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ドリアングレイの肖像
オスカー・ワイルド「ドリアン・グレイの肖像」より
かつて純朴なる俺を
もう一人だけが知っている
屋根裏部屋のカンバスで
悪徳をなし 堕落という
刹那の愉悦にすさむ心を
鏡のように写し出す
心が清くなくとも
肖像画なら引き受ける
己の内面の醜さを
いってしまえば
これさえあれば
俺はキレイなままなのさ
外見につられ ふらふらと
近寄る女を嘲笑い
どうしてみようか考える
タブーという名の境界は
踏み越えたときに悦びが
選べないものを選ぶという
優越感こそ求むもの
屋根裏部屋の己に向かい
今日も今日とて語りかけ
醜く歪むその顔を
ひとつの指標と受け取って
俺はまだまだきれいだぞ
そしてずっとこれからも
俺の悪こそ見せてくれ
嫌悪に歪むその顔で




