4話
長い部室棟の廊下に2つの靴音と息遣いだけが響く。
こんなに長い廊下だったか?と思いながら邦敏達はひたすら歩き続けていた。
額には薄っすらと汗が滲む。
「ねぇ、トッシーここの廊下ってこんなに長かったっけ……?」
「……さぁな、俺は部室棟なんて縁がないしわからん」
「だよね……僕もあんまりこないからそう感じるだけなのかな」
心なしか声が震えていたので邦敏はチラッと誉を見るとこの紅さでもわかるぐらい顔を真っ青にし今にも泣きそうな顔をしていた。
「何かが出るわけじゃないだろうしそんな顔すんなよ……」
「だ、だって怖いものは怖いんだし!!しょ……」
しょうがない、と言おうとしたとき前方にあった階段からどす黒いなにかが転がり落ちて壁にぶつかる。
「え……?」
同時にそう呟き邦敏達はいきなり落ちてきたものに驚き歩いてた足を止める。
硬直している邦敏達をよそに壁にぶつかったソレはモゾモゾと動き赤黒い液体をビチャビチャと音を立てて出している。
――まるで血のような
「うっ……」
ソレが出している赤黒い液体から生臭い臭いが漂ってきて咄嗟に鼻と口を塞ぎ顔をしかめる。
液体を出し切っただろうソレはどんどん弱弱しくなり最後には動かなくなった。
いきなりのことで頭が追い付かない邦敏達はその場で動けないでいたが先ほどの赤黒い液体の臭いが充満し始めたためつい先まで動いていたソレを避けながら、今にも叫び出したい気持ちをグッとおさえ階段を一気に駆け上がり臭いがしないところまで無我夢中に走った。
何も考えずひたすら走ったところで臭いがないことに気付いた二人は息を整えるため床に座り込む。
「はぁはぁ……」
「い、い、今のなんだったの!?」
先ほどよりもっと顔が真っ青になり今にも泣きだしそうな声で邦敏につめよる。
「落ち着けって!!」
両肩を軽く叩かれた誉は我に返り邦敏の顔をみると誉とまではいかないが顔が真っ青になっていた。
「あ、ごめん……急に色々なことが起こったから……」
「……気にするな、それより」
そういうと後ろを振り向き耳をすます。
「金属音が聞こえる」
「ほんとだ、音はちょっと遠いね」
「ただこの階で何か音が聞こえるのは確かだ」
息を整えた邦敏は立ち上がり、かすかに聞こえる金属音の方へ歩き始める。あわてて誉も立ち上がり邦敏の後を追う。
「ねぇ、本当に行くの?」
「こんな場所で座り込んでても意味ないだろうしな。ただ向こうでは何が起こってるのかわらない、だから誉はここらへんの部室に入って待ってろ」
真剣な眼で誉をみてから足早に去ろうとしたとき本日二度目の制服の袖を引っ張られた。そこには肩を震わせてるが決意したような表情をした誉がいる。
「い、嫌だ!!僕も一緒に行く」
「お前……いいのか?」
「うん……こ、怖いけど一人よりはましだしそれにトッシーがいるから平気」
震えながらもニッと笑う。それをみて安心したのか邦敏がつられて笑う。
「んじゃあ行きますか!」
「うん!!」
先ほどの震えは消え力強く音のする方へ駆けて行った。