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「ねぇ、七不思議の七つ目知ってる?」
首を少し傾げ長い黒髪を少し揺らしながらそう彼女は私に質問をしてきた。
これで何回目なんだ…と思ったが、「知らない」と首を横に振った。
「だよねー……」
溜息混じりにそう呟きがっくしと私の机に顔を伏せる彼女、このまま無視をしようと考えたが彼女の性格上無視をしてるとずっとこの状態でいるのでそれはそれで邪魔くさい。
「まだ七不思議ネタ探してるの? いい加減諦めたらどうなの」
「あと一つだけだから気になって気になって仕方ないの!」
ガバッと顔を上げていつもの倍以上の声の大きさで彼女が叫んだ。
彼女はオカルト研究会に所属しており次の会報誌に七不思議のネタを提出しようとしていた。六つ目まではわかったものの七つ目が誰にきいてもわからずかれこれ二週間ぐらい学園中を走り回っている。
「六つの七不思議でさえ勘違いってオチだったし七つ目も同じなんじゃない? そろそろ諦めたら?」
「それはそうかもしれないけど……でももしかしたらって思ったんだよー」
拗ねたように形の良い唇を尖らせながらこっちをじろりと睨んでくる。
これだけ必死に探している彼女に対して今の発言はまずかったかなと思いごめんと謝った。
「そもそも六つまでしかないって可能性もあるのかな……」
自分の発言でへこむ彼女を横目にふと、ある事を思い出した。
「あ、そういえば……」
「何!!?」
続けて喋ろうとした瞬間さっきまで自分の発言でへこんでいた彼女が目を輝かせながら私の両肩をつかんで揺すってきた。
「た、確か先生たちが旧校舎がって話を……というか痛いっての!」
「ごめんごめん、つい しかし旧校舎か……」
見落としてたわ、とブツブツ言いながら私の横をうろうろと歩き回ってから旧校舎が見える教室の窓まで歩いていった。
私も椅子から立ち上がり彼女を追うように窓までいき旧校舎をみた。
旧校舎は木造で少し遠いここからみてもわかるぐらい老朽化していて普通の生徒なら気味悪がって近づこうとしないほどである。以前肝試しで入ろうとした生徒が先生に運悪く見つかり指導され、それ以降旧校舎に行くのは禁止になり余計に生徒が近づかなくなった。
さっきまでブツブツと独り言を言ってた彼女が静かになっていたのでチラッと見ると、なにかを決心したような顔で旧校舎をみていた。
「まさか行くとか言うんじゃないよね」
「えっ!? まさか行くわけないって! 先生に怒られるの嫌だし!」
私の発言に目を泳がせながら返答する彼女を呆れながらみていると、いつも聞く最終のチャイムが学校中に響き渡った。
「あ、もうこんな時間なんだ……結局ネタつかめてないよ……」
今度は大きな溜息を一つついて文句を言いながら帰りの支度をし始めた彼女、いつも一緒に帰るので私もつられて帰りの支度を始める。
「先生に怒られるの嫌だしそろそろ帰ろっか。 あ、帰りながらさっきの話教えてよね!」
私の前を軽くステップをしながら歩いてた彼女がクルッと私の方に振り返り可愛らしい笑顔を浮かべながらそう言った。
最終まで七つ目の七不思議を探す彼女とそんな彼女を教室で待っている私、今日もいつものように収穫がない彼女を励ましつつ私たちはたわいない話をしながら学校を出ていつも別れる場所で“また明日”、と言い合い私は家路についた。
しかし、私は次の日から彼女の姿を見ることは一度もなかった――……