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Zagroud Fertezia ~堕ちた英雄と記憶喪失の少年~  作者: ZAGU
第一章『強欲の国』
28/56

情報の軌跡

 茅色と鮮緑の大地の境には、無数の建造物が建ち並び、一つの大きな都を築いていた。

 魔物等の侵入を防ぐ為の城壁の高さは優に三十は越え、門には何名かの兵士が武器を手に立ち塞がっている。

 以前よりも守りが堅いように見えるが、近付いてみれば相変わらずどれも民兵ばかりだ。

 おそらく役者不足といったところだろう。

 普段から訓練された正規兵とは異なり、彼等には威厳がなければ規律さえも感じられない。

 中には眠そうに欠伸をしている者さえいる。

 そんな民兵の姿が門において凡そ十名の態勢で王都に入る人々を検問にかけていた。


「はい次」


 二名で馬車を止め、もう一人が御者台に歩み寄り、御者に通門許可証の提示を求める。


「通門許可証を提示しろ」


 提示を求められた御者は、直ぐに通門に関する内容が記載された羊皮紙を取り出し、民兵へと見せる。


「……荷台を確認する。そのまま動くな」


『来たぞ……』


 すると、馬車の荷台で声量を抑えながら一人が囁いた。

 回り込む足音が止み、後ろの幌が一気に開かれる。


『……』


 荷台に差し込む光の中、民兵の視界に写ったものは木箱に詰められた大量の農産物だった。


「……」


 暫くそれを見ていた民兵は黙ったまま幕を閉ざすと、前へと歩き出す。


「いいぞ。通れ……」


「ありがとうございます」


 何事もなく通門を許した民兵にお辞儀をした御者の男は、再び馬を走らせる。

 馬車は、車輪を転がしながら不規則に揺らし、大きな門を潜っていくと、賑やかな城下町へと出た。

 御者の男は背後を確認し、街角で馬車を止めると、周囲を見渡す。


「着いたぞ」


 そう言って幌越しに後ろの荷台へ伝えると、馬車がごそごそと物音を立てる。


「うはあぁ、暑ぃぃぃぃ!」


 御者の男の合図と同時に銀灰色の髪の男が外の空気を求めるようにして幌から顔を出す。

 それもそのはず、高熱帯に近い王都の気温は年中猛暑に覆われる。そんな環境で馬車の荷台に積まれた狭い木箱の中に長時間閉じ籠っていたのだから無理もない。


「すうう、はあぁ!やっぱり外の空気はいいもんだな……ん?」


 大きく深呼吸をしたジルクリードは、後ろが動かない事に気付き、もうひとつの木箱へと近寄り、重なっている上の木箱を退ける。


「おい、もう着いたぞ……て」


 驚いた彼の視界に写ったものは、木箱に入ったエルフの女リーシェと少年クロだった。

 それは一枚の絵画の如く、二人が体を重ね合っているという状態だった。


「……なんで二人で入ったんだよ!」


「……すみません、乗るときに体勢を崩してしまいました。……手を、貸してはいただけないでしょうか」


 ジルクリードよりも暑苦しく、窮屈そうだ。だが、それ以前に感じるものは漂う如何わしさだろう。

 そんな絵面を見て動揺する彼に気が付いたリーシェが余りの苦しさに顔を歪めながら申し訳なさそうにお願いする。


「む……ぐ……」


 一方で少年は、リーシェの胸の谷間に顔を圧迫され、呼吸の自由を奪われていた。


「……ぐむ」


 クロは、漆黒に染まる視界の中、柔らかい物質を受けながら苦しそうに決死の助けを求めていた。


 それから二人はジルクリードの手助けのもと、木箱から脱出して馬車から降りた。

 正体を不鮮明にする為のフード付きの長いローブを羽織った三人の姿を確認した御者の男が伝える。


「ここからは手探りになる。気を付けて行けよ」


