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Chapter_07 目覚めた戦士

 

 遠い記憶。

 その女性は美しく、愛しい存在だ。彼女のお腹は膨れていて、新たな命を宿して笑顔になっていた。

 その笑顔は彼方のもの。

『早く出ておいで』

 愛しそうにお腹を擦る手は宿る命をあやす。白色で覆われた病室は彼女との優しい時間が流れていた。

 不意に彼女に質問をしてみた。

『赤ちゃんの名前ですか? ふふっ、もう決めています。女の子なら優しい子に育って欲しいから、優花。優しい花を咲かせられる人であります様にって』

 男の子なら?

『誰かを守れる勇敢な子……護。あなたに多分そっくりですね。きっとこの子が大きくなったらあなたとケンカばかりしていると思います。クス……考えただけで幸せです』

 この光景が彼女との最後の幸せだった。

 夢、夢を見ている様だ。

 大切な記憶の欠片。

 さぁ、目覚めなければ。

 




 

「う……」

 瞼が開き、脳が覚醒する。

 なんだ? わしはどうなったんだ? あの男、プセバデスとの戦い崖の底へと落ちた筈だ。しかし生きている。

 ここは何処だと辺りを見回す、白い天井が先ず見えた、それは白石で出来ているらしい。視線を移動させると周りも白石の壁、その中央に四角い穴が開いており、そこから光が漏れている。

 埃とは無縁の木で作成されたイスやテーブルに棚などが立ち並んでいて生活感を感じる、廃墟ではなさそうだ。

 どうやら家の中らしい。

 わしの寝ている場所は柔らかい布が何枚も重ね、敷かれてあった。体の上には何かの動物で作った毛皮の毛布が掛けてある。

「……ここは?」

 一体どうしてあんな状況から生き残れたのだ、しばし思案していると誰かの視線を感じ直ぐにその場所を確認する。

 その場所はこの家の入口、そこに居たのは小さな少女だった。

 緑色の短い髪、パッチりとした大きな瞳は空と同じ青色を内包して神秘的で可愛らしい少女。何歳くらいだろうか? 多分六歳か七歳くらいだろう。

「……君が助けてくれたのかい?」

 そう言うと少女は入口の外へと少し体を隠す。どうやら恥ずかしくて隠れたらしい。少女はそっと顔を出し、こちらを伺っている。

「わしは悪い人じゃないぞ?」

 少女はまだ隠れたままわしを見詰める。うむ、自分で悪い人じゃないと言って信じてもらえる訳もないか。ただでさえわしの顔は怖いのに。

 護にヤクザと言われて少し傷付いていたんだからな。

「おや、気付きなさったか」

 少女の後ろから現れた老人が放った台詞だ。長く白い髭が特徴の老人が目の前にいた。

「あなたが助けてくれたのですか?」

「いや、助けたのはこの子じゃよ。あんたが崖下にあった木の枝に引っ掛かっている所を見つけてくれたんじゃからな」

 そうか、崖下の木がクッション代わりになって助かったのか。

「そうですか……ありがとう。君の名前は?」

 問掛けにいくら待てども少女は何も答えない。

 やっぱり怖いのだろうか? 怖がらせない様にニコリと笑ってみせたが、結果は空振り。

「すいませんな、この子は口が利けないのじゃ」

「口が利けない?」

「はい。……この子はある日、私ら一族を襲って謎のやからに……目の前で家族を殺されたんじゃ。そのショックで利けなくなったんじゃよ」

 こんなにも小さな少女の目の前で愛する家族が殺された、どんなに心が傷付いたのだろうか? 口から言葉を消された少女はどれだけ……。

「まぁ、まだ体を休めなされ。色々訊きたい事があるが、先ずは傷を癒す事からじゃ」

「あの、この子の名は何と言いますか?」

「この子はリリー。さ、リリー挨拶なさい」

 そう言うとリリーはペコリと頭を下げる。何とも可愛らしい。わしも昔こんな感じの娘が欲しいと思った事があったな。





 それから数日の時が流れる。体はもう何ともなく完治した、鈍った体を引き締める為と気分転換に久し振りに外へと出てみる事にした。

 家から出て初めに視界に飛び込んだのは白石で作られた家が建ち並ぶ町。リハビリがてらにそこら辺を散歩してみようか。

「ここが第七の一族の秘密の場所か」

 わしが研究していた第七の一族。まだ解明し切れてはいないが、この場所は遥か昔の第七の一族が暮らしていた場所らしい。最初に目撃した聖なる場所はここより後に出来た場所だと分かった。

