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祝福の光が舞う夜

「まあ。まず座ってお茶を飲みな。もうお前に隠す意味が無くなったから全て話してあげるから」


 その言葉に女性はテーブルに着いた。そしてお茶で乾いた唇を濡らした。


 その様子を見たおばあさんは自分も椅子に腰かけ、お茶を飲み話し出した。


「まず、私らが魔女なことはお前も知っての通りだ。そこで普通の人間と恋仲になった時、問題となるのは魔女の寿命が普通の人と比べて違いすぎることだ。これは、私が身をもって証明しておる。そしてもう一つ大きな問題は魔女が一途なことだ。一度伴侶を持つとたとえ相手が死んだとしても魔女はその伴侶以外受け付けない。だから、伴侶が死ぬと後追いするケースが多い」


「まあ、長い人生に伴侶がいなければ確か、狂うのよね。そのことで他の人を巻き込みたくなくて後追いするのよね」


 女性は青年の寝顔を眺めながら苦しそうな顔になった。青年が先に亡くなる時に自分がどんな行動をとるのか考えたのだろう。


「そうだ。私は子供が出来たから後を追わなかったが、一人なら追っただろうな。まあ、その経験があったから娘、孫らにはそんな思いをしてほしくなかったのだ。だから私の英知を集めて伴侶と魔女の寿命を等しくする魔法を創った。それがあの木こりの坊やのオオカミの姿だ」


「じゃあ、彼と同じ時間を過ごせるの?」


「ああ。あの木こりの坊やは合格したからな」


 その言葉で緊張していた女性は安堵のため息を吐いた。


「はあ。もし、失敗していたら?」


「その時は、相手と魔女の記憶が書き換えられる。愛がない伴侶を娶らせる訳にはいかないからな」


「そっか… ちなみに合格の条件は?」


「それは簡単だ。相手が魔女だとしても愛しておるか。これだけだ」


「記憶と相手の姿が変わっていても?」


「獣の姿だからこそ本当の姿が出る。体は正直だからな」


「なるほど」


「そろそろ、木こりの坊やが起きるだろ。お茶をもう一つ持ってくるぞ」


 おばあさんが話し終えたタイミングでベットに寝ていた青年がゴソゴソと動き出した。どうやら意識が戻ったらしい。


「うーん。ここは?」


 寝ぼけ眼を手でこすりながら体を起こした青年に女性は抱き着いた。


「おはよう。私の唯一の伴侶」


「おはよう。うん。よく分からないけど、おばあさんに許して貰えたんだね」


 木こりの青年はほにゃりと微笑んだ。そして女性を優しく抱きしめ返した。そして見つめ合う。

 その時、家のドアが無粋に叩かれた。


「はいはい。まったくお二人さんは後でゆっくりとしな。それよりやっと来たか」


 そう言いながらおばあさんは扉を開けた。そこには仲良く腕を組んだ女性の母親と狩人がいた。そして、二人は女性と青年の前にきて嬉しそうに笑った。


「おめでとう。木こりさん、娘をよろしくね」


「ああ。おめでとう。少し複雑だが娘を頼む。泣かせたら返してもらうからな」


 そう、狩人は女性の父親だったのだ。もちろん全てを思い出した女性は驚かなかったが木こりの青年は少し気の毒なぐらい驚いていた。


「あの、僕を陰から毎日見守ってくださっていた狩人さんですよね?」


「ああ、木の実は役にたっただろう?」


 どうやら、オオカミの姿になった木こりを心配して見守っていたらしい。オオカミが飢えないように食料の調達もしていたみたいだ。


「俺も乗り越えてきた道だからな、気になってな…」


「本当にありがとうございました。娘さんはもちろん大切にします。お義父さん、お義母さん、娘さんを大切に育ててくれてありがとうございました。これからは僕が彼女に寄り添っていきます」


「ふふ。よろしくね旦那さん」


 甘酸っぱい空気が漂う中、その空気を断ち切るようにおばあさんがワイングラスを五個を持ってきた。


「さあ。乾杯するよ。湿っぽくするな。めでたいんだろうが」


 丘の上の小さな魔女の家はその日は寝静まることはありませんでした。


 そして、小さな赤い頭巾の少女は最高の伴侶に包まれて幸せに末永く暮らしました。

最後までお読みいただきありがとうございました。


赤ずきんちゃんと似て非なるものでしたが、楽しんでいただけだでしょうか?

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