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◇チート転生者に殺されかけた◇

新連載です。タイトル長くてすみません。

どうか目を温めてお見守りください。

<●><●>

 ……こほん。

 転生という言葉、皆さんはご存じだろうか。

 簡単に言えば、別のものに生まれ変わるということ。

 最近はラノベやらなんやらで流行っていて、死ぬと変な部屋にいつの間にかいて、目の前にいる神様からチート能力をもらって転生するなんて話がざらにある。

 しかも、現実にそれが起こっているのだ。


 だけれど、時には能力を貰えない人もいる。

 例としては私――ユーノ(旧名:高橋(たかはし) 朋美(あけみ))。

 変な部屋になんて行っていないし、神様にすら会っていない。

 ただ単に絵を描いていたらクラっときてぶっ倒れて死んだだけ。


 そして生まれ変わった私は、ごく普通の家庭に生まれ、ごく普通に生きてきて、ごく普通に外に出た。

 所謂、普通の冒険家である。

 特殊能力なんて持っていない。

 むしろ、特殊能力を持っている人の方が珍しいはず――


 ……が、私が冒険家を始めてからというもの、何かしらの特殊能力や武器を持った転生者が度々現れるようになったのだ。

 魔族と人間が争っているわけではないし、「何をしに来たの?」という訳だが。


 能力は最強スキルや最強武器で溢れかえっていて、この平和な世界とはちょっと不釣り合いだ。

 神様は何故、そんな能力をどこの馬の骨かもわからない奴に与えてしまったのか、なんて思う。


 それに最近、何もなかった魔族と人間の関係性がピリピリしてきている。

 恐らく私以外の転生者が原因だろう。

 ほら、各地で暴れているから。

 しかもどれも、元々ニートだったり元々コミュ障な奴だったり……。


 元凡人が奴隷にされている女の子を普通に買うかっての。

 コミュ障が異世界に来てからコミュ障直るかっての。

 何で普通に人殺せるんだって、小学校で道徳くらい習ったでしょうが!

 で、なんで元ニートはすぐに職つくの? 親不孝か。

 あとトラックと電車に轢かれがち、逆に轢いてみろ。


 しかも……みんな調子に乗る奴ばっかりで。

 なんでこう、人は氷山の一角のようなとつを持つとつけ上がるんだか。

 それに、世界を滅ぼしかねない能力を持って周りからワッショイワッショイされているけど「正直それってどうなの?」とも思っている。


 結局、人からもらった力なのだから、転生者自身が努力の末に得た力ではない。

 少しくらい努力して強くなれ、転生者よ。

 私みたいに。


 あっと、少しヒートアップしてしまった。

 ……これ以上の文句は言わない。

 頭を引っ叩かれかねない。

 だが、1つだけ言わせてほしいことがある。





「私にもなんか頂戴、神様」







 さて、魔物の討伐依頼も終わらせたし、今日はもう帰ろう。

 今日はなんだか疲れてしまった。

 水平線に叫ぶように森の中で怒号を飛ばしたことが一番の要因だ。

 疲れた。


「うーん、ここらの魔物は大したことないね」


 誰の声だ……?

