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ひろしま
語るに語れぬ
凄惨の
地獄のような八月は
あの日何があったのです
あの時何ができたのです
二つの町には…
探れぬ過去と
絶する言葉の
断片はただ一葉
無邪気なハリウッドでは
今も気楽に書いている
売国奴らの資料抱えて
帰った国の当事者が
邦画の中では
拝み屋さんがほら
それでもまだ「足りぬ」って
声が切り離せないんだ
業火を作るべきですか
死に怯えた米兵と
死を希い
彷徨う炭化した人影…
一瞬で死んだものよりも
奪われてなお
生かされたものと
生き残ってしまったもの
キレイすぎるフィクションはまだ
リアルを解剖できずに…
瞬間はなく
直後もなく
「間引き」された人々をただ
無機質に覗くレンズ
時間が洗い流していった
零れ落ちた陽を
俺たちはもう語れない
「唯一の」なんて言い方が
ブザマでムナしく響くとき
鐘が鳴る 鐘が鳴る
どこかで
聞こえない声がする