 歩き回っていると、小さな川が姿を現す。透き通っていて、綺麗な川だ。不意にある事に気が付く、草の茂みの中にリリーがいたのだ。どうやら付けて来たみたいだ。

「おいで、ほら、川に魚がおるぞ?」

 そう言うとリリーはゆっくりと近付いて来る。何かしないかと警戒している様だ。わしが川の方へと指差して魚の居場所を教える、リリーは小さく可愛い魚を見て、少し笑ってくれた。

 ゆっくりと時間がわしらを置いて行く。地に腰掛けながら川を眺めた。リリーもわしから少し離れて座り川を眺めている。

 辺りを見回し、ある植物に目が止まる。それは笹に似た植物。形はそのままだがサイズが大きい、手の平を覆う程に。

「……そうだ!」

 その笹の葉を一枚取り、昔遊んだあの笹船を作ってみる事にした。作業は難なく進み立派な船が完成、リリーが興味津々にそれを凝視していた。

 それを川に浮かべる。

「あう!」

 リリーは船が流れて行くのを楽しそうに見て驚き顔。

「作り方を教えようか?」

「あう? あう!」

 言葉は言えないが鳴く事は出来る様だ、綺麗な目を輝かせてわしまで駆け寄って来た。丁寧に作り方を教え込む。リリーは自分で作った船を川に流すと上手く浮き流れて行く。

「あう! あう!」

 嬉しそうにはしゃぐリリー、なんとも温かい時間に満たされた。

「そう言えば自己紹介がまだだったね、わしは源一郎だ。よろしくな」

「あう!」

 優しく笑ってくれた。どうやらわしが悪者ではない事が分かったらしい。

「君の事はリリーって呼んで言いのかな?」

「あう!」

 また、優しい笑顔を作り出す。こんな娘がいたら毎日楽しいだろうな。護と違って素直で優しい子だからきっと良い娘になってくれる。

 不意にわしはある事が気になった。この子はどうして崖下の森にいたのだろうか? この場所から結構離れた場所にあるらしい、それを女の子一人で何をしていたのだろう?

「リリー、わしを見つけてくれた日……あんな場所で何をしていたんだい?」

 この問掛けにリリーの顔が曇った。悲しそうで、今にも泣き出しそうな顔。一体何がリリーにこんな顔をさせるんだ?

「リリー?」

「あう……」

 リリーは走り去ってしまう。悲しそうな背中をただ見守る事しか出来ない。





 時が進みもう外は暗くなっていた。わしはあの家まで戻り、老人に食事をご馳走になっていた。

「そうですか、あなたは外の人間でしたか。我ら一族の事を調べるために来たんじゃね」

「ええ、第七の一族……この幻想の大陸で栄える種族」

 調査して分かった事は第七の一族はこの幻想の大陸独自の一族、第六感を持つ民が多く出現する特殊な一族だ。

 一族にはこんな昔話がある。遥か数百年前、この大陸を支配していた帝国があった。悪政で幻想の大陸を苦しめていたと言う。

 そんな混沌の時代に現れたのがひっそりと暮らしていた第七の一族。

 その一族の七の巫女が帝国に戦いを挑んだ。

 巫女はセヴンスセンスの力を使いその帝国を葬った。

 その後、巫女は突如として第七の一族の元から姿を消す。

 なぜ姿を消したのかは謎のまま、謎が多い七の巫女。わしはこの謎を突き止めたい。それがわしの夢だ。

「ほぉ……お前さん詳しいな。そう、数百年前、先代の七の巫女様は勇敢に帝国に戦いを挑み、勝利した英雄じゃ。それから帝国があった場所は今では砂漠になっておる。この大陸には小さな村や町があるだけで巨大な国はないのじゃよ」