「ああ、いろいろとありがとな!」


 中年男性と青年が爽やかに言葉を交わす中、馬車の中での余韻が続いていた二人が後ろでぎこちなくお辞儀をする。


「あ、ありがとうございました!」


「……感謝する」


 クロは動揺を隠しきれない様子だが、リーシェはあからさまに顔を火照らせている。


「ははは!若いって羨ましいな。少年、彼女を大事にしてやれよ!」


 何の事を言っているんだ。

 彼の意図が掴めずに怪訝な表情を浮かべているクロを置いて、御者の男はそそくさと御者台に乗り込み「じゃあな」と気さくに手を挙げながら馬を走らせていった。


「……よ、よし、怪しまれる前に情報収集と行こうぜ!」


 馬車を見送った後、何とも言えない雰囲気の二人をジルクリードが仕方なく善導することにした。




 ロザリアから受けた行動の概要は、王都を根城にしている情報屋と接触し、そこから王宮への侵入に有力となる情報と、連れ去られたと思われる王族の情報の二つを入手する事。

 そしてその情報を元にロザリア率いる騎士団に侵攻の機会を与えてドラノフの陰謀を阻止するというものになる。

 しかし、肝心の基盤となる情報屋の位置は公では言えない存在らしく、頻繁に移動する故に、流石の団長の彼女も知らないそうだ。

 その為、情報屋の位置を探る必要があった三人は、目立たぬようローブに付いたフードを深々と被りながら町行く人々に声を掛けていく事にする。


 一人目は道行く青年。


「情報屋?何だそれ」


「いや、知らなかったらいいんだ。悪かったな」


 訝しげに眉を寄せる青年に、ジルクリードが手短に話を済ませた。


 次。


 二人目は朱い髪を持ち、奇抜な格好をした道化師の女性。


「じょーほーやー?あれえ?」


「何か知ってるんだったら教えてくれ!」


 緩い雰囲気をした道化師の女が首を傾げると、ジルクリードが食って掛かる。


「えっとねえ……」


 三人は答を待つ。


「しらなーい」


 三人は視線を落とした。


 次。


 三人目は礼服を着こなす貴族風の男だ。


「情報屋ですか……成る程」


「てことは……」


 三人は次来る言葉に耳を傾ける。


「つまり貴殿方は侵入者ですね」


「……!?」


 一気に冷や汗が来た。

 ジルクリードは状況の悪化に対策を考えながらも背にある槍へ手を伸ばす。


「冗談です。生まれも育ちも王都でしたが、そんな所は私の記憶にありませんね。恐らく空想の境遇でしょう」


 冗談かよ!。

 半笑いな貴族風の男の態度に内心激昂するジルクリードをリーシェが穏便に済ませるよう肩を叩く。


 次。


 四人目は無邪気そうな男女の子供だ。


「えー?何それ!知らなーい!」

「知らなーい!知らなーい!」


 兄妹だろうか、二人の子供は肩を並べながら手を挙げる。


「ジルクリードさん。あまり子供にそういう話をするのは駄目ですよ」


「すまん、見境なかったな」


 子供の将来を見据えてか、リーシェが割と本気でジルクリードを叱る。


「君どこの子?これから広場で遊ぶんだ!一緒に遊ぼう!」


「……え?」


 クロを同年代と認識されたのか、そのまま二人の子供に手を引かれていく。


「お、おい!クロ!」


「微笑ましいですね」


「ほっこりしてる場合か、連れ戻すぞ!」


 二人の子供に連れていかれるクロを見て微笑ましそうに頬に手を添えるリーシェをジルクリードが慌てて急かして後を追った。


 次。


 五人目は柄の悪そうな大男だ。


「情報屋だあ?知るか!俺は今賭けに負けて機嫌が悪いんだ!」


 これは第一印象かは最悪だ。

 大男はあからさまに怒りを露にしながら吠える。


「あ、ああ。悪かったよ、忘れてくれ」


