムは物を溶かします。

 スライムはぴょんぴょん跳ねるのです

 スライムは悪くありません。

 スライムは人間が大好きです。

 スライムは――


 わっちは、小さな脳でそんなことを考えています。

 それも絶え間なく、ずっと、延々と。


 ――無駄である。


 ――蛇足である。


 それが分かっていても、思考を鈍らせることがきらいなのです。


 ――今日はいい雨天おてんき

 絶好の日陰ぼっこびより。

 岩陰に行き、天から降り注ぐ滴にうたれないようにしながら心を安らげる……。

 わっちの1日はそれがはじまりなのです。


 あぁ、気持ちが良い。

 わっちは幸せスライムなのです。


 でも、ふと滴に触れたくなってしまいます。

 けれど、何か恐ろしくて、平凡な日常が崩れそうな気がして――

 とてもさわれそうにないのです。


 ああ、その――


 無色無臭の液体。

 わっちが到底触れることのできそうにない、汚水。

 神様の排泄物。


 もし触れることができたのならば、わっちはどうなるのでしょうか。

 ママからは『ダメ、ゼッタイ』、そう言われています。


 好奇心なんて――

 ()()()()()わっち()に、許された心なのですか、ママ。


 わっちは、この濁水に触りたいのです。

 平凡な日常を壊したいのです。

 恐ろしいの、味わってみたい。


 ――ママ、わっちを産んでくれてありがとうございます。大好きです。


 わっちは勇気を振り絞って岩陰から飛び出し、〝あめ〟に触れました。


 …………。


 …………。


 何も、変わりはありません。

 全然大丈夫。

 ママはウソつきです。


 わっちはやりました。

 もう、こんな雨天おてんきの日でも出かけることができます。

 あめは、心が溶けるような気持ちよさがあります。

 日陰のじめじめとは違う。

 〝雨〟なんてもう、怖くありません。


 わっちは動きまわります。

 どこまでも、どこまでも――いいや、この森を抜けるまでにしておきましょう。

 きっと、この森を抜けた先は、わっちが見たことのない景色が広がっているのです。

 ママですら見たことのない、とびっきりの絶景が。


 わっちは、ひたすら動き続けました。

 前に、前に、ずーっと前に。

 そして、広大な草原に出ました。


 ――あぁ、心が、体が……溶けてしまいそうです。

 広い草原に出て、やっと消えると思ったのに。


 雨、雨、雨――

 どこもかしこも、雨。


 わっちは、これからどうなるんでしょうか。

 少しずつ動けなくなって――思考が、鈍ってきて……。


 カラッ――カラッ――カラッ――


 あうぅ……ふ、ふまないで――

 細くて、固くて、白い棒……ふまないで…………。



 そして――わっちは完全に溶けてしまいました。

 自分で自分を集めることなんてできません。

 そんな余力、どこにも残ってないのです。



 ……ママ、わっちを産ませてしまってごめんなさい。大好きです。





「――くっ……もうダメ……っ!」


 声が聞こえました。

 何やら、誰かと戦っているみたいです。


 ……?

 何かに触れました。

 柔らかくて、ぷにぷにで……ざらざら?

 この触感、気持ちがいいです。

 好きです。

 ママみたいで。


 もしかしたら、わっちと同種族かもしれません。

 集まりましょう、同士の元に。


「【ナズチ】さん! わっちの隣に――!」


 ナズチ……?

 なんのことでしょう。


「えぇ!? 何を言っているのですか! 気でも狂ったのですか――」


 喧嘩……?


「いいからお願いします! スライムで攻撃を防ぎますから!」


 スライム……?

 あぁ、わっち、そういえばスライムでした。

 わっち……、スライムでしたね。


 ……っ!?

 体が……くすぐったいです。

 でも、溶けたわっちの欠片がどんどん繋がっていく感じ――

 視界が次第に開けていくような……。

 よく見えませんが、緑の方がやっているみたいです。


 ひゃっ……!

 ぴりぴり、ぴりぴり。

 体が痺れるような感じがします……!

 ちょっと、新鮮な感覚です。


「【ユーノ】さん……」


 ユーノ……?

 ……はぅっ!

 か、体が剥がされて……。

 わわわ、やめてください!

 また緑の方ですか?

 せっかく集まれたのに、これじゃあ台無しです。


 剥がされて、適当なところに放り投げられて。

 もう、絶対に許しません。

 恨みます。


 ――う、うぅぅ……集まらないと、集まらないと。

 少しずつ、少しずつ……。

 繋げて、繋げて……。


 ぽんっ! と、やっとくっつくことができました。

 えっへん、これで1人で動けます。

 それにしても体が少し重いです。

 でも何か、()です。


「――きゃあああああぁぁああ!!!」

「ナ、ナズチさん!!」


 おや、誰かが跳んできました。

 戦いは激しさをましているようです。

 ……ナズチ、という緑の方を倒したのは、あの3つでしょうか。


 体からプチスライムを切り離し、あの3つに向かわせました。

 空かさず、わっちは緑の方に近づきました。


 許しはしませんが……、一度助けてもらった身です。

 せめて、癒してあげます。


 わっちは緑の方を包みました。

 ()()のように。


 ご、ごつごつ……。

 わっちは先ほどの、ぷにぷにざらざらの方が好きです。


 わわっ、急に立たないでください!

 はぅぅ……急に持たないでください、くすぐったいのです。

 ごつごつな手が――色々なところにあたって……。


「どうしたのです? そんな悲し気な顔――」


 緑の方が、わっちを運んでいます。

 わっ、急に動かさないでください。

 落ちるかと思いました。


 ……目の前のものはなんでしょうか。

 人間の子……?

 でも、腕がないみたいです。

 それに肌がところどころ赤いみたいで。

 もしや、あのざらざらとぷにぷには、このお方でしたか。


「――よし、その子を連れて帰りましょう。見たところ、ナズチさんに懐いているようですし」


 ナズチさん……はっ、この緑の方のことでしょうか。

 な、懐いてなどおりません。

 う、うぐぐ……。

 ダメです。抜けそうにありません。

 力が……、強すぎます。


 ――結局、わっちはそのまま、どこかに運ばれてしまいました。

次話もよろしくお願いいたします!(誤字があればご報告お願いいたします!)

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