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悲しみの探偵  作者: 山虎政宗
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第三章 探偵士

 三島源太郎は、国家認定の「探偵士」だ。


 探偵士は、民間の犯罪捜査官である。


 探偵士制度が導入された背景には、ひっ迫する国の財政問題があった。


 日本共和国の予算は、膨らみ続ける社会保障費に悲鳴を上げていた。


 オリンピックの開催も重なり、支出の削減は急を要する国家的使命だった。

  

 そこで政府は、警察システムの改革に目を付けた。


 もともと国内の治安維持は国の専権事項であり、民間の参入は最も馴染みのないものと考えられてきた。


 だが、いつ解決するか分からない事件に、いつまでも警察官を携わらせておくよりも、犯罪の早期予防に力を割いた方が、予算の効率化につながるという意見が、経済の専門家のみならず、警察関係者などからも聞こえるようになってきた。


 また、国防面において、ここ日本共和国では、民間軍事会社と自衛隊の共同任務が既に導入されており、今までのところ、特に問題は起きていなかった。


 この国の国民性を考えれば、警察権を民間に委託しても、社会が大きく揺らぐこともないだろうという考えも大きくなっていた。


 日本は、世界的にも稀な安全な国として知られていた。


 大災害の時でも、人々は暴徒と化すことは無く、水や食料の配給を忍耐強く待つことができる。


 そのような事情を鑑みて、警察の業務の一部を民間に任せたとしても、治安維持に大きな影響が出ることは無いのではないか。


 もちろん、民間の参入により利潤の追求が優先され、業者間の不当な競争をもたらし、功を焦った末の冤罪が増えるのでは、という疑念や不安の声も上がった。


 議会では、与党、野党を巻き込んで、徹底した話し合いが行われた。


 厳格な審査による適性判断と、国家による一定の収入保障により、システムを担保するということで、最終的な合意がなされた。

 

 「探偵士」という名称は、私人が刑事事件の捜査に参加する探偵小説のイメージから採用されたものだ。最初は「民間捜査員」などという名称も考えられたが、最終的には「探偵士」で落ち着いた。


 探偵士には副業が認められているため、様々な分野の人々が「探偵士」となっている。元から探偵を生業にしていた人や弁護士、医師、会社員から元刑事など、自分たちの得意分野を生かし、捜査に役立てている。


 この制度の導入により、警察の業務範囲は、初動捜査と科学捜査、そして探偵士の捜査の補助、その他の治安維持に集中されるようになった。


 システム導入から10年経った今では、探偵士は市民権を得て、子供たちのなりたい職業のトップ10にもランクインするようになっている。 

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