◇心の余裕と◇
1章最終話長くなってしまったので2話にわけました。
カミジらに復讐を果たした私たちは、森の中を歩いていた。
「ユーノさん、カッコよかったです! 何を仰っているかは分かりませんでしたが……とにかく、カッコよかったです!」
「あ、あはは、ありがとうございます。ナズチさん」
照れくさい。
皆に下がっていてと言い、くさい感じで終わらせた私。
今考えると、恥ずかしすぎる。
なに、トイレットペーパーの紙という延長線って――!
恥ずかしい!
穴があったら入りたいとはこういうことかっ……!
「ユーノ、見くびっていてすまなかった。足だけで戦闘できるとは思わなんだ」
骨の被り物をしたホブゴブリンリーダーが、私の脚をペチペチと叩いた。
「まぁ、はい……」
体が熱い。
顔が熱い。
うぅ、恥ずかしさでゴブリンの話が頭に入らない。
あれを全部聞かれていたかと思うと、恥ずかしくてみんなの顔を見れない……!
「顔、赤いですよ……? ユーノさん?」
「ナ、ナズチさん! 今私の顔を見てはいけないです! 呪われてしまいます! いや、呪ってしまうかもしれません!」
適当なことを言ったが、余計に心配されてジロジロ見られている。
私のバカバカ、何をしているんだ。
気が動転している。
アレがこんな恥ずかしいことだったなんて……。
復讐をしたはずなのに、なんでこんなに恥ずかしい思いを……。
い、いや……恥ずかしい思いをしているのは私だけなのか?
というか、私だけがそう思っているだけで、みんなはそこまで思っていないんじゃないか?
ううん、それでもやっぱり恥ずかしい!
「それはそうとナズミちゃん、もう洗脳を解いてもいいのでは?」
首を傾げるナズチ。
ホブゴブリンたちは、「確かに」というように二度頷く。
「……そうですね」
と言って、ナズミが服を脱ぎ始める。
……あ!
「ゴブリンさんたち! 少しの間あっちに行っててください! ここは今、女の子の領域ですから!」
私よりも一足先に動いたのはナズチ。
ホブゴブリンたちを押し出し、少し遠くまで連れて行った。
ナイス、ナズチ。
危なかった。
ナズミはあまり分かっていないようだが、女の子の体は大事なものなのだ。
丁寧に扱わないと。
「い、いいでしょうか?」
ホブゴブリンたちが見えなくなった頃、ナズミが私にそう訊いた。
ナズチが戻ってこないあたり、おそらく見張っているんだろう。
「うん。大丈夫。これからは気を付けよう」
「は、はい……」
そして、少し申し訳なさそうにしながらも、ナズミは服を脱ぎ始めた。
まずは靴と靴下、そしてタイツ。
次に上から、白いブラウス、薄いニットを脱ぐ。
一応、戦いに行く前にも見た光景。
さっきまで考える暇がなかったためか、この脱衣が生々しく感じる。
心の余裕ができるって怖いな……。
そして、太く青い線が数本入ったドレスのようなワンピースを、肩に掛けてある紐を手に取り、頭を通してゆっくりと脱ぐ。
うぉっ! なんて生々しいんだ。
自分が脱ぐよりも、他の女の子が脱ぐ方が恥ずかしく感じるなんて……。
わ、私がおかしいのか……?
あ、ダメ! 腋はダメ!
そう願っても、ナズミは構わずワンピースを脱ぐ。
うわぁ! 古傷に刺さってるって!
ワンピースを脱ぎ終えたナズミは、それをブラウスやニットに重ねて置く。
はぁっ、はぁっ……なんて疲れるんだ。
見ている方が疲れるって、絶対に変な話だって。
下着はどっちも薄い水色だし。
私、こんなのに反応するなんて、一体どうしてしまったんだ……。
――ナズチだって美人でスタイル良いし、服を脱ぐところなんていくらでも見たことあるだろう。
クラリスは確かに美人だし、確かに胸もたわわに実っているし、それに加えてスタイルもいいけれど……。
――ハッ! もしや私、意識しすぎているのでは?
普段のナズチの脱衣でこうならないのは、「生活の中で普段見る光景」として見ているのであって……。
これは、『クラリスからナズミというスライムが出るための脱衣』という特殊な状況。
普段と違うから、意識しすぎてしまう――
ああ、いかん、目が回ってきた。
頭が痛い。
それでまずはブラから――え、下から!?
な、なんで!? 普段どういう服の着方しているの!?
いいや、これはクラリスではなくナズミであって……。
ナズミは服の着方とか知らないのか。
じゃあナズミは、服を着始めたらまずは上から着るのか。
しかし、こうも目の前でゆっくりと脱がれると……。
同じ性別であるのに恥ずかしくなってくる。
というか、変な気分だ。
顔も体もさっき以上に熱い。
それなのに、まだ脱ぐじゃありませんか、この子!
私を死なせる気なのか……?
下着を脱ぎ完全な裸体となったナズミが、草むらの上に仰向けで横たわる。
は、鼻血が出てきた。
「それでは、出ますね」
ナズミがそう言うと、クラリスの体のあちこちから青い粘液が溢れ出てきた。
特殊性癖を植え付けられそうな場景。
超新鮮だ……。
▽
――スライムのナズミが「ふぅ」とため息。
ナズミが抜けたはずだが……クラリスは目を覚まさず。
私はナズミに粘液を借り、それを鼻の右穴に詰めて何とか鼻血を抑えながら、クラリスの服を全て着せた。
もう、見るのが恥ずかしい。
鼻血が止まらない。
「粘液ありがとう、ナズミ……あと、ご馳走様でした」
「ユ、ユーノ? 大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫じゃない」
「……え?」
支離滅裂だ。
「よ、よし。ナズミ。みんなを呼んできてくれるかな。あっちにいると思うから」
「ええ、了解しました」
ナズミは、ナズチやホブゴブリンたちのいる方へと、呼びかけながら走って向かって行った。
それにしても……全然目を覚まさないな。
どうしたんだろう。
(今回は推敲していないので、矛盾している箇所があるかもしれません。この話に限った話でないですが……)
次話もよろしくお願いいたします!(誤字があれば、ご報告いただけると嬉しいです!)




