野獣死すべし
大藪春彦「野獣死すべし」原作
同名映画「野獣死すべし」を参考にした。
松田優作主演の原作から乖離した怪作である。
一度聴いたら 忘れえぬ
頭の中の鐘の音
「野獣死すべし」の旋律
楽しきヤクザの裏カジノ
山積みになった円にドル
うちそとの曇り 悟らせず
まさに死神 かの男
へっぴり腰に 這いつくばって
乱射でヤクザを殺しては
紙幣と銃とに頬ずりを
こけた頬には くぼんだ眼
トレンチコートを脱いだなら
インテリの顔が現れる
獣の血を嗅ぐまでは
脳裏の旋律 掻き消そう
善人の皮をかぶっても
目覚めた欲は消えはしない
極限のもとで知ったなら
陰気と短気で二人組
目先の金で釣り上げた
そんな短気に教えるは
深淵からの狂気なり
殺人をもって神を超え
野獣の血を今繋げたり
金と殺人 即物の
欲をこれから満たそうと
白昼最中の強盗劇
とにかく殺し 威圧して
目的と手段入れ替わり
「女にうつつを抜かすな」と
相方に言い 彼もまた
有言実行して見せる
知り合いの客を射殺して
夜行列車で逃亡中
知り合いの刑事現れて
自分の動機を聞く彼の
銃を「使おう」とするこころ
狭い世界で知りえない
どんな狩りでも許される
戦場という甘い酒
その一端を教えたら
次第に銃に呑み込まれ
かつて手にした米兵の
魔性の銃を握ってる
ここは日本か戦場か
まだまだ狩りを続けよう
送り続けた写真には
虐殺強姦 戦場の狩り
夢から覚めるウインクル
超えられなかった「常識」は
「平和な国」の倫理観
侵せぬままに 犯す輩
相棒すらも撃ち殺し
歯止めを求める自分あり
狩りを望んだ自分あり
二つの自分に引き裂かれ
迫撃砲の音を聞く
夢から逃亡 その果てに
搔き集めようと 倫理観
取り繕おうと 善人を
狩場に立った狩人は
裏返したら獲物だと
刺さる弾丸にて気づく
醒めた明晰な頭が




