Book) あ・じゃ・ぱん
小松左京「地には平和を」
村上龍 「五分後の世界」
田中慎弥「宰相A」
矢作俊彦「あ・じゃ・ぱん」
上記四名の作品をもとに作成した。
「サンク・ユー
エブリバディ
アテンション・プリーズ」
地には平和を
五分後にゃ
世界が変わる
スピーチが
宰相Aから伝えられる
ゲリラと化した
日本人
誇りはどこにあるのだろう
いただくものも国外に
ならば何を掲げつつ
何のために戦うのか?
「サンク・ユー
エブリバディ
アテンション・プリーズ」
見ろ、またもあそこに
日の丸が
旗を守るために死ぬなと言うも
あちらさん
「掲げる旗がない限り
誰も行動起こせないのだ」と
「サンク・ユー
エブリバディ
アテンション・プリーズ」
地には平和を
五分後の
世界の変わる瞬間を
お楽しみにして待っていよう
「サンク・ユー
エブリバディ
アテンション・プリーズ」
荒れ果てた土地
神州の
「御国の世を護るべし」と
戦う彼らと
非国民村
「故国の伝統守らん」と
口だけ八丁
立て籠り
口先だけのプライドで
自分のために人の命を売る
「サンク・ユー
エブリバディ
アテンション・プリーズ」
占領された
彼の国で
幅を効かすは
アングロサクソン
入植者らはかつての日本が
旧日本人が憧れた
金髪碧眼
英語操る
白人の
イメージあたかも
ヒトラーの
妄想の中のアーリア人
「サンク・ユー
エブリバディ
アテンション・プリーズ」
「地には平和を!」
宰相A
叫べどまなこは
がらんどう
見ることの放棄
思考の放棄
指示されるのを待ち続け
これを迎える人々は
真偽を問わず一律に
誰かが立つのを待っている
待つためだけに待っている
「サンク・ユー
エブリバディ
アテンション・プリーズ」
待っているのは救世主
自分の責任
預けられるような
坂口安吾がカッパした
「まつりあげることで
おこぼれに預かれるように」
「サンク・ユー
エブリバディ
アテンション・プリーズ」
思考の放棄は楽でいい
疑問持たぬも楽でいい
「サンク・ユー
エブリバディ
アテンション・プリーズ」
五分後に
いったい何が
変わるというのか
テレビの向こうの宰相は
「なんのため」とすら
振り返れない
「地には平和を」
悲痛な叫びが木霊する
戦争は未だ終わらない
「犠牲になった同胞の
命の重みを知るならば
降伏はできないはずだ」と信じ
「サンク・ユー
エブリバディ
アテンション・プリーズ」
流されるまま始まった
そんな戦争の後に
焼け跡の中
呆然自失
新たな時代を迎えるために
省みることも放棄した
宰相のようなやつもいたなら
自分達のプライドをかけて
戦い続ける者もいる
極限の中で
真価が問われて
「サンク・ユー
エブリバディ
アテンション・プリーズ」
「地には平和を!」
宰相Aの
時計は5分遅れてる
中身のない演説が
巻き起こす拍手
空洞の旗ごうごうと
風に吹かれて翻る