「いいから俺に話しかけんじゃねえ!とっとと失せろ!」


 身を引きながら両手を前に振るジルクリードに対し、大男は歯に亀裂が走る程食い縛りながら直ぐにでも殴りかかりそうな姿勢で怒鳴り付けた。


 それから。


「はぁ、これっぽっちも分からねえ」


 ジルクリードの口から苦痛の声が漏れる。

 それもそのはず、王都を回り始めてから結構な時間が経過していた。

 夜に賑わう様な店舗が数多く建ち並ぶ通りで、三人は情報収集を続けていた。

 日の傾きから察するに時刻は九時課といったところだ。にも関わらず、周囲からは人々の話し声が激しく交差する。


「これでは平行線のままですね。情報屋というのは何処にあるのでしょう……」


 リーシェも同じく困った様子だった。

 これでは外で待機しているロザリア達に示しがつかない。

 そんな罪悪感が漂い始める中、三人は次の人を求める為に隣接する店舗から店舗へと視線を移しながら見ていると。


「おい、そこのさんにぃん。止まれえぇ!」


 急に何者かに呼び止められた。

 三人は巡回するドラノフの配下などと思ったが、様子がおかしい。呂律が回っていないみたいだ。

 すると、警戒心から立ち止まる三人の中で一際小さいクロがフードの隙間から目線を覗かせる。


「……民兵だな」


 此方に歩み寄る二人の姿を視認すると、どうやら民兵のようだ。古ぼけた鎧を装備し、腰にはお下がりなのかと思う程使い込まれた単純な剣が鞘に納められている。

 そして、彼等の手にはそれぞれ酒器が握られていた。酒に酔っているらしい。


「どうする……」


「なんだぁあ?そのみっともないお召し物わあぁあ?ふへへへへ」


 直ぐに打開策を練ろうとクロが小声を飛ばした時、酔っぱらいの民兵が口を挟んだ。


「……あ、ああ。俺達、今具合が悪いんだよ、放っておいてはくれないか?」


「ぐあぁいがー悪いだぁあ?」


 沈黙を貫くと更に怪しまれると判断したジルクリードが酔っぱらい相手にその場しのぎになるかすら怪しい言い訳を盾にすると、トマトの様に真っ赤に染まった民兵の顔が頭巾の隙間から現れる。


 こ、こいつ。酒くせぇ……。


 民兵の顔面がお届けする重厚な化合物の余韻がジルクリードの鼻を襲い、思わず身を捩らせる。


「お酒が気軽に飲める様になったのですね」


 そこでリーシェが微笑みながらジルクリードから気を逸らそうと民兵に話をかけると。


「おおおぁぁう!エルフの嬢ちゃん!ここんところ待遇がいくてなぁあ!?戦争ちゅーだってのにひるまっから上等なええぇーるが飲めるんだよぉお!」


「そおぉうだなぁ!ドラノフさまばんざぁい!うへへへへへ」


 酒器を上へ翳しながら上機嫌に二人で盛り上がる中、クロはドラノフという言葉を耳にして意識を傾ける。


「ま、こんな暇な時にあやしい奴なんているわきゃねーな!いひひひひ」


「お、そうおぉいえばリゼルチナ区のぶき屋あぁのオトコ!あれあやしーよな?」


 それは思いもよらない収穫だった。

 三人の目付きが変わる。


「……リーシェ、ジル」


 クロは聞き取れた情報の共通性を二人に求めると、二人は黙って頷いた。


「知ってるう!何かネズミどもとつながってるらすぃーからなあぁあ!?こんど叩き出してやるうぅ!」


「その為にはあぁ!?」

「その為にぃはあぁあ!?」


『お酒だあぁあ!!』


「おお!そうだ!さいきん新すうぃぃ店がこのさきで出来たんだよおぉぉ!」


「ほんとおーか!?行こうぜ行こうぜえ!」


 等と、長々二人だけの空間で仲良く話し合い始めた民兵は、三人を置いて勝手に盛り上がっていくと、手を組合い、泥酔者のみが持つ奇怪な動きを披露しながら町奥へと消えていった。