「そうですか……平和に暮らしていると言う訳ですね」

「そうじゃった。……だが、あの謎の奴等が我らが聖地を犯した。この大陸によからぬ事が起ころうとしているみたいじゃ」

 謎の組織ヴァンクール。奴等は七の巫女を使い、この大陸を支配しようとしている。しかし七の巫女の力をどう利用する気なのだろう? 謎だらけだ奴等は。

 あれだけの組織力があれば、直ぐにでもこの大陸を支配出来るはずだが。

 七の巫女に執着する理由があるのか?

 考えても分からんな。そう言えば姿が見えないがリリーはどこに行ったのだろうか? 何処に行ったのかを老人に訊いてみる。

「ああ、リリーは水を汲みに行っとるよ」

「そうですか。あの、訊きたい事があるのですが」

 リリーが何故あんな場所にいたのかを問うた。

 老人がの話ではリリーは探しているらしい。

 親を殺した敵を。

 自分の手で敵を討ちたい。その思いがリリーをつき動かし、あの日、わしは助けられた訳だ。

「……リリー」

 だからあんなに悲しそうな顔をしたのか。リリーの悲しみは深い。

 とその時リリーが水汲みから帰って来た。水を貯めているバケツを一生懸命覚束ない足取りで運んで来る。

「ごくろうさん。さ、ご飯をお食べ」

「あう!」

 バケツを置き、直ぐに椅子に座りご飯を食べ始めた。どうやら今日のメニューのクリームシチューが好物らしい。目を輝かせながら食べている。

「あうっ!」

 ご機嫌の様だ。

「シチューが好物なのかい?」

「あう!」

 笑顔を咲かせて笑い掛ける。ニコニコと頬を赤くしながら好きだよと言っているのだろう。

 幸福な食卓の時間が終わり、もう就寝する頃になっていた。明かりを消し、夜が辺りを黒く染める。わしは毛布に潜り瞼を閉じた。

 しばらく沈黙が支配したが、誰かがわしの肩を叩いて来た瞼を開ける。

「ん? リリーか。どうかしたのかい?」

「あうぅ」

 リリーを良く見ると自分の枕をギュッと抱き締めてそわそわ。

 そうか、一緒に寝たいと言う訳か。

「……一緒に寝るかい?」

「あう!」

 返事をしてから直ぐ毛布に潜り込み、枕を並べて横になった。すぐに瞼を閉じ、眠りにつく。リリーはわしの服を掴みながら寝ている。

 そうだな、まだリリーも子供だ。寂しいはずだ。わしがその寂しさを紛らわせられるのなら、いつまでもおやすみ。寝顔は可愛らしく、いつまでも眺めていても飽きない。

 そして、リリーの頬が涙で濡れているのを指で拭き取った。




 翌日、意識が昏睡から帰還し始めた頃、瞼を開け、その光景を見る。

「……リリー?」

 気が付くと隣りに寝ているはずの少女が居ないのだ。早く起きたらしい。体を起こし、外へと歩いて朝の光を体に浴びせた。

 曇り一つない青色が天空に広がる、良い朝だ。

 気分良く朝日を堪能していると、老人がわし目掛けて走って来るのに気付く。

「た、大変じゃ、り、リリーが……」

「リリーがどうしました?」

「この場所を離れ、またかたきを探しに行ったのじゃ!」

 何と言う事だ、今外に出ればヴァンクールの兵隊に見付かる恐れがある。リリーが危ない!

