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さよなら、アドルフ
映画「さよなら、アドルフ」を参考にした。
召集を受けて
向かうは本部か
あるいは南米だったりして
ナチ党幹部の両親が消えて
遠く離れたドイツの土地に
住んでいる祖母に会いに行く
悪意だらけのひとなつの旅
貴金属らを売り払い
目先の食料を得ながら
情報交換 集まった場所に
張り出されたライヒの真実
骨と皮と化すユダヤ人
強制収容所の写真
ドイツ人の罪の証しと
連合国が貼り付けた
信じられない光景に
ひとりのユダヤ人が追う
写真の中にもユダヤ人
ついてくる男ユダヤ人
きょうだいを 守ろうとしながら
託そうかとも考える
家族の小隊 隊長は長女
ゆきずりの男 途中下車
かつて帝国にいなかった
ユダヤ人らがぽつぽつと
アメリカ人とソ連人らも
再会できた祖母ならば
温かく貴族のごとく振る舞う
敗戦をまだ他人事のように
優しく甘い外界の拒絶
過程になにもなかったら、
うまくやっていけたろうにと
非情の命からがらを
理解できない祖母に今
野外の実態を伝える
「優雅にスープなんて飲めるか」
寝室に飾る陶器の犬を
片っ端から叩きつける
過去にはもう戻れないのだと
鏡の自分言い聞かせ