「……お酒という物を飲むと、皆ああなるのか?」


 呆然と民兵を見送る中で、クロがふと抱いた疑問を投げる。


「えっと、……あの方達は飲み過ぎですね。ジルクリードさん、大丈夫でしたか?」


 クロの質問に少々戸惑うリーシェが答えを簡略化すると、次にジルクリードに気をかける。


「思い出させるな……吐きそうだ」


「お酒というのは魔術が付与されているのか……だが、あの民兵からは魔力が一切感じられなかった」


「ううん、あれは魔術じゃないよ」


 本当に具合が悪そうに視線を落とすジルクリードを見上げながら驚きの表情を浮かべて考察に入るクロを、リーシェが軽く否定した。




 日は既に大きく傾いており、青空は橙色へと深みがかってきていた。

 三人はあの泥酔した民兵の男二人の会話から聞き取れた情報を頼りに、王都の奥へと進んでいく。

 すると、馬車の通りも多い大きな道から奥へと入った通りの先にその店はあった。

 あれだけ泥酔していても記憶力は無くならないらしい。

 店の前で見上げると、入り口であろう扉の上には大きな文字で『バッセルの一流武器屋』とロベリュクス語で堂々と書かれている。

 随分と自慢気な店構えだが、何故か中からは人気が感じられなかった。

 だが、あの話が本当ならば、この店の人から確かな情報が掴める可能性がある。

 そんな期待を胸に、三人は武器屋の扉を押し開く。


「お、らっしゃい」


 図太く、声の枯れた声が出迎えてきた。

 三人は視線を奥へと向けると、筋肉質な体つきをした中年の男がにやにやとしながら此方を見詰めていた。

 この店の店主といったところだろう、あの目の輝きからは期待や喜びといった感情が汲み取れる。


「ああいや、客じゃないんだが……」


 武器屋の男の眼差しにジルクリードがやや圧されつつも、客である事を否定する。


「ああ?んだよ、ようやく客が来たかと思ったのによ」


 すると武器屋の男の穏やかな表情は、ジルクリードに否定された事によって怒りと不快の表情に早変わりする。


「客じゃないならさっさと失せろ。目障りだ」


「ま、待ってくれ!話だけでも聞いてほしい!」


 門前払いをしようと手で払う動作をする武器屋の男に、ジルクリードが慌てて話を織り込もうとせがむ。


「なんなんだよお前ら。話すことは何も……」


「情報屋の場所を教えてくれ……」


 店主の態度に狼狽えるジルクリードの横でクロが本題を切り出した。

 そして武器屋の男は、「情報屋」という単語を聞いた途端、目付きが変わる。


「今、何て言った?」


 真っ直ぐ圧力を向ける男に、クロは一切動じる事なく、言う。


「情報屋だ。そなたが何かしらの情報を持っていると聞いた」


「……お前」


 武器屋の男は、クロの紅い瞳を見て思わず呟く。

 彼の様子の変化からしておそらくクロが神の子である事を示すもので間違いないだろう。


「……はあぁ」


 それから大きな溜め息をついた男は、困った様に頭を掻く。


「……何が知りたいのか知らねえが……まあ、どうしてもと言うなら教えてやらない事もない」


「じゃあ!……」


「ただし!条件がある……」


 進展の兆しを感じ、急かそうとするジルクリードを武器屋の男が直ぐ様阻止する。


「……な、何だ。条件ってのは」


 そこから武器屋の男は凄まじい目力で三人を見据える。

 場所が秘密である特性上、そんな情報屋について知っているこの男もおそらく危険な橋を渡っているのだろう。

 そう思えば思うほど相応の覚悟が沸き立つ。


「……」


 長い間が続く。

 二人が沈黙する中、ジルクリードが緊張感の余りにごくりと生唾を飲み込む。

 そして……。


「……頼む!俺の武器を買ってくれえ!」


「……え?」


 突然台上に頭を打ち付けながら武器屋の男が懇願した。

 想像とは遥かに異なる展開に、ジルクリードが呆然とする。


「……俺の武器とは何だ」


 クロが率直な質問を投げる。 


「そうだ!俺の武器だ!本当ならば店の武器全部買ってくれと言いたいところだが、今回は俺が特に手塩にかけて作ったこの特性武器の購入を推奨する!。値段はたったの十万ベゼルだ!な?安いだろ?」