「わしが探して来る!」

 部屋に置いて居た刀を手にし駆け出しす。


 


 ◆


 


 私が見る風景は森林の緑ばかりで見慣れた光景、源一郎おじちゃんは優しくて、どこかパパみたいだった。一緒にいると楽しい気分になれる。

 でも……。

 私ばかりが楽しい気分になっていいのかな? パパは“あいつ”が殺した。ママも“あいつ”が殺した。パパもママも二度と私の頭を撫でてくれない。二度と手を繋いでくれない。二度と子守歌を歌ってくれない。

「あう……」

 私は頬を濡らしていた。あいつを見つけ出して敵を取るんだ。

 長い時間歩き回っていると人の話声が聞こえて来る。物音がしない様に茂みからその声が発生する場所を眺めた。

「おい、まだ見付からないのか? 本当にここら辺であっているのか?」

「知らないよ、でも早く見付けないと俺達がポポスさんにどやされるぞ!」

 そこにいたのは仮面を被り、腕には鉄製の爪をつけた二人組。

 こいつらは私達の村を襲った奴だ。

「何を無駄口を叩いてやがる」

「ひっ!」

「ヤバッ!」

 第三者の声に驚愕した。その人物が視界に入る、そいつは二メートル以上はある体。坊主で筋肉が異常にある奴。

 そいつは仮面の奴等のところまで近付く。

「お前ら何サボっていやがるんだ! 俺がプセバデス様に叱られるだろうが! たく、さっさと第七の一族を探せ!」

「す、すいません。ポポス様。たく、俺達より強いからって威張りやがって……」

「お前何か言ったか?」

「言ってません!」

 あいつは、あいつはパパとママを殺した奴だ。

 見付けた、等々見付けた。

 私の中に何かが生まれた、それが私を突き動かす。

 ーーそれは憎しみ。

 足下に落ちていた石を拾い、あいつに投げ付ける。石は奴の頭に当たった。

「痛っ! 誰だこんな事しやがった奴は!」

 奴の目の前に出る。手には家から持って来た包丁を握って。

「あう! あうっ!」

 精一杯奴に叫ぶ、この人殺しと。

「なんだこのガキ…………ん? ああ、思い出したぜ、こいつは第七の一族のガキだ! ラッキー、これで一族を探せるってもんだぜ」

 憎しみは包丁をより一層強く握らせる。許せない。パパ、ママ、敵を取るからね。

 私は走った。包丁を握り締め真っ直ぐに奴まで。

「あーーうーー!」

「殺す気か? 馬鹿なガキ」

 奴は私を殴り飛ばす。空中へと浮遊して地面へと落ちた。痛い。衝撃で包丁が手から離れて飛ばされる。

「はっ、アホだろこいつ」

 奴はこちらへと歩み寄って来る。奴が私の直ぐ側に来た時、勢い良く立ち上がり、奴の右腕に噛付く。

「て、テメェ! 離しやがれ!」

 奴は何度も何度も拳を落とす。私は涙を流しながら噛付く。体中に痣が出来たって離さなかった、鼻血が止まらない、体中が痛い。

 右腕を思いっ切り振り払われ、地に叩き付けられてしまった。

「あぐう!」

「このガキめ!」

 蹴りが放たれ私のお腹に激痛を生む、それから何度も何度も足で踏み付ける。

 痛い、痛いよ。

「痛てぇじゃあねぇーーかぁ! このガキがぁ!」

「あ、あの、それ以上やると死んでしまうんじゃ?」

「五月蠅い! このガキはただじゃおかねぇ!」

 私はもう虫の息になっていた。悔しい。敵も取れないで私は死んじゃうんだ。

 ごめんなさいパパ。

 ごめんなさいママ。

 私はもう……。

 悲しみに覆われ世界に拒絶されたかの如く涙が視界を奪う。

 諦めた。

 視界には不意の映像が上映された。空に浮く黒い影、それが憎いあいつだと気が付くのに時間が掛かった。浮くと言うより飛ばされているが正しい。

 クリアになった世界に見知った顔を目に刻み付けた。

「リリー大丈夫か!」

「……あ……うぅ」

 そこに居たのはおじちゃんだった。私を探しに来てくれたの?

