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中二ポエム  作者: 九四山井耐排夢
「更新が遅れるかもしれません!」「今更遅いわ」
751/770

ぷかぷか

灰の世界はここにある

浮かぶ埃が明滅し

暗いロビーにただ一人

今日も寂しく立っている


回転扉の外では

行き倒れのような老婆が

レジ袋抱え眠り込む

警官と警備見間違え

そのたびに体震わせる


お客にゃ見せれぬ裏事情

監視カメラとシステムの前で

電話口から怒鳴り声

見慣れた寂れたホテルのはずが


クスクス笑いとふざけ合い

無邪気なカップル肩を寄せ

すうっとエレベーターに乗り

ゴトゴト響く音の中

君は雫を聞くだろう

雨垂れのようなその音を


敷かれっぱなしのカーペット

踏むとぐじゅりと音を立て

二人の世界にいられなきゃ

また踏みたくなる 請け合うよ


打ちっぱなしのコンクリに

ラザーでできたX十字

一人で泊る客さえも

多分気配を知るだろう


巻き上げられるワイヤーに

どんどん上がるエレベーター

ある日ぶつりと切れたなら

君は天へと落ちるだろう


ぽたりぽたりと滴るは

シャワーじゃ消されぬ赤い血が

途切れ途切れに落ちる音

タイルの上で水と混ざって

ピンクの水が吸い込まれ

長い髪したあの女

バスタブの中で眠るだろう


清掃員が愚痴りつつ

タオルで風呂を拭ってく

一見ピカピカの浴槽

昔は人の血を吸った


排水口に女の毛

溢れて逆流する水が

どす黒く足を汚してく

客専用の飲水にゃ

なんにも混ざっちゃいないのさ


枯れ葉が屋根を塞いでは

溜まった水をぶちまける

微かに聞こえるAVと

ずっと回ってる洗濯機

ふと乾燥機のドラムには

丸くなった人影が浮かぶ


まだまだ夜は本番さ

あちこちで聞く水音に

またも誰かが呼ばれてる

君も一緒に行くだろう

肉体だけをここに残して


不浄の水が人を呼ぶ

バスタブに浮かぶ生身の人間

点々と落ちる血痕に

呼ばれた誰かの成れの果て

カビ臭い倉庫の中で輝く

輪郭のない非常灯



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