Complex) 帰属と成果と劣等感
ある時コミケ会場に
一人の記者が乗り込んだ
同人雑誌をひとつ取り
おおげさに驚いて見せる
「どうしてこんなにうまいのに
どうしてプロにならないの?」
そんな彼女は大手雑誌の
正社員として働いていた
権威が尺度になっていて
帰属が是とされ
嫌な顔して迎え撃つなら
彼女の言葉がコンプレックス
できることなら
素顔のままで
「余計なお世話」と言ってほしい
何の成果も残せぬオレの
劣等感を癒してほしい
ネット小説
書いてる最中
コメント欄に
批評家先生舞い降りた
「こんな話を書いてる暇に
どうしてオリジナルを書かないの?」
あるいはこうか?
「こんな話を書いてる暇に
早く二次小説の続きを書いて
オレに無料で読ませろ」と
新人賞の高い壁
今日またぶつかり
焦燥感
「これしかない」との絶望が
夢の不実現を責め立てる
手元に残るはゴミとかす
コスパの悪い代物で
「どーせ作家になったところで
縛り付けられたあげくの果てに
売れなくなったら捨てられる
自営業とは名ばかりだ」
そうはいっても
結局は
これもまたただの負け惜しみ
書いてて楽しかったのは
はるか昔か
今は昔か?
「何のために」も
「何をしたいか」も
今は昔の
その昔
指南書読んで
ラノベを読んで
小説を読んで
映画を見たら
そろそろ何かが溜まったはずと
イヤイヤながら机に向かい
焦燥と共に指を走らせ
迷路の中に囚われる
結局のところ
作家というのも
絵描きと言うのも
皆同じ
表現は「カタチ」にするものだから
自らを
ワクに閉じ込める
「誰もが理解できる形で
決して独りよがりではなく
お金をもらうプロ目指すなら
奉仕の心を忘れるな」
アーティストは今や
サラリーマン
ジャンルに帰属せざるを得ない
「クリエイティブ」はどこにある?
もしも本当に創作に
身を投じたままでいたいなら
あくまで趣味の範疇で
堪えきれない「ジョウネツ」とやらに
穴開きバケツで
水ぶっかけろ
「認められない」ことこそが
オレの不服従の証サ、と…