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第6剣 賭け

俺が声のする方へ向かって行くとクレアと杖を持った魔法使いのような姿をした男がいた。


 その男はクレアに今にも襲いかからんとしている。俺はその進む速さを見計らって近くに落ちていた石を拾うと思いっきり投擲した。


 その石は真っ直ぐ魔法使いへと向かって行き、その男の顔面を捉えようとしたところで、男はその石に気付き防がれた。


 だが、その数秒の硬直が俺にとってありがたい。俺はその間に近づいていくと飛び蹴りした。


 俺の蹴りは男が杖を盾にすることで当てることは出来なかった。しかし、男をクレアから引き離すことには成功した。


 それだけで、十分だ。だがなー、相手は魔法使いかー、接近戦しか出来ない俺には分が悪くないか?


 すると、その男は先ほど俺が戦った男と同じように俺に言った。


「チッ、一人でいるかと思えば、人形がいたか。まあ、怪我を負っているのに一人でいるから不思議だとは思っていたがな」


「どうも、クレア様の人形のカイトと申します。以後、お見知りおきを」


「!?」


「カイトだ?はは、自らの人形に嘘つきの神の名をつけるとは。なんだ?その人形に優しい嘘でもかけてもらって、心の保とうとでもしたのか?そんなことしなくても、お前の体には――――――――」


「止めてください!」


 俺が相手の素性を伺おうと嘘をついた演技をするとクレアを驚いたような表情をした。まあ、当然の反応だよな。


 だが、俺の名がここではそんな神の名だったとは.....案外的を得ているかも?まあ、それは良いとして、クレアはやはり大きなこと俺に隠しているようだな。その十中八九は「魔女」ということに関することだろうけど。


「まあ、誰が相手でもクレア様を傷つける人は許しませんよ」


「はっ、人形風情がいっちょ前に護衛気取りか?それほど精巧に人型の人形が作れるとは思わなかったが、人形風情が人様に勝てるわけないだろ」


「それはどうでしょうか?やってみないとわからないことはありますよ」


「人形風情が舐めた口を聞くな!」


「まあまあ、それなら人形風情の戯言だと思って流せばいいではないですか。それで時にお尋ねしたいことがあるのですが、あなたは何者なんですか?」


「......まあ、いいだろう冥途の土産に教えてやる」


 男はそう言うと少しだけ警戒心を解いた。俺が丸腰であるから勝てると見込んだのだろう。良い塩梅の緊張感だ。


 これならワンチャン殺さずに捕まえることが出来るな。俺がそう思っていると男はしゃべりだす。クレアの言葉の一切を無視して。


「その女の人形なのに知らないとは、よっぽど普通の人間として生きたかったようだが、残念だな。お前は人間としては生きられないようだぜ?」


「止めて。それだけは、それだけは言わないで......」


「俺はなその女と同じ―――――――」


「もう止めてよ!」


「魔女だ。正確には魔女一派の一人だがな」


「魔女.....」


 俺は静かにその言葉を呟いた。クレアが魔女であるということは、この男の前に会った男から聞いていた。


 そして、その時点では俺の世界の歴史にあった中世の頃の魔女狩りなのかと予想したのだが、どうやら違うようだ。


 魔女一派の男が魔女であるクレアを狙う理由.....それは考えればいくつか出てくる。


 たとえば、クレアが魔女一派で死罪を受けて逃亡している人とか、単純にその魔女一派の逆鱗に触れ逃げてきたとか、もしくはこれから魔女一派に攻撃を仕掛けようと画策している仲間の一味だとか。