 それは高いのか?。

 目の前の武器屋の男がそう言って見せてきた一本の剣を見て思う。

 耐久性や使い勝手の良さ等、武器を使用する上で自らの命を守る重要性を担う地位となるものが不明確なようでは正直価値が分からないのだ。

 剣の種別は短剣、全体に派手な装飾は無く、刀身には反りがあるのが特徴的だ。

 しかし、この条件を呑めば情報屋への場所を教えてもらえる可能性はある。


「そいつを買ったら本当に教えてくれるんだな?」


 ジルクリードが念のためもう一度話を戻す。


「ああ本当だ!だから買ってくれ!このまま売上が無ければ、俺は店を引き払うしかねえんだ!」


「……ジルクリードさん。ここは買ってあげましょう」


 男の必死な懇願に、リーシェがジルクリードを見てお願いしてみる。


「買ってくれるのか!」


 これじゃあさっきと立場が逆だな……。

 ジルクリードはそんな複雑な思いを心の片隅に置くと、一歩前へと進み、腰の布袋へと手を突っ込む。


「はあぁ、分かったよ。買えばいいんだろ買えば。ほらよ」


 そう言ってジルクリードは、台上に手のひら程の大きさの袋を取り出し、それを置いた。

 小刻みな金属音を鳴らしながら目の前に現れたその袋に、男は中身を確認する。

 袋一杯に詰められた大量の金属の貨幣、硬貨で間違いない。


「……」


 すると武器屋の男はジルクリードの手を取り、大きく俯くと黙ったままその手を力強く握り締めた。

 様子からして感銘を受けているのだろう。


「いや、痛いんだが……」


 しかしそんな彼を、ジルクリードはやや表情を歪めながら控え目に拒絶する。


 そして無事に取引は進んだ。

 新たに武器屋の男から買った短剣は、クロへと与えられる事になった。

 比較的軽量な短剣ならば、小柄なクロでも扱いが容易だからだ。


「すまない、感謝する……ジル」


 少年は表情こそ無表情なものの、渡された短剣を両手でしっかりと握り締めながら自身の体へ寄せる仕草を見せた。

 初めて他人から買って貰った物は、クロにとって新鮮であり、感じた事の無い高揚感が沸き上がる。


「王都ゲレナ地区の路地裏の突き当たりに、その情報屋がある。そこなら、ありとあらゆる情報を得られるかもな」


 武器屋の男は、クロの様子を嬉しそうに眺めると、求めていた情報屋の場所を教えてくれた。


「ゲレナ地区となると、隣の地区ですね」


「おお、それから合言葉は、『情報の軌跡』になる。それを中に居る連中に伝えれば大丈夫な筈だ」


 情報屋の場所を聞いたリーシェが王都の配置を思い返しながら言うと、武器屋の男はふと思い出した様子で情報を付け加えた。


「情報の軌跡か……。分かった、ありがとなおっさん、助かったぜ!」


 クロも同じく武器屋の男に対してお辞儀をする。


「気にするな、武器を買ってくれた事だしな。……だが、そこで情報なんて握って、何をしようってんだ」


 武器屋の男は、謙虚な対応で首を振ると、抱いていた疑問を投げる。

 すると、クロが答える。


「終わらせる為だ……」


 その言葉を最後に、三人は店を後にする事にした。

 

 店に張り付く複数の人影を残して……。

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