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中二ポエム  作者: 九四山井耐排夢
黒歴史中の黒歴史(というよりも同じことを繰り返し言ってるだけだろほかにネタはないのか)―2018年以前の作品―
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The world is not enough.

2020-06-26当日に書き上げた。


イアン・フレミング「女王陛下の007」よりボンド家の家訓を引用。

ならびにマルセイ・エイメ「壁抜け男」を参考にした。

今世紀最大の成功者

彼のアダ名はそんなもの

プアな家庭からひとッとび

クラスも序列も飛び越えて


裸一貫にて興す企業

多角化経営すべて成功

たちまち一つのコンツェルン

「会長は間違うことがない」

そんなコトバがあちこちで



人類最後の成功者

そんなあだ名の持ち主が

欧州の王族と結婚

会見場にはマスコミが

先争って押し寄せた



誰も彼もが訊きたがる

彼の負けなし人生の

彼の勝利の法則を

何度も乞われて彼は苦笑し

超能力だと回答し

場内爆笑に包まれ



最初に笑いを止めた彼

次の話題に移るかと

思いきやマイク手繰り寄せ

真面目な顔で語り出す

自分の能力について



「私はセカイを変えられる

 タダの世界じゃ不十分

 私は何度も世界を渡り

 成功した世界に着地した」



冗談にしては気味が悪い

遮ろうとするマネージャー

そんな部下を手で制し

彼は言葉を一息に


「素人の事業うまくいかぬと

 私のかつてのライバルや

 家族すら断じていたものさ

 私もそれを知っていた

 だから回数増やしただけさ」


 セカイの移動を繰り返し

 成功した世界に辿り着き

 また新たなビジネスを模索する


 失敗すれば教訓にして

 異なる世界へ巻き戻す


「例えば私が結婚する

 隣の妻には23回

 フラれ続けていたものさ

 最後のパターンでは婚約直前

 慌ててセカイを跳んだもの」



 ループなんてものじゃなく

 どこでもセーブで

 乱数いじって

 セーブの地点からリスタート



 楽し気に語る彼の例えは

 あたかもジャパニメーションのように



 会見場は静まり返り

 彼の笑いが静かに響く

 隣に座る彼の妻

 王族たちも皆蒼い顔


 狂っているのか

 それとも彼は

 悪魔と取引でもしたのかと



 たまたまその場に居合わせた

 一人の日本人記者が訊く


「今の話が真実として

 アナタは後悔しないのですか?

 そんなズルをしてこのような

 悪魔に魂売るような真似を」



 彼は微笑み首を振る

「こんなクソッタレな世の中で

 うまくやろうとするほうが

 よほど頭がおかしいものさ

 超能力も神からのギフト

 いわゆる一つの才能で

 使えるならば使うべき

 ズルだとキミが言うのは単に

 自分が使えないゆえの僻みさ」



 沈黙の下りた会見場

 彼は周囲を見回して

 周りの敵意を嗅ぎ取って

 わざとらしくもため息を

 

「このセカイもまた不十分」



 お決まりの合図

 指鳴らし

 彼の視界は暗転し

 再び世界は元通り

 


 質問を終えた記者が座れば

 会場拍手で満たされて

 次に立ち上がったのは

 精子バンクの頭取で


「仮にその話が事実なら

 我々はよりよい未来のために

 子供たちにその能力を

 残すべきだと思いませんか?」


 熱狂的な会場で

 感涙拭う妻を抱き

 彼は大きくうなずいた


「子供には未来を残したい

 子供には可能性があるべきだ

 なぜなら成功するためには

 一つの世界じゃ不十分」

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