 とまあ、これぐらいか。だが、クレアの言葉を信じるとすれば、3つ目にあげた例えは消されるな。あとはどちらか二つ。どっちもありそうな感じはするな。


「まあ、聞いておいてなんですが、僕に関係ないことのようですね。僕は決めましたからね、《《クレア様のそばにいると》》」


「......え?」


「そうだろうな。人形風情には関係ないことだ」」


 俺の背後からクレアの小さな驚きのような声が聞こえた。まあ、そりゃあ疑うよな。こんな嘘を演じているような状況であんなことを言うんだから。


 まあ、気づいているかは別だけど、クレアならその言葉だけは嘘じゃないと感じてるんじゃないか?まあ、俺自身でもそれは嘘じゃないけど。


 すると、男は「時間をかけ過ぎた。あいつはまだこのねぇのか」と言いながら、杖を構えた。


 あいつとは俺が殺した男のことだろう。すまんな、もうお前の所に来ることはないんだ。最悪、お前が逝くことになるかもな。


「その構えはクレア様への敵対行動とみなし、排除させていただきます」


「やれるもんならやってみろ!.......ファイアバレット!」


 男は構えた杖に何かを集中させるとその杖の先から一気に収束させた炎を放った。その火球はかなりの速度で向かって来るが、俺はクレアを抱き上げるとその場から回避した。


 すると、その後ろにある木に火球が直撃した瞬間、その火球は爆発し、その木を覆うように火が燃え上がった。


 俺はその光景を見て、さすがに俺は冷汗をかいた。あんな攻撃をもらったなら、俺は確実に死ぬだろう。


 なら、当たらなければいいと思うだろうが、相手は人間だ。結局のところ何を考えているかはわからない。俺の動きを読んで挟み込むように撃ってくるかもしれない。


 まあ、なんにせよ、今はとにかくクレアを安全な場所へと移動させるのが先決か。しかし、男は俺がそんな考えを読んでいたのかその男は俺に向かって多数の火球を放ってきた。


 俺はその火球を見て、苦笑いしながら逃げるようにして距離を取っていく。


 そして、数秒後に緑だった森が一部だけ真っ赤に染まった。俺はその爆発で男が俺の姿を見えなくなった隙にクレアを茂みに隠すとこちらからその炎へと向かって行く。


「おらよ!」


「ごほぉ!」


 俺は男が爆炎から水魔法であろう魔法を使って出てきた瞬間を狙って、その男を思いっきり殴った。


 これは男が来ると予想していたからこそできたことだ。だが、二度目は通じないだろう。でも、それでいい。これで男は俺が完全に丸腰だと思ったはずだ。


 男は突然殴られたことで思わず地面に倒れ込んだ。だが、杖は手放すことはなかった。そのことには軽く舌打ちが出る。おそらくはこの杖が火球を強くしているのだと思う。ゲームの中ではよくある話だ。


 なので、俺はその杖を持った腕を踏みつけた。だが、男は横に転がって逃げていく。そして、杖を向けるとその杖の先に水を収束させた。


「ウォーターガン」


「!」


 俺は一瞬の寒気を感じてその場に伏せる。すると、その杖から一直線に水が伸びていき、背後にある木を貫通した。ははは、即死するとこだった。本当に、嫌な予感したが、正解だったようだな。


 そして、俺はその魔法が切れると一気に男に向かって走り出した。俺の使えるとっておきはあと一つ。


 それはもちろん、手足を剣に変える魔法だ。人間予想外なものに遭うと思はず固まってしまうもの。勝つとしたらそこを突くしかない。


「そらよ!」


「目くらましか、小賢しい!」


 俺は男に向かうと伏せた時に掴んでいた砂を男に向かって投げた。その砂を左腕で防ぎながら、右手に持っている杖で火球を放った。


 俺はそこで両腕を剣へと変えた。そして、火球が迫りくる中、俺は進みを止めなかった。


 男の行動は俺にとって予想外であった。俺はてっきり、風魔法でも使って防ぐものだと思っていたからだ。


 その行動結果から考えるとこの男は風魔法が使えないのだろう。だから、火球を放って俺に距離を取らせることを選んだ。


 だからこそ、俺はあえて突っ込む。それならば、相手の虚を突けるからだ。そして、成功すればおそらく勝てる。


 しかし、問題は俺がこの炎を切れるかということ。これはもうやってみるしかない。気張れよ俺!


「おらああああ!」


「な!?」


「その腕もらった」


「あ"あ"あ"あ"あ"あ"!」


 俺は気合一発、その炎に切り込んだ。すると、俺の剣が勝り、その炎は二つへと別れた。そのことに男は驚く。


 その瞬間、「賭けに勝った」とほくそ笑むと男の杖を持っている右腕を切り落とす。


 そして、男が悶えている間に左腕を掴み、そのまま背後へと回り込んで関節技をキメて、地面へと叩きつけた。


「さて、いろいろ聞かせてもらうぞ?」

別作の「神逆のクラウン」も良かったら読んでみてください

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