 おじちゃんは私に駆け寄り、優しく頭に触れる。

「痛かったねリリー」

「あう……」

 優しく私の頭を撫でてくれた。パパも私の頭を良く優しく撫でてくれたな。

「貴様、許さんぞ、リリーによくも……」

「痛てて……ちくしょうが、何者だお前! よくもやりやがったな!」

 そう言った瞬間、おじちゃんは持っていた武器を取り出して奴に急接近、その武器で奴をあっという間に倒した。本当に一瞬で凄かった。

「ぐわあああああ!」

「ポポス様! この!」

 仮面の奴等がおじちゃんに襲い掛かった。

 危ない、おじちゃん!

「乱撃!」

 無数の攻撃が仮面の二人に襲い、次々と攻撃が当たる。奴等は気絶し地面に落ちていく。

「ふぅ。こんな所まで捜索隊が出ているとは。早くここを離れないとな、リリー、すぐに戻って手当てをしよう」

「あう……」

 私は首を横に振る。奴を睨み付けた。

 あいつがパパとママを殺した憎き者。

「奴が敵かいリリー?」

「あう」

 痛む体を無理矢理起こす。痛い。痛いけど何とか立つ事が出来たが、ふらふらだった。

 飛ばされた包丁まで足が運んで行く。ゆっくりと。包丁を拾い上げ、憎き者まで噛み締める様に歩む。後少しだ、後少しで……。

 気絶している憎き者を眺めた。さぁ憎しみ、私の手に握られているものを奴に届けて。

 包丁を振り上げ、必然の様に落とす。

「あう!」

 私は驚いた。包丁がピタリと止まっていたからだ。

 包丁を握る私の手をおじちゃんが握り締め止めている。

「あう! あう! あう!」

 邪魔しないでよ、敵を討つんだから。お願いだから手を離してよ。

「リリー……この男と同じ人間になる気なのかい?」

 同じ人間?

「リリーの手は血に染めちゃいけない。もしこの包丁を落としたら、リリーはこの男と同類になるんだよ? 命を粗末にする殺人鬼になってしまうんだよ? そんな事になったらリリーのパパとママが……悲しむよ」

「あ、う……」

 悲しむ? パパとママが? 私がやろうとしている事はこの男と同じ事?

「あう、あう……」

「リリー、死んだ者が願う事がある。それは後に残された者の幸せだ。リリーのパパとママはリリーに笑っていて欲しいはずだよ? それを血で染めたらこの男と同じになる。何度だって言う。命を粗末にする奴になっちゃダメだ!」

 私は力なく包丁を地面に落とした。そして体の力が抜けてそのまま地面に膝から崩れる。私は泣いた、確かにこの男は憎い。でも、同じ人間になりたくない。

 命を粗末にする人間になりたくない。パパとママがそう願うなら私は憎しみを押さえよう。

 でも、涙が止まらない。

「あう、あう……うぐう……」

 おじちゃんが抱き締めてくれた。優しくて、温かくて心地いい。

「好きなだけ泣いていいからな」

「あぐ……あう……ぐう……お、おじちゃん」

 あれ? 私、声が……。

「リリー! 声が出たね、よかった」

「あう……おじちゃん、私……ならないから。パパとママが悲しむような人間に……ならないから」

「うん。それがいい。さぁ、帰ろう。リリー」

「うん」

 私達は戻る。憎しみは憎しみを生むだけだと昔パパが言っていた事を思い出す、何で忘れてたんだろう。とても大切な事を。

 おじちゃんの背中におぶされて、そのまま夢の中へと飛び立った。

 願うは一つ。夢で良いから、パパとママに出会えるようにと。




 ◆




「プセバデス様」

 ここはある森の中。

「エフニディ、見つかったか?」

「いいえ。まだ」

「お前も一族なのだろう? なぜ秘密の場所を知らない?」

「それを知るのは長老だけなんです。それ以外の人間には知らせない事になってます」

「探し出せ、総帥がそう願っている」

「は、はい……」

 弱々しくエフニディは頷いた。


 

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