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Zagroud Fertezia ~堕ちた英雄と記憶喪失の少年~  作者: ZAGU
第一章『強欲の国』
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真相善悪が遺す辛苦の代償

 神殿での騒動から数日の時が流れた。

 王都ドルクメニルでは、国王オルクバルト三世の崩御の報せを聞いた民衆が深い悲しみに暮れていた。葬儀が行われた王宮では数多くの人々で溢れ、君主への忠誠と信頼というものを改めて感じさせられた。

 国の臣下であったドラノフは消息不明となり、彼が国へ残した影響は大きなものであった故に、その反動は計り知れない混乱を極めている。

 難敵である帝国の進行を阻止し、魔科学という未知の技術で、王国に進化の一途を辿らせたドラノフの功績と信頼もまた厚く、君主が天秤にかけられてしまう程大きな派閥にもなっていたが、それは時間と共に溶け行く氷の如く、綺麗に消えていった。

 ドラノフが手掛けていた魔科学技術の多くは破棄される事となったが、未だに彼の研究所に当たる場所は一切見つかっていない。

 そんな事件の一端に隠された真相が知れ渡れば、更なる火種となる恐れがある為、王室の結論により、民に明かされる事無く、闇の中へと葬られた。

 そして国王オルクバルト三世、並びに臣下ドラノフを失った今、次期王位継承権を持つ第一皇女リリアン・デル・アファルタシアに王位が委ねられ、国の元首の任を背負う運びとなった。



 王都ドルクメニル、エゼルメッス王宮、謁見の間。



 アレクシア王国が執行する王位継承の儀により、参列していた臣下達を始め、多くの貴族等が儀式を終えて帰路につく中、残された少年クロとエルフのリーシェ、そして傭兵のジルクリードは、無事に女王の称号を得たリリアンの姿を前にしていた。

 こうして見ると、改めて国を担う者としての存在感を肌で感じられる。

 全身を儀式の為の豪華な正装で包んだリリアンは、無人と静まり返る謁見の間を暫く見渡すと、一糸乱れぬ佇まいで、真っ直ぐに此方へと目線を向けてきた。


「クロ様。並びにリーシェ様、ジルクリード様。……本日は、この様な私めの王位継承の儀にご参列頂き、心より感謝申し上げます」


 新たな君主は、その称号には到底似合わない言葉遣いで頭を垂れた。


「そんな、どうか頭をお上げください。陛下」


 当然、そんな人物に頭を垂れられたとなれば、此方も立場が体を動かす。

 リーシェは、慌てて彼女に威厳を保たれるよう急いで促した。


「そ、そうそう!そんな礼を言われる程じゃないですって!」


 隣に居たジルクリードもまた、味わう事の無いであろう事態に狼狽えながらも、不馴れな言葉遣いで説得を試みる。


「その様なことはありません。……皆様がいらっしゃらなければ、私はまともに儀式を執り行うことは敵わなかった事でしょう」


 状況を把握している数少ない人物が場に居るだけで違うという事だろうか……彼女の口から発せられたものは、女王陛下という一国の君主では無く、一人のリリアンという女性としての声の様にも感じた。

 それは他人には決して見せる事のない、自信とはかけ離れた声だった。


「……力添え出来たのならば、光栄に思う」


 無表情ながら、少しでも他人の助けになれた事に対し、クロは素直に感謝の意を示した。


「クロ様は、大変お優しいのですね……」


 そう言う彼女は、まるで長い束縛から解放されたかの様な柔らかい表情で小さく微笑んだ。


「……お話がございます。ここでは場所が悪いと思いますので、私の部屋へとどうぞ」


 それから自室へと案内しようと話を持ち掛けるリリアンの意思に答え、クロ達三人は足を運ぶことにした。



 謁見の間の更なる奥に進むその先は、王室の居住区画だった。

 他と違って、王室の名に恥じない見事な飾り付けだ。

 だが、リリアン曰く、多くの王族で賑わせていたであろうここも、嘗て程の活気は無いとのことだ。それもその筈、確認出来るのは、巡回している幾人かの重武装の近衛騎士達のみ。

