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生
生きることとは苦なのだと
かつて宗教家のいう言葉
彼のスケールからすれば
せせこましいか 我らが日々は
生活費のため働き続け
小銭を数える姿は果たして
お釈迦様のいう「苦」だろうか?
苔むす石にせせらぎと
流れ落つる清水 指でなぞりて
裸足で歩くその矢先
藻や水垢にからめとられて
ずるりと滑る 浮遊感
滑落していくこの頃に
崖掴まる自分 幻視し
ずるずる滑る へどろにまみれ
滴る血もまたグラデーション
血の通った生を、という言葉
字面で受けて 手首切り
血潮の赤に惹かれてる
そんなバカげた日々 続く




