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中二ポエム  作者: 九四山井耐排夢
頭に蜘蛛の巣張っている
317/770

戦艦平沼

福島正実「離れて遠き」収録「空の記憶」を参考にした。

ただし、全編のネタバレとなっているので注意。

戦争は勝たねば、と

敗戦国の国民は

惨めなものさ


樺中佐の呟きは

植民地にて響いてる

かつて星条旗翻った土地で


酒場に入ったその瞬間

媚びを売る目が彼を追う

ガダルカナルからはや一週間

焦がれていたこの国の

白人らには幻滅し


異邦人たる占領軍

他人の土地を闊歩する

優越に満ちた勝者らの

現地人への侮蔑の目


ミッドウェーでの大勝利

制海権を確保して

パナマ奇襲の伊潜168

運河破壊に始めるは

紛争誘発狙う一撃

アメリカ国境へと愛をこめ

メキシコ側からご挨拶


日系米人

黒人に

メキシコ系の移民らの

自由の国へのゲリラ戦

「自由」あれども「差別」もあり

募るは憎悪

人種差別


同盟国のドイツとで

原爆を数個作り上げ

ワシントン・シカゴ・フィラデルフィアに

ニューオーリンズにサンフランシスコ

ブラジル・ハワイより爆撃

民間人はもとよりと

黒人兵士すら蜂起


ロンドン・マンチェスターもまた

ナチの原爆にて消えて

ソ連の参戦待たずして

連合国は瓦解して


もはやおなじみ

歴史改変

Ifに彩られた世界

それでも滲み出てるのは

「敗戦国の悲哀」だね


「やっと掴んだ勝利」とは

己の死による世界移動

ミッドウェーでは乗艦中

輸送船が撃沈し

「史実通り」の敗北と

インドネシアで殺された


さらには他の世界線

米国・ソ連両軍が

本土南北挟み撃ち

豪華な雑嚢

火炎放射器

「持ち主たち」の天国へ

逝けることなく殺された


戦争は勝たねば、と

敗戦国の国民は

惨めなものさ

滲み出るのはただ一つ

「敗戦国の悲哀」だね


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