妄想の中の「多生の縁」
人格形成の初めには
幼少期の記憶・経験
大人に押し付けられている
「リソウ」をまんま信じこみゃ
「キラわれる」ことがトラウマさ
小学生の頃だった
同じクラスの一人の女子が
やたらと俺に突っかかってきた
今ならばわかる彼女のやり口
マウンティングというやつさ
嫌われている事に耐えかね
媚びを売り続けたけれど
結局進展ないままに
その後も出会うことはなく
そんな俺のトラウマが
再び眼下に飛び込んだ
二周目の人生の始まり
彼女「その人」となることで
過去の自分と隣り合わせで
しょっちゅう顔色窺って
そんな女々しい過去の自分に
思わず嫌悪をあらわにすれば
阿諛追従は増すばかり
そんな二度目の人生も
無事終わらせて今度こそ
あの世に行けると思ったら
二度あることは三度ある
三周目には初恋の
女子の姿になっていた
人生一周するたびに
自分のクラスメイトらに
乗り移るのやら
転生やら
自分同士で顔突き合わせ
それでもなぜか変わらない
俺の人生
記憶の風景
どんなに方針違えども
些末と修正されるかのように
ガキ大将に
いじめられっ子
ブスな女子やら
鼻たれ小僧
クラスの半分切る頃にゃ
自殺ができぬ周回に
堪らず思わず悲鳴を上げて
クラス単位は三十人
とうとう最後の番が来て
窓辺からクラス見回せば
談笑している女子グループに
いじられて泣くネクラ坊ちゃん
仲良く笑うすぐキレるやつ
「十人十色」は表向き
全部自分でぞっとした
「過去の俺」さえ除くなら
全員周回の自覚があるみたく
時折黙ってにらめっこ
能面のような無表情
けれども誰も「それ」を言えない
言おうとすれば沈黙が
とうとう周回プレイも終わり
ようやくあの世に向かおうと
目を瞑ったならまた絶望
俺は親父と結婚し
俺を産む羽目になったとさ




