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掌編小説集7 (301話~350話)

本人と偽者

作者: 蹴沢缶九郎

「この偽者め、いい加減認めやがれ!!」


「いや、俺が本人だ!! お前こそ偽者だろう!!」


俺の目の前に突然現れた偽者と、このようなやり取りを小一時間続けている。




仕事から帰り、自宅のドアを開けるとそいつはいた。玄関に立つそいつは、自分が鏡から抜け出て来たのかと思えるぐらい自分に瓜二つだった。例えば両親を前に、俺と偽者のそいつが並んで、


「さあ、あなたの本当の息子はどっち?」


なんて問題を出しても、親は正解を当てられないのではなかろうか…。


外から帰った俺に、偽者の俺が言った。


「だ、誰だお前は!? お、俺が帰って来た!?」


帰って来るのは当然だ、何故ならここは俺の家なのだから。混乱する頭で俺は反論する。


「ちょ、ちょっと待て!! 俺は本物だ!! お前こそ誰だ!? お前は俺の家で何やってるんだ!?」


「俺は俺だ!! お前が誰だ!! 俺の家に勝手に入ってきやがって!!」


そこから、俺と偽者との言い争いが始まったのだった。





「この偽者め!! いい加減認めやがれ!!」


「いや、俺が本人だ!! お前こそ偽者だろう!!」


お互い決め手の欠ける不毛な言い争いが一時間を過ぎようとした頃、俺の偽者が疲れた様子で提案した。


「なあ、とりあえず一旦は二人とも本人という事でよくないか…」


それは正直、自分も思っていた事だ。何せ偽者が偽者と認めないのでは、言い争いは平行線である。さすがは俺の偽者、俺は偽者の提案を受け入れる事にした。


「ああ、そうだな…」


そう本人が認めた途端、本人は偽者であるエクトプラズムの口に吸い込まれていった。

だが、そんな事はもうどうでもよく、何が起こったかを知らない周囲の人間には、偽者が本人である事に変わりはないのだ。

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