第8剣 魔女
「俺は裏切らないよ......って言っても信用には値しないか。なら、これから見極めてくれ。だから、聞かせてくれないか?その正体とやらを」
クレアは俺の言葉を聞くと静かにゆっくりと深呼吸した。そして、俺へと覚悟の瞳を向けると俺はその瞳をしっかりと受け止めた。すると、クレアは口火を切った。
「私の正体は魔女。正確には原初の魔女を宿した魔女という存在です」
「原初の魔女.....すまない、俺はその辺の知識がまるでない。出来れば、魔女の正体から話してくれないか?」
「いいですよ。なら、魔女の成り立ちから話しましょうか」
それから聞いたのは要約するとこんな感じであった。
「原初の魔女」と呼ばれる女性は元は優れた賢者であったらしい。その女性は賢者として、知識欲のままに見分を広めに様々な村、街、国へと訪れた。
その当時は、まだ魔法という理論の確立の広がりが薄かった時代で、その理論を持たずに魔法を使ってきた人とその理論を利用して魔法を使ってきた人では大きな差が生まれ始めていた。
その二つの軋轢によって出来たヒビは時代のうねりとともに広がりを見せた。
簡単に言えば、嫉妬の対象となったのである。
魔法の理論を使うにはそれに対する学がなければならない。そして、理論がわかる者とわからない者とで知識の差でも大きく差が出た。
また、わかる者はより知識を求めるために仲間を集い始めた。その仲間は当然同じ知識レベルを持つ人達である。
中には知識レベルの低い者達を同じレベルまで引き上げようとした人もいたが、その数は微々たるもの。広がりはやがて大きな溝を生んだ。
それは脅威な存在としても、認定された。
そして、ついに同じ人族でありながら、二つの種族が生まれた。一般的に言われる人族と魔女族。
この時の「魔女」という名称は知識の最たる人物である賢者の女性への畏怖を込めた名らしい。
それから、次第に強大化していくを魔女族を人族はどう思うか。簡単な話、弱者が強者に抱く感情は恐怖だけ。
また、魔女族があまり数が多くない状態で抱いた恐怖を晴らすにはどうするか。それは排除ということになる。
もちろん、それは最終手段だ。まずは上手く繋がりを持てれば、人族と魔女族とを分ける必要も無く、さらには人族の全体的な能力向上へと繋がっていく。
だが、人族と魔女族はそりが合わなかった。それはもうものの見事に。
故に最終手段へと手を出した。それが「魔女狩り」。当然、魔女族はその理論を活かした魔法で血で血を洗う戦いを何年も繰り返した。
だが、その当時は全体魔法などない時代たらしく、やがて魔女は敗走の一途をたどり始めたらしい。
だが、どの世界にも共通して頭がいい人ほどプライドが高いというのはあるらしい。その人達は自分達よりも弱い者にやられたことが屈辱に当たったのだ。
しかし、今のままでは同じことを繰り返す。故にある手段を取った。
それは原初の魔女と呼ばれる女性を不滅の存在へと変え、それを魔女の中で伝承していくこと。
その女性ほどの知識レベルがあれば、どの時代でも通用するだろうという一部希望的観測を混ぜて。
なら、他の者達はどうするか。さらに魔法を強くさせてその理論を魔を復活させるまで受け継がせること。それが魔女族の使命となった。
それから、行く度の戦争をしかけ、やがて人族に魔女という悪しき恐怖の存在を植え付けた。その恐怖は伝承され、現在にも繋がっているという。
「そして、魔女一派のこの男の人の目的は私に中に存在する原初の魔女を復活させること。魔女は私を殺すことで、その肉体を依り代として」
「なるほど。確かに衝撃的な話だな。それにしても『魔女』って男でもそう言うのか?」
「『魔女』というのは総称でもあるんですよ。故に原初の魔女が男の人だった場合は違うかもしれないですね」
その場合は「魔王」だったりするのだろうか。というか、この世界には魔族という存在がいたりするのだろうか。正直、そこら辺もさっぱりだよな。まあ、この世界に来てからまだ二日目だから仕方ないのだけど。
すると、クレアが恐る恐るといった表情で俺に聞いてきた。
「それで、私のことをどう思いますか?」
「どうって怖いかってことか?なら、安心していいぞ。俺にはちゃんと可愛い女の子としか映ってないから」
「かわ!? ......ってどうしてそう思うんですか!?」
「どうしてって、クレアは普通に可愛いだろ。それに原初の魔女だろうがなんだろうが、俺には今のクレアしか見えていなし、それが全てだと思ってる。だから、分からないし、見たことない存在に怯えるほど肝は小さくないんだよ」
「原初の魔女は本当に危険な存在らしいんですよ! 同族の怨念が籠った化け物らしいんです!」
「まあまあ、落ち着けって。俺はたとえクレアがどんなことを抱えていたってどうでもいいんだよ。もうついて行くと決めた以上は」
「......それを聞いても尚考え方を改めないなんてやっぱり不思議な人です」
クレアは俺を疑うようにジッとした瞳を向けた。俺はその目に思わず苦笑いを浮かべる。
まあだが、俺の言葉は本当だ。危険が伴おうと少女を一人にするのは男が廃るというものだろう。それに、この少女に関しては確かめたいこともある。
「それじゃあ、改めてよろしく。それから勝手に名前呼びして悪いな」
「構わないですよ。私も途中で下の名で呼びたくなって、そっちで呼んでいましたし」
「なら、ついでにタメ口でいいぞ。俺はそっちの方が壁を感じなくていいしな」
「わかったよ。これでいいかな?」
俺はクレアが確かめるようにした目遣いで言ってきた言葉に思わずドキッとした。可愛い子がかわいい仕草で言うとただの言葉がこんなにも破壊力を持つようになるのか。これはやばいな。口がにやける。
「どうしたの?」
「いや、何でもない」
「なんでもなくないよ! そんな手で口を覆うなんて......まさか攻撃を受けたのをそのままにしてやせ我慢してるんじゃ! だったら、見せて!」
「いやいや、待て待て待て! 大丈夫!大ジョーブ! 俺はどこもケガしてないから!」
「ケガしてない人は全員そう言うんだよ! 任せて、私のポーチに治療道具はちゃんとあるから! それに二度も助けてもらったんだよ。恩返しくらいはさせて欲しい!」
俺はそんなクレアの言葉は嬉しかった。けど、問題は俺はどこもケガしていないということ。それだけはどうしても変えられない事実。それに口を隠しているのは半にやけになっているからだ。
それからというもの、俺とクレアの攻防は続いた。そして、結局俺はクレアに隅々までまさぐられた。
別作の「神逆のクラウン」も良かったら読んでみてください




