713/769
ピエロがお前を嘲笑う
映画「ピエロがお前を嘲笑う」を参考にした。
ピエロがお前を嘲笑う
何者でもない現実からは
何者でもないヒーローへ
無数の人混みのなかで
やがて浮かび上がる才能
アノニマスの奈落のなかから
上澄みになれるのは
幸せなのか逆なのか
ピエロがお前を嘲笑う
匿名性という自由
ゼロとイチを漂うと
端末の数だけ罪の数を
みんなが負担してくれる
麻酔薬に溺れる日々は
コードのなかに似ていた
みんなで幻覚を見るのさ
負け犬根性と開き直りで
ルサンチマンを吸い込んで
ピエロがお前を嘲笑う
中指立てた仮面には
手垢べったり
無数の指紋
いないいないばあで別人に
鏡に向けて叫んでも
響いた声が大きいほどに
虚しさが胸に染み渡る
踊る道化は人を笑い
自分自身を嘲笑う
つばめが集めた小銭を
ブルドーザーで掬い取る
さながらファンドのようにね
現実の二本の腕も
電子の中で千手観音
目立ちたがりがいっぱいの
匿名という鏡の城に
浮かぶ虚像と実像と
誰にでもなれるさ
誰にでもね……