試験当日
平岡俊は夢見る受験生!
マニと別れた次の日が、試験当日であった……。
試験当日
次の日……大学の試験会場へ行き、試験を受けたが、センター試験以上にできなかった。
できなかったなんてレベルの話ではなかった。
マニのことが頭から離れない。寝不足と流れる涙で試験問題を読むことすらできなかった……。
それでも必死に問題を読み続けていると――急に吐き気がして、――解答用紙に嘔吐した。
「――きみ! 大丈夫かね!」
試験監督が数人走って近づいてくる。それでも試験を続けようと思ったのだが、
無理やり胃袋に詰め込んできた朝食のカツ丼……ドロドロに液状化した姿で解答用紙と筆記用具に吹き出てしまい、机の手前から制服のズボンにしたたり落ちていく……。
手で口を押さえても、止められない。試験も受けられなくなってしまうのか――?
それだけは駄目だ……なんとしても合格しなくてはいけないんだ!
「だ、だいじょうぶでう……」
目の前が暗くなり、嘔吐で汚れた解答用紙に顔から倒れ込むと、その後のことは分からなくなった。
生暖かい感触が……気持ち悪かった。
保健室のような所で目を覚ました。
久しぶりに長く眠っていた気がした。手に腕章をしたスーツ姿の人が、話しかけてくる。
「そんな状態では残りの試験を受けられないわね。お家の方にでも迎えに来てもらえる?」
マスクをしていた。
この時期はノロウィルスが流行している。教室は一時パニックになったそうだ。
「うちには車がありませんから。……タクシーで帰ります」
「分かったわ。あまり気を落とさず、また頑張って」
時計の針は3時を回っていた。
一教科しか……回答用紙に名前を書けなかった。
これまでしてきたことが、何もかも無駄だったと思うと……もう、
……笑うしかなかった。
博也はランクを下げて違う大学に合格した。
千絵はしっかり志望校に合格した。
二人を祝うような気持ちになんかなれなかった……。
卒業旅行は……来年に延期すると千絵が言ってくれたが、
行く気になんてなれなかった。来年度、たとえ大学に合格したとしても……。
スマホの電源を切った。電源を入れる日は……来ないかもしれない。
――こうして僕は、大学受験に失敗した。
高校の卒業式も――行かなかった……。
周りの奴らから見れば僕は……現実と夢との見分けもつかない、情けないやつ……だった。
気が付いた時には、全てが遅かった――。