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地下室の手記
ドストエフスキー「地下室の手記」を参考にした。
初出はPIXIVの二次創作だが、加筆修正を行った。
ルサンチマンが泣いている。
暗い地下室の奥底で。
誰にも会わずにただ一人、
己が哲学を極めようと、
やむにやまれぬ焦燥が、
孤独を孤高にすり替えて、
ルサンチマンが泣いている。
人恋しさに無頼を捨てて、
宿敵仇敵にひざまずき、
汝崇高なる者よ、
お前が愛でこの俗物を、
俺と同じく救ってやってくれ!
ルサンチマンが泣いている
ルサンチマンが泣いている
滴る雫
じめじめと
己が分身たる手記穢しても
「この環境こそ自身振り返る
修行にふさわしい」なんて
言い聞かせてはみるものの
体を包む闇の衣が
隙間風を今誰かの息吹に
人の気配を模って
怯える俺を嘲笑う




