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神殺し
もしも神社の祭壇に
翁がひとりいらしたら
もしも鐘の音響くなか
蓮と象とが見えたなら
異能の力もってして
異形のなりで佇んで
「正しき道」を啓蒙し
導きゆこうとされたとき
果たして神を殺せるか
果たして仏を殺せるか
社会・秩序の王道が
幅を効かせているときに
常識が時に偶像に
「神」や「仏」となったとき
果たして神を殺せるか
果たして仏を殺せるか
不信心なるこの下部には
御身の心を受け入れられず
愚考を諫言とばかりに
申し上げたく願うとき
その疑いや疑念すら
許してくださるものなのか
地上に神の家あれど
地上に仏のかたちあれども
心は常に御簾の奥
おわすか否かわからずに
かつて己の敵たちを
説伏してきた御身なら
不敬なこちらのうたぐりも
諭してくださるものなのか
あるいは苛烈な御心のまま
剣にてひれ伏せさせるのか
かつての神話が語るよう
念や祈りは不純ゆえ
おすがり願うこともなく
いつも疑いをぬぐえず
または神をも殺すのか
または仏すら殺すのか




