3話
「…………」
邦敏は異状な光景をただただ口を開けて呆然とするしかなかった。
それは誉も同じだったようで、飲んでいた紙パックのジュースが手から滑り落ち地面に落ちる。
「な、なんだこれ……」
やっとでた一声は邦敏自身でもわかるぐらいに声が震えていた。
空が紅色――月が血溜まり池のような異状な色をし薄暗く雲も星もない空を紅く不気味に染めていた。
異状なことはそれだけではない。
「ね、ねぇ、トッシーさっきから人の声がしないんだけど……」
顔を青ざめさせ肩を震わせる誉の言葉でハッと気付く邦敏、先ほどまでわずかだが遠くから聞こえていた生徒の声がパッタリ聞こえなくなり静寂が邦敏達を包み込む。
そう、まるでこの世界に邦敏達以外いないような――
「……杏奈っ!!」
我に返った邦敏は幼馴染の名前を叫び一目散にここからそう遠くない部室棟に全速力で走っていく。
突然走っていく邦敏に驚きながらも後を追うように誉も部室棟に向かって走っていった。
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部室棟についた邦敏は息切れをしながら後を追ってくる誉を待ちつつ辺りを見回す。
「はぁ……はぁ……きゅ、急に、どうしたの、トッシー」
やっと追いつき床に座り込む誉が肩で息をしながら途切れ途切れで喋る。
部室棟は電気がついてなく暗く外と同様静まり返っていて人の気配がしない。
「杏奈が部室棟でミーティングって言ってたからいるかもと思ってな」
ほら、と手を差し伸べる邦敏にお礼を言い立ち上がる誉。他と同様静寂で室内だからか普段より少し肌寒く感じ二人は同時に少し身震いをする。
息を大きく吸い自分を落ち着かせ
「……行くぞ、誉」
「うん……!」
杏奈がいるであろう部室へと向かうのであった。