表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Zagroud Fertezia ~堕ちた英雄と記憶喪失の少年~  作者: ZAGU
第一章『強欲の国』
33/56

異端の冷笑

夜は更け、月明かりと街灯の輝きが一枚の絵画を描くが如く闇を飾る静寂な王都の一角で、幾人かの動きがあった。

 怪しげに彼等が動いているその一角には、一際目立つ建物が建っている。何かの店だろうか、大きな看板を惜し気もなく掲げられ、その強調さが窺える。

 この時間ならば、どこも戸締まりをしているが、その扉は開かれていた。

 中には灯りすら灯されず、月明かりのみが、室内の輪郭線をうっすらと描き出しているのみだった。

 壁に飾られた数多くの剣や槍、杖といった武器が飾られているところを見ると、武器屋と認識出来る。

 そんな武器屋の中央で、一人の人影が立っていた。

 男性だろうか、整った長い黒髪を後ろで束ね、全身を漆黒の衣服で被っており、手には鎌の様な武器が握られている。


「……スゥ」


 彼は静かに上を見上げると、大きく息を吸った。

 何かの余韻に浸っているかの様なその姿は、恐怖すら感じさせる。


「ディオル様、報告します」


 ふと、外から現れたもう一人の人物は、恐らく配下の者だろう、ディオルと呼ばれた黒髪の男に敬礼をする。


「……お話しください」


 ディオルは、室内に現れた配下の者を見ること無く、報告を促す。


「はい。特定された情報屋なる場所ですが、一つの痕跡無く姿を消しておりました。現在、行方を追っております」


 報告を聞いたディオルの表情は暗闇に包まれており、その感情は用意に分からないが、その立ち姿からは凍てつく様な冷酷さが十分に感じ取れた。


「随分と動きが良いですね……。ですが、もう尻尾は掴んでいます」


 持ち上げられる大きな鎌。その刃先には、夥しい量の血液が重力に従って静かに流れていた。

 配下の人物が怪訝な表情で武器屋の奥を覗くと、目を見開く。

 月夜を背に浮かび上がる人影。それは正しく人そのものだった。

 筋肉質な体つきをした中年とおぼしき男性。彼は、胴体を大きく切り裂かれた状態で台上へ突っ伏し、目を開きながらその生命力を失っていた。


「やはり、人という者は同胞よりも我が身を案じるのが常、実に愚かで儚いものですね……」


 振り向き様に見せた鎌の男の表情は、無機質にして不気味に笑っていた。


「神の子……。また、会える時が楽しみです」


 死神の男の意思は、一人の亡骸を残してその魂を喰らい、再び王都の闇へと消えていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