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囚われたマニ

平岡俊ひらおかしゅんは夢見る受験生!

 俊は夢の中でマニとつながるが、マニは宇宙局に囚われの身であった。そして惑星ナガツキの命運を賭けた最後の作戦が始まる。

 囚われたマニ


 ――そこは見慣れた風景ではなかった。


 お風呂ではない見たこともない部屋。

 鏡もなく、マニの顔を見ることさえできない。


『センター試験、手伝いたかったのに、ごめんね』

 静かな空間。懐かしいマニの声が心に響く。

「そんなことどうでもいいよ。それより、マニの方がずっと心配だった――。大丈夫だった?」

 久しぶりに話せて、ようやく気持ちが落ち着いた。

 それと同時に喉の奥が熱くなる……。

 もう二度と話せないのかと。絶望していたんだ……。

『うん、大丈夫。でもここでは義眼が充電できないの。だから前みたいにずっと話せないの』


 マニには宇宙局の一室があてがわれていた。

 小さな四角い窓から外が見えるが、その他には四角い壁しか見えない殺風景な部屋。

「これじゃあ囚われの身じゃないか!」

 鉄格子が四角い壁になった――まるで牢獄だ。

「ごはんは……ちゃんと食べてるのか? あれから拷問とか酷い目には遭わなかったのか?」

『心配しないで。ナガツキの人はそんなに野蛮じゃないから大丈夫よ。義眼を調べられて、なかなか返してくれなかっただけよ。ちゃんと私の話も聞いてくれたし、俊の気持ちもしっかり伝わったわ』


 立ち上がって窓から外の様子を見る。

 恒星はすでに惑星サツキが隠してしまい。昼か夜なのかも分からない。

 ナガツキの空に浮かぶエネルギーパネルの端の方から、真っすぐ惑星サツキに向けて照射し続けるエネルギー集束レーザーだけが見えた。


 肉眼で違う星に届くのが見える――物凄い太さのレーザーだ!


 レーザーが当たっているところだけが青白くうごめき、溶接の光のように眩しい光を発している。

 火がついているような状態ではなく、もっと高熱で細かく爆発しているようだ。

『やれるだけのことはやったわ。あとは宇宙局の機密事項ですって』

 やるだけのことはやった。確かにこれ以上のことは、僕にはできない。


 でも、漠然とした不安――。

 気持ち悪くなるような緊張――。

 成功したとしても次から次に浮き上がる課題――。


 超新星になったからといって、エネルギーパネルが今までどおりに使えるはずもない。

 もし、失敗したら……10年後までに他の方法を考えなくてはならない――。 


『俊は悲観的だから……あんまり言いたくなかったんだけど……』

 そっとマニが告げた――。

『実は、冬を越すために充填していたエネルギーをニュートリノと一緒に照射しているの。これはもう星の命運を賭けた最後の作戦の始まり……。ガス状惑星サツキの表面に火を点けるだけじゃ連続した核融合なんて起こらない。核融合を持続させるためには、パネルに蓄えられた全てのエネルギーをニュートリノと一緒に最大出力で照射する必要があったの』


 全ての蓄えられたエネルギー――だって?


「それじゃあ――もし失敗したらどうする気なんだよ! 冬を乗り切れるのか? 一年間のあいだ、日が届かないんだろ!」


 成功したとしても、ベテルギウスがブラックホールになってしまう可能性だってあるというのに!


 光が届かなければ、大気までもが凍りつき、さらに数年後には飲み込まれてしまうと副局長があの日に言ってたのを痛いほど覚えている。

『どうせ、……滅ぶのがほんの少し早まるだけよ』

 長かったナガツキの歴史からすれば、ここ数十年……いや百年でも――ほんの少し――なのかもしれないが――、


 ナガツキの人達は楽観的過ぎるって!


 どうしてそんなにヘッチャラなんだ!


 しかし――、どんなに悩んでも……叫んでも……遠く離れた地球から、僕にできることなんて、

 ない――。

「クソッ! あるとしたら、……もう、神だのみくらいか?」

『神? 何それ? 前にも言ってたけれど……』

「え? 神を? 知らないの?」

『うん。教えて』

 ……急に聞かれると……答えられない。

「ええっと、地球を作った人……なのかな? 人間より偉い人? 人間が考え出したんだけど……」

 違ったような……。


 神様って総称するけど……本当は誰のことなんだ。宇宙のことなのだろうか?


『前に言ってた神話に出てくる人の話?』

 神話……神の話?

「ああ、それでいい――物語の話さ」 

『じゃあ実在はしないんでしょ。それなのに……俊も信じているの?』

 ――信じてなんかいないよ。

 ……それなのに、困った時だけ信じてしまう。都合がいいと叱られるかもしれない。……神様に。

「今は信じていたい。なんとしても成功して欲しい!」


 この作戦が成功するのであれば僕は、全財産を賽銭箱に投げ入れても惜しくない――!


『……ロマンチストね』


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