第1話 出会い
ラインノベルで書いていたものです。良かったら読んでみてください
気が付くと俺、【天野 カイト】は知らない空を見上げていた。左右を見ても知らない木々に、知らない大地。
ただ、この世界に来る前の数秒前の光景は覚えている。それは、誰か知らない人に駅のホームで後ろからぶつかられて、そのまま......
俺は上体を起こすと大きく伸びをした。これはよく聞く異世界転生というものだろうか。
だとすると、神様に会っていなければ、体はもとのままだ。そう考えるとこれは異世界転移に入るのだろうか。いや、あの時確実に死んだはず......
「まあ、いいか。せっかく生きてることだし、この世界をいろいろと探ってみるか」
俺は深いことを考えるのを止め、そう独り言ちた。そして、ゆっくりと立ち上がると俺は改めの辺りを見回す。
今俺がいるのは、どこかの丘の上らしい。そして、その周りには木々が鬱蒼と生い茂っている。
また、その丘にはゲームキャラとかで見そうなスライムや変わった形をした動物。あれは魔物とか言ったりするのだろうか。
その瞬間、俺の腹が飯を食えと鳴いた。その音を聞いて「そういえば、あの駅にいた時から何も食ってなかったよな」と思うと余計に腹が減ってきた。
なので、その空腹を満たすべく、とりあえずどこかに果実がないか歩き始めた。
「それにしても、変わった生き物だな」
俺は森に入ってからも見渡す範囲にいる生き物を見て思わずそう思った。なぜならその生き物は本当におかしいのだ。
シマウマのような動物にひれがついていて、象のような生き物が翼をはためかせ飛んでいる。
そして、球体状のスライムが動いているかと思えば、人型の黒い靄が歩いている。それだけで、随分とファンタジーな場所に来たんだなと思うことはそう難しくない。
「魔法って使えたりするのか?」
俺は空へと手をかざしながら、とりあえずなにかが手から出るようなイメージを持って念じてみる。
しかし、俺がイメージしていた通りには魔法っぽいものは出てこなかった。そのことに残念さすら感じる。
こう見えてももとの世界ではそういうファンタジー系は触れていたのだ。それ故に、魔法が出ないと思うと......はあ、仕方ない。仕方ないんだけどな......。
俺がそんなことを思っていると近くの木で果実があった。俺は駆け足でその木へと向かうとその果実をもぎって齧る。
うん、美味い。甘みがあって、フレッシュな水分量だ。味的には梨に近いだろうか。まあ、美味ければなんでもいいか。
俺はその果実を持てるだけ持つと果実を食いながら歩いていく。
「!」
するとその時、どこかから大きな衝撃音が聞こえた。その衝撃音が起きた場所は俺の近くらへんでその数も一つだけではない。
「あれは......」
その時、俺の方向に向かって一人の銀髪で、薄汚れたワンピースのような服を着た少女が走って来ていた。
俺はその少女を目を凝らして見てみると年齢は同じくらいの可愛らしい子であった。
だが、その足は裸足であった。しかも、相当の距離を走ってきたのかその足はいくつもの切り傷や擦り傷が見られた。
「あ、おい!」
すると、少女も俺の姿を捉えたらしく、急に方向転換して森の奥へと駆け抜けていった。
そのことに、俺は思わず声をかけるが、少女は聞く耳持たんとばかりに走り去っていく。
「ギシャアアアアア!」
「.......待て待て待て待て!」
少女が俺の視界から消えてすぐに大きな蛇が声を上げながら、少女の向かった先へと移動していく。
それを見た俺は顔を青ざめながらも、手に持っていた果実を捨て、その少女を追いかけ始めた。
「クソ!」
だが、思いのほか大蛇の進行速度は速く、段々と差を大きくされていく。そのことに俺はイラ立ちを覚えながらも、途中で折れ落ちていた木の枝を拾うと大蛇に向かってぶん投げた。
すると、その枝は大蛇へと当たる。だが、それだけ。こちらに微塵も意識を向けることはない。俺はそのことに舌打ちした。
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私は困惑していた。それはこの大蛇のこともあったけど、この森に人がいることに。
この森は「魔女が住む森」と呼ばれていて、普通の人はまず近寄らない場所。
それにこの森は凶悪な魔物が多く、生き延びることも困難。私を追ってきている大蛇もその一匹だ。
だから、私はその黒髪の男の人を見つけるとすぐに方向転換した。それにあの男の人は見たことのない服装をしていたことから、異国の者と思われる。
この森近くの国以外の人はこの森の存在を知らないことが時折あるのだ。その人はおそらくそのタイプの人だろう。
とにかく、大蛇が私から標的を外さなくて良かった。これで私以外被害者が出ることはない。
「きゃあ!」
私がそんなことを思っていたのがいけなかったのか近くの木から根が飛び出していることに気が付かなかった。
そして、その根に足を引っ掻けるとそのまま前のめりに転んでいく。
幸い、足首を捻って走れなくなることはなかったけど、膝は大きくすりむいてしまった。正直、かなり痛い。
でも、今の私にそんなことを気にしている余裕はない。すぐそばにまで大蛇が迫ってきている。私は立ち上がると再び走り出した。
それから、走っていると急斜面になっている場所に出た。しかし、私は速度を落とさず走っていく。大蛇もまたしつこく私を追いかけてきた。
「はあはあはあ......」
私の呼吸は段々と荒くなっていく。先ほどから肺はかなりきついのだが、それで足を止めてしまえば大蛇に食べられてしまう。せっかく、あの追ってから命からがら逃げてきたというのに。
私は段差を飛び越えるとバランスを崩しながらも、すぐに立て直し逃げる。
「ギャアアアアア!」
「!」
すると、段々と大蛇も痺れを切らしてきたのか私に向かって何かを吐いた。それは黄色く濁った球体状のものだった。
そして、鼻を突く刺激臭がする。それを危険なものだと思った私は、その球体状の何かを避ける。
すると、その球体状の何かが地面に触れた瞬間、地面が煙をあげながら溶けた。そのことに、私は思わず目を見開く。
推測するに溶解液といったところだろうか。それにあたるのはかなり不味い。
「きゃあ!」
私はその驚いたことで思わず自分の左足に右足を引っ掻けてしまった。そして、また前のめりに転んでいく。
しかも、今度は左足首を捻ってしまった。
そのことに、私は痛みを堪えながらも立ち上がろうとするが、上手くバランスを取ることが出来ず、立ち上がることが出来なかった。
「ギャアアア」
「こ、来ないで!」
私は声を張り上げながら、後ろへと下がっていく。しかし、そんな虚勢が魔物である大蛇に伝わるはずもない。
そして、ジリジリとその距離を詰められていく。そのことに私は恐怖した。
体が強張り、声はもう出なくなった。おそらくはどこかで死を悟っているからだろう。ああ、せっかく皆のおかげで逃げることが出来たのにこんな所でしんでしまうなんて.......
「い、嫌......」
やだ、やだやだやだやだ!死にたくない!生きたい!もっと生きたい!だって、誓ったんだ。皆の仇を討つと。
もう護られっぱなしは嫌だからって。なのに、なのになのになのに......嫌、やだよぉ。誰か、助けて。あの男の人でも誰でもいい。誰か、誰か.......
「助けて!」
「任せろおおおおおおお!」
私が願望のままに声をあげると誰かがその声に反応した。すると、そこに現れたのは、あの時の男の人だった。
その男の人は大蛇の頭に乗ると私に向かって自慢げにサムズアップした。
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それから、「神逆のクラウン」という作品も書いてますので、良かったらそちらも読んで評価してもらえると嬉しいです。