 話によると王家は、戦死や反逆による死刑、国外逃亡等、これまでのアレクシア王国が辿ってきたあらゆる出来事が、今に至る要因のようだった。

 クロにとってアレクシア王国という歴史はまだ解らぬところが多いが、それが如何にこの国が凄絶な歴史を歩んで来たかが犇々と伝わってくる気がした。

 そんな会話に少年が思いを淀ませている中、案内されたのは、数々の絵画や調度品で飾られ、真珠の様に輝く絨毯や椅子やテーブル等が目を引く大きな部屋だった。

 そこで着席を促されると、クロとリーシェは大人しく室内の椅子へと腰を降ろす。ジルクリードに関しては扉の近くで立っている様だ。

 背後の三人の姿を確認したリリアンは、高く位置する部屋の窓から王都の町並みを静かに見下ろし、少し間だけ見続けた。そして……。


「大魔術師レスナーの行方を知りたいみたいですね……」


 それは唐突だった。

 言葉の通り、レスナーの行方を気にしていたクロは、リリアンが知っていたという事実に対して少し身構る。


「何故、その事を……」


「失礼ながら、レスナー様より、クロ様の事は耳にしておりました」


 リリアンの躊躇いの無い真摯の眼差しに、嘘偽りは微塵も感じられない。

 今まで他に類似する話を聞かなかったところからして、彼女は裏でレスナーと繋がっていたという事になる。


「何か手掛かりが掴めるかもしれないんじゃないか?クロ、聞いといて損は無いと思うぜ」


 お堅い様子のクロに、ジルクリードが部屋の壁に寄り掛かりながら打診してくる。

 隣を見ると、リーシェも頷いていた。どうやら二人は同じ考えの様だ。


「……分かった。頼む」


 軈てその意志は一致し、クロは小さな息を吐くと、リリアンに情報の提供を申し出る事にした。


「分かりました。お力になれるかは分かりませんが、ドラノフに関する内容も兼ねまして、出来る限りお話ししたいと思います」


 そう言って、クロやリーシェの向かいに座ったリリアンは、自身の記憶に残る、王室内での出来事を話し始める。


「神聖ロマネス教による聖国への攻撃が激化する最中、レスナー様はこの大陸西部へと来られました」


「当時、帝国との長い交戦で各地を巡回されていたお父様が、瀕死の重症を負うレスナー様に手を差し伸べ、王都へと匿う事となったのです」


 瀕死の重症、原因は神聖ロマネス教に追われていたからなのだろうか。

 そんな疑問をクロが抱いていると、後ろに控えるジルクリードが発言する。


「噂によると奴等邪教共は、民間人を含め、戦意を喪失した聖国の騎士達を片っ端から残党狩りしていたみたいだな。レスナーの爺さんも、その一人だった可能性があったってことか……」


 聞けば聞くほど彼等神聖ロマネス教への不信感や嫌悪感の様なものが込み上げてくる感じがした。

 無実であろう民間人までもが手を掛けられるといった事態に、クロの小さな拳に自然と力が入る。


「初めはお父様の申し出を頑なに受け入れていただけなかったのですが、懸命な説得の末、それは承諾されました……」


「それが、今のアトリエか……」


 匿うならば、普通は安全であろう王宮なのだろうが、レスナーの性格だ。話の流れから察するに、国王からの王宮入りを断り、自ら王都に居座る事となった……といったところだろう。

 何と無くだが経緯が掴めたクロが小さく呟くと、リリアンは頷きながらそれを肯定する。


「以降、定期的に伝令を通じ、レスナー様はご自身の安否の報告をされていました。そして大きく時間が流れたある日、私達はそこで神の子であるクロ様の報せを耳にしたのです」


 私が来たときか……。


 あの時、レスナーと接している裏で、その様な事があったと考えると、自身の無用心さが改めて窺えた。


「……その頃ですね。ドラノフが動きを見せて来たのは」


 ふと、リーシェがドラノフの行動を口にして、リリアンの話と照らし合わせてきた。

 対する彼女も再び頷くと、当時のドラノフについて語る。


「……はい。伝令を通じてやり取りをしている私達王族を不審に思ったのでしょう。ですが、彼が表だって行動を始めた頃には、もう……」


 クロは、そこでリリアンが口をつぐむその先の言葉が何なのかが理解できた。

 忘れはしない豪雨が王都を打ち付けるあの日、彼の直属であるディオルとその配下が兵士の身なりでアトリエを訪れて来た。

 ならば、レスナーは初めからドラノフの思惑を警戒して王宮入りを拒否したというのか……?


「それが、あの時の……」


 クロは、あの時に現れたドラノフの刺客と話が一致したと解かり、思わず口ずさんだ。


「……申し訳ありません。もっと、私達が早く気付いていれば……この様な事態にはならなかった事でしょう」


 そんな自分達の盲目が招いた結果に、リリアンは責任感にとらわれたのか、彼女は焦りに任せて謝意を唱えてきた。

 だが、こうして謝る彼女もまた被害者なのではないだろうか?ドラノフによって囚われの身となり、更には実の父を失ったのだから。


 ……?