 とりあえず、茂みに隠れて様子を見よう。


「いいや、カミジさんが強すぎるんだよ」

「そうそう! 豪傑豚レジェンドオークを一撃で倒しちゃうなんて、すごいよ!」


 女2人に男1人。

 女の方は杖を持っているようで、恐らく回復か補助の役割をしているのだろう。

 男の方は、大剣と頑丈そうな鎧をつけている。

 武器と防具のセットだなんて、神様も大盤振る舞いだな。


「あはは、そうでもないよ。誰でもできるって」


 いかにも〝転生者〟感のある男だ。謙遜しやがって。

 しかし若いな……、高校生くらいか。

 女の子を2人も連れているなんて、なかなか充実しているみたいだ。

 けどちょっと顔と言動がウザいな。


「待って! あの茂み、何かいるよ!」


 紫色の髪をしたポニーテールの女が、私が隠れている茂みに向かって指をさしてきた。

 咄嗟に頭を隠し、物音を立てないように手で口を塞いだ。


 ああいうやからには関わらないのが吉。

 見つかったら変に目を付けられてしまう。


「魔物かもしれない……。どうしよう……怖いよ、カミジくん」


 別の女の声だ。

 この声は腕に抱き着いてるな。

 あざとい女め。


「俺の後ろに隠れて!」


 ん……なんだか変な空気になってきた。


「技を一つ打って威嚇してみる。飛び出てこないあたり、頭の良い魔物みたいだ」


 あれ、これってまずいんじゃ――


「我が剣よ、雷鳴を奏でよ――雷の舞(ライトニングブレイク)!」


 男がそう言うと、辺りが黒雲に包まれ、無数の雷が私に堕ちた。


「うぎゃあああああ!! ぎゃあああああ! ぎゃぉおお!! うひいいいぃぃ――!!!」


 思わず、女か男かどっちつかずな声が出た。


「う、うぅぅぁぁ…………しぬぅぅぅ」


 死にそう。

 死にたい。

 死にそう。

 死にたい。


 倒れた先に生えていた花の花弁が、1枚1枚落ちていく。

 時の流れが遅く感じる。


 死にそう。

 死にたい。

 死にそう。


 これで最後か……じゃあ私は……。


 い、いや、花占いがしたいとかそういうわけじゃないんだ。

 ただ死にそうなんだ。


 腕の感覚がないし、肌に触れる空気がいつもより敏感に感じる。

 体は痺れて動けないし、お腹にぽっかりと穴が開いたようなスーっとした感覚がある。


 そう――体を鋭利で強靭な槍で何箇所か貫かれたみたいに。


 ……いや、槍で貫かれたことなんてないけどさ、そりゃ何かに例えてやらないと伝えづらいかなと思って。


 チャンバラの剣で突かれたような痛み(実話)なんてクソザコすぎるでしょ、結構痛かったけど。

 節分で鬼役やっていて、幼稚園児が予想以上に豆を本気で投げてきて超痛かった話(実話)とかもインパクト弱いでしょ、結構痛かったけど。


 だから槍に例えた。



 ……ああ、死にそう。

 ダメだ、痛みが増してきた。痛みのことは考えないようにしていたが、もう限界みたいだ。

 『とりあえず打つ』感覚で、私を討たないでほしい。


「何もないな、やったか?」


 殺り損ねられた人はいる。


「何もないみたいだね。声にならないような奇声発してたし、絶対人じゃないよ。行こう、カミジくん」

「あぁ、そうだな」


 そして、彼らは去って行った。


 ちょっとくらい確認してから行きなさいな、あんたらには人の心がないのか!?

 ……くぅっ、こうなったら少しずつ回復魔法をかけていくしかない。

 覚えていろよ、カミジ。

 いつか復讐してやるからな……。


 うぅ、それにしても寒い。

 大量の血液が出ているみたいだ。こりゃ治すのに時間が掛かるな。

 帰るのは明日になるか……。

 それまでに魔物に襲われないといいけど……。




『『『アオーーン!』』』


 ……黒狼ダークウルフの鳴き声。

 声がいくつにも分かれている。

 複数体いるみたいだ。さっきの雷の音に反応したのか。

 いや、私のフラグに反応したんだな。


 黒狼ダークウルフと言えば、植物も肉も食う獰猛どうもうな狼。

 飢餓状態の時には、あらゆるものを食い散らかすと言われている。


 ……今の状態の私なんて、こんがり焼けた人間じゃないか。

 服も大部分が焼け落ちているみたいだし、良い獲物じゃないか。


 ああもう、なんでこうも運がわるいのか。

 私は生前も悪いことをしてないし生後も悪いことをしてないんだぞ。

 ちょっと口が悪いくらいで、何でこうも不運に巻き込まれるのか。


『『グルルルル……』』


 もうすぐ近くに来ているらしい。


 ダメか…………。

 






「てい! てい! そりゃあぁ!」

『ギャン! クゥーン……』


 誰かの威勢のいい声と狼の弱々しい鳴き声が聞こえる。


「ふぅ……大丈夫ですか!?」


 誰……?


「……う、うぅぅ」

「え? 大丈夫じゃない? そりゃそうですよね……」


 何も言ってない。


「あぁ、うぅぅぁあ……」

「そうです。何か大きな音がしたと思ったら、こんな可愛い少女が身包みも皮膚も焼かれて倒れているんですもの……ビックリしました」


 いやだから唸ってるだけだってば。


「でも大丈夫! 治癒魔法かけますね! ヒール!」


 ……少しずつ痛みが引いていく。

 そこそこ強い魔力の持ち主のようだ。

 この分なら、あと数時間もあれば完治するか。


「あっ! ここでは危ないですし、私の家に来ませんか? もうそろそろ日も落ちますし、結構近くなので!」


 いや、いいから回復魔法をかけて。


「……うぅぅ」

「……いいですよ、って? よし、なら行きましょう!」


 と言い、声の主は私の体を雑に持ち上げた。


 だから何も言ってなッ――いったぁぁぁぁぁぁぁああっ!

 そこ深い傷入ってるとこだからぁぁぁっ!


 そして私は、痛みで気を失ったまま、彼女の家に運びこまれたのだった。

次話もよろしくお願いいたします!(誤字があればご報告お願いします!)

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