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フィギュアたち
神棚代わりの本棚に
お札と並ぶフィギュアたち
アミューズメントの景品が
つるりと部屋を見下ろして
クレーンゲームの出口から
取り上げたときは今のように
戦争も訃報も知らぬ世界に
ずっといられたものなのに
世界の狂乱 ついていけずに
視線放して モニターからと
冷ややかにこちら 見下ろすフィギュア
ケージの中より 温もりに欠け
獲得の時は 過去のこと
獲得できた瞬間に
世界はまだマシだったろうか?
「プライズ」通りに「価値ある」か
向けられる視線 平坦に
よく聞くニーチェの文言に
併せて顧みるならば
ケージの中の彼女らが
こちらを「獲得」したのかも
お札と共に並べたためか
フィギュアの彼女の面差しが
何かの権威に思われる
見下ろす眼差し
「見られてる」