 そこでクロは、自身もドラノフに囚われていた時の事を思い出す。王宮にある大きな一室で聞こえてきた、幼さが残るあの若い女性の声。

 

 同じか……。


 両者は同一であると察した少年は、此方に謝るリリアンへと視線を向け、静かに首を振った。


「……いや、私は感謝している。だから、どうか謝らないで欲しい」


 立場が同じならば、お互い謝る義理など無い筈だ。クロはそう考えた。

 彼女が囚われの身に置かされていた時、どの様に扱われていたかは分からないが、あの時の酷く怯えていた声が全てを教えてくれていた気がしたのだ。

 何と無くだが、少年もまた同じ気持ちであると、そう間違いなく思えた。


「……」


 すると、彼女は愉悦を仄めかす穏やかな笑顔を向けてきた。まるで言葉ではない、何かによって通じ合う……そんな不思議な感覚だ。


「こればかりは仕方がありませんよ。ドラノフの野郎がいくら功績を成し遂げようが、奴が裏で暗躍していた以上、リリアン様もまた被害者ですからね……」


 皮肉にもドラノフの行為の全てを咎める事は出来ないが、それでもジルクリードはこの国へ与えた善悪の代償に深い懸念を抱いていたようだ。

 少々たどたどしい言葉遣いで彼は頭を掻く。


「ですが、彼がここまで被害を最小限にやり遂げられたのには、何者かによる支援無しでは厳しいかと思います」


 何者かによる支援。ふとその言葉を口にするリーシェの疑念には、クロも違和感を感じていた。


「……そうですね。リーシェ様が仰有られる通り、ドラノフの活動を影で支えていた存在は居ました」


 ドラノフが関わっていたとされる第三の存在。協力関係を結んでいたとなれば、互いの利得が必要不可欠になる。思い当たるとすれば……。


「……神聖ロマネス教か」


 様々な可能性が少年の脳裏をよぎった。

 クロがこれ迄の記憶を思い返してみれば、神聖ロマネス教は辻褄が合う部分が幾つか浮かび上がるのだ。


「はい、これはドラノフの配下であった者からの情報にしか過ぎませんが、ドラノフは秘密裏に神聖ロマネス教へと必要な情報を流す事で、自身の思想実現への助成を受けていた様です……」


 続けてその概要を話すリリアン。

 確かに、神聖ロマネス教と通じていたのならば、イスラの街で取り逃した筈のクロの居場所という情報を、ドラノフが流していた事になるだろう。しかし、それでレスナーを国家反逆の罪を理由に弾圧していたとなると、随分と横暴な話だ。


「ここからは憶測ですが、レスナー様のご遺体や行方が確認されていない以上、ドラノフは身柄を欲していた神聖ロマネス教へと引き渡したのだと思われます」


 レスナーは、神聖ロマネス教の元へ?

 クロは他の可能性を考えるが、他に当てはまるものは無かった。しかし……。


 ならば、私も神聖ロマネス教へと明け渡されるのが道理な筈だ。

 それとも、協力関係にある両者にも譲れない部分はあるというのだろうか?


 となれば、ドラノフが初めにクロの存在を知った時、神聖ロマネス教に渡す気が無かった事になる。


「ドラノフは何故、私をレスナーと共に神聖ロマネス教へと明け渡さなかったのだ?」


 問い掛けるクロに、リリアンは答える。


「それは、ドラノフの強欲さ故でしょう。初めから神聖ロマネス教からクロ様を明け渡す様に言われていたとは思いますが、目の前の欲望に目が眩んだ彼は、認知の事実を隠蔽し、王宮へと監禁したのだと思われます」


「んで、そのクロを俺とリーシェが連れ出したから焦って神聖ロマネス教の連中へと報告したってか?……まったくつくづく勝手な奴だぜ」


 リリアンの推測に、壁に寄り掛かっているジルクリードが両手を挙げながら彼の滑稽ぶりに失笑した。


「それから状況を聞いた神聖ロマネス教を味方に、ドラノフはクロやロザリアさんを始めとする近衛騎士団が逆襲に訪れる時を見越して計画の実行を急いだ……といったところでしょうか」


 簡単に要約してしまえばそうだろう。

 淡々と口にするリーシェの話を聞いていたクロは、これまで謎が多かったドラノフの陰謀論への軌跡が紐解かれる事に、感慨深いものを得ていた。


「はい、……ですがその様な事実上の支配を目論むドラノフの思惑に気付いた時には、既に我が王国に即戦力となる抵抗手段がありませんでした。兵士の多くを帝国との交戦で失い、更には増援として派遣されていたロザリア率いる近衛騎士団までもがヴェリオス王国による攻撃によって甚大な被害を受けていました」


 ヴェリオス王国軍による、ヴィッツェイラ砦の襲撃の時か……。


 リーシェやジルクリードと共に向かったあの不気味な砦。

 どうやら状況を変えることの出来る最後の頼みでもあったロザリアがヴィッツェイラ砦にて行方知れずとなっているのもまた、ドラノフが噛んでいる可能性がありそうだ。


「つまり……害になる連中を間接的に始末して、何も状況を知らない俺達みたいな傭兵に金をちらつかせて利用してきたって訳か……糞がッ」


 傭兵として受けた依頼もまた、ドラノフの新世界実現の片棒を担いでいたという真相を理解したジルクリードは、思わず苦虫を噛み潰した様な面持ちで言葉を吐き捨て、自身の無能さに叱咤した。


