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おじぞうさん
おじぞうさまの 合掌と
微笑み湛える横顔に
ありがたやなんて「尊み」を
感じ始めるこの頃に
はにかみさえも感じさせ
ほっこりとするあの笑顔
悟り開けぬ凡夫にも
なにか思わす 思し召し
何を思っていらっしゃる?
何に微笑んでくださる?
身近な人のことかもしれぬし
宇宙を考えているのかも
近眼的な自己嫌悪
ゆえに投影 ほとけさま
きっと遠くを見つめておられると
自分にできぬを仮託する
かつて彫られた時代ほど
地獄も信じちゃいないけど
生きるも死ぬも 退くも進むも
立ち止まっても流される
この世とあの世に恐怖して
恐怖から 恐怖を上塗りしようと
自裁を選んだ暁にゃ
憐れみ下さるものだろか
愚者の恐怖の積み重ね
崩れた均衡 衝動任せを
おじぞうさまはいまいずこ
ここにいらしてここ以外にも
遍く世界のはすに佇み
鈴の音で魔を払うのか
荒む心の大概は
やはり目先の将来で
結局現世利益なのに
近くて遠いおじぞうさん