 落ち込む空間。

 少し間が空いたところで、リーシェが雰囲気を切り替えようと声を出す。


「……確かに決して良い結果とは言えませんが、こうして最悪な事態にならずに終息出来たのは、不幸中の幸いだと思います」


 その時、クロは思った。

 多くの犠牲はあった。

 犠牲が出ても、結果が良ければ幸いと言えるのだろうかと。

 幸いとは、一体何だろうか……。 

 そう少年が考えていると、リリアンが話を続ける。


「はい、クロ様を初めとする皆様は、近衛騎士団を王宮へ引き込めた上、見事にドラノフを阻止して下さいました。本当に感謝しております……」


 状況を一変させた切っ掛けを作ったのはクロ達三人だろう。リリアンは感謝の念を含ませた柔らかな表情で、最後に自分の気持ちを伝えた。

 だか、もう少し早ければ状況を更に緩和する事が出来たと思えば、素直に受け入れられない気持ちでもあった。

 そんな思いが、クロの中で無念さや後悔となって渦巻いてゆく。


「……ただ、油断はまだ出来い状態にあります」


 沈黙したまま視線を落とすクロに、リリアンは注意を向ける。


「我が王国において神の子であるクロ様の存在を認識されたとなれば、神聖ロマネス教も黙ってはいないでしょう……。ですので、私達アレクシア王国は、今出来る最善を手を打ちたいと思っているのです」


「最善の手……そうか」


 クロはそこで気が付く。この状況から生じる次なる展開に。


「お入りなさい……」


 リリアンがふと扉の方へと声をかけると、不動を極める部屋の扉が開かれた。

 流れ込む気配に誰もが視線を向ける中、現れたのは騎士の鎧を着こなす褐色の髪の女性だった。


「……ロザリア」


「ま、待てよ……!これは一体どういう」


 目の前に立つロザリアに、油断をしていたであろうジルクリードが動揺を見せながら状況を飲み込めずにいた。


「クロ様は、本日をもって我がアレクシア王国の庇護下へと入れます」


 淡々と突き付けられる展開。

 リリアンは、ロザリアの姿を確認すると、動揺するジルクリードを差し置き、クロを見る。


「申し訳ありません。手早くクロ様の安全を確保するには、これより無いのです」


 向けられる彼女の眼差しには、何処か罪悪感に似たものが感じられた。

 素直に受け入れ難い状況ではあるが、立会人がロザリアでは抵抗も無謀に等しいだろう。

 今までに行動を共にしたリーシェ達と離れ離れになるのは嫌な気持ちだったクロだが、リリアンの言うとおり、これが最善なのも間違いないなかった。


「……分かった」


 苦渋ながらも、クロは静かに返答した。


「クロ……お前、いいのか」


 心配していての事だろう、そんな様子を見ていたジルクリードは、困惑の表情のまま、静かに肩を竦めながら意思を問う。


「ああ。素直に……とは言えないが、この先の脅威を考えれば、妥当なのだと思う……」


 クロは、拳を小刻みに震わせた。

 リーシェやジルクリードと共に居たい自分があれば、魔の手に怯える自分もいた。そんな我が儘で優柔不断な自分を、少年は拳に一杯の力を込めて押し殺していた。


「それに、リリアン陛下とロザリアは信用出来る者だ。……だから私はもう迷わない」


 信用という言葉に縋っているのは分かっていた。だが、この先、様々な困難や決断を迫られるのならば、迷うことはない。


「クロ……」


 そんな思いで、クロが自身の意思を示すと、沈黙していたリーシェがふと少年の名を呼んだ。


「また逢えるから、心配しないで」


 振り向く少年に、彼女は優しそうに微笑んで再開を約束した。


「……ああ」


 重なり合う目線の中、クロは再び逢える日を願い、それぞれの道を進んだ。



 静まり返る室内。

 光を失ったその部屋には、本来ならば誰一人として居ない。


「……ぐす、ぐす」


 暗闇に響く小さな女性の泣き声。

 月明かりが僅かに照らす巨大なベッドに 項垂れる一人の金色の髪の女性は、壁に飾られた一枚の絵画を見ていた。

 二人の男女に幼い少女の三人が描かれたその絵画は、どれも幸福の言葉がよく似合う程に幸せそうな笑みを浮かべている。

 金色の髪の女性は、絵画が映し出す二人の男女の姿に、涙腺を緩ませた。


「……どうすればいいの、お父様、お母様」


 頬を伝う一筋の(しずく)

 彼女の震える程に弱々しい声は、決して誰にも届かない嘆きとなって、とこしえ闇へと消えていった。

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