Chapter_06 力の差
俺達はフォルティスと名乗った女の後を付いて行く。その途中で迷いの森と言う場所を通ることになった。何でも初めて入る奴は必ず迷う森らしい。
「いいか、俺様の後をちゃんと付いて来るんだぞ? はぐれたら…………」
そう言って歩き出した。はぐれたらの先は言わないのかよ!
たく、何なんだよ一体。
「まもる、どうしたの? 怖い顔、まだお腹が痛い?」
「大丈夫大丈夫、俺は打たれ強いからな」
心配をしてくれるエリスが可愛くて仕方ない。
そうだよ女性ってさ、エリスみたいに優しい人の事を言うんだ! あんな男女なんてエリスと比べたら月とすっぽんだぜ。
「おい貴様、今失礼なこと考えていただろ!」
フォルティスが睨みを利かせる、中々勘が鋭い。
「うるさいな、そんなこと考えてねーーよ!」
「ば、馬鹿! 先生にそんな口を」
エレオスの顔から血の気が引いて行く、それを疑問に思った瞬間、俺は気が付けば空中を漂っていた。
フォルティスが俺を殴り、その勢いで空中に飛ばされた訳だ。
「げふっ!」
「だから言ったのに」
空中から大地に真っ逆様に落下。痛い、物凄く痛い。
ちくしょうめ、何か言ってやると決心したが、フォルティスがズンズンと地響きを起てながら近寄って来た。
物凄く怖い顔で。こ、怖くないぞ。
「貴様、この際はっきりさせておく。俺様には敬語を使え、分かったか?」
「な、何で俺が……」
ゆっくりとしゃがみ込んで頭を鷲掴みされた。
「痛たたたたたたたた!」
そして、俺の顔に奴の顔が近付く。
「もう一度だけ言うぞ? 俺様には敬語だ。守らなかったら…………」
戦慄が走る。
ひぃ! 目が怖い、まるで悪魔だ! 守らなかったらのその先は何だ!
「ご、ごめんなさい。俺が悪かった……です」
素直に謝罪すると愛嬌のある笑顔になった。
こいつ、笑うと可愛いんだな。
「よし! 命拾いしたな!」
背中を悪寒が走る、命拾いって敬語じゃなかったら一体どうなっていたんだ? 不安に駆られながら俺達はフォルティスの後をはぐれないように後に続いた。
どれくらい歩いたのだろうか? 長い時間が経過してエリスに疲労が見え始める。迷いの森は植物、特に樹木がほぼ同じ形で見る場所を変えても変わらない風景に気が狂いそうになる。確かに案内がなかったら完全に迷って出られなかっただろう。
フォルティスはここに精通していて何でもよく観察すると微妙な違いがあるのだとか。俺には分からないな。
迷路を我慢強く進みようやく目的の場所に着いたらしい。良かった、エリスが倒れたら一大事だからな。
そこは樹木が避けるかの如く広場になり下は芝生らしき植物で覆われていた。その広場の中央には大木が佇む。大き過ぎて天辺が確認できない。
大木の太い枝に木造のロッジらしき家があり、梯子で上がれる様なっている。よく支えられるよな。
「ここが俺様の家だ! よし上がれ!」
梯子を登り始めた。フォルティス、エレオス、エリス、俺の順番で。ふと俺は気付いた、上にはエリスがいる。彼女の服装は白いワンピースらしき格好、これって少しでも顔を上に向けたら……見えるな。
「だ、駄目だ、そんな事……」
嫌らしい思考と戦っていると突如と悲鳴が上から降り注ぐ。
「キャ!」
エリスが足を踏み外したのだ。だが、無事だった。
その声に反応してしまって見上げてしまう。
「……な!」
み、見えた。し、白だ! 興奮と動揺で梯子から手を放してしまった。これは天罰だな、そのまま地上に落下。
痛い。
フォルティスの家の中は木材の家具が揃えてあり、木の香りが心地良い。ベッドが一つや食器棚を観察すると独り暮らしらしいな。しかし今はそれどころではない。
頭には見事な瘤が生まれていて痛覚をこれでもかと刺激する、エリスに手当てをしてもらう。
「まもる、大丈夫ですか?」
「い、あ、その……大丈夫さ」
心配そうなエリスの眼差し、言えない、エリスの下着に見とれて落ちたなんて死んでも言えない。
「顔が赤いです! 何か悪い病気なんじゃ」
ああっ、神様許して下さい。こんなにも純粋な少女を嫌らしい目で見てしまって、すいません。天罰を受け入れます。
「ち、違うよ! 大丈夫さ。俺、頑丈だからさ!」
そう説明すると安堵の表情を表し「良かったです。まもるが何とも無くて」と呟いた。
うっ、また胸が痛みそうだ。
「貧弱な奴だな貴様は」
フォルティスがやれやれと言いながら飲み物を運んで来た。
「修行が足りないんだよ」
「何だとテメェ」
「あ?」
ギロリと睨むフォルティス。しまった、敬語じゃ無かった。ヤバイ。うわ、目茶苦茶睨んでいやがる。こ、殺される!
「すいませんでした! 許して下さい!」
自分が情けない。その場で土下座して惨めだ。するとフォルティスが「次は無いからな?」と言い放つ。なんとか許してくれて助かった。
「こんな阿呆は放っておいて、エレオス、今日は何の用だ? それに襲って来た奴等は何者だ?」
「奴等はヴァンクールと言う組織です。エリスのセヴンスセンスの力を利用して、この幻想の大陸を支配しようとしている奴等です」
「ふーーん……で、今日来たのは俺様の助けが欲しいと言う訳か?」
「はい! エリスをここに匿って欲しいのです」
エレオスの頼みにフォルティスは何やら考えている。コーヒーを口に含み、しばらくしてから口を開く。
「確かにここなら見つからないだろうな。ここは迷い安く、初めて来る奴はここまではこれまい」
「はい、だから先生に頼みに来ました。先生ならエリスを任せられますから」
そうかとフォルティスが呟いた。俺達は心配そうに見つめているだけだった。
「……いいだろう、匿ってやる。しかしこれだけは覚えておけ、逃げているだけでは何も変わらないぞ?」
確かに。奴等から逃げ回っていても、その脅威が終わる訳では無い。いつかは戦わなければならないだろう。
「僕は……これから奴等を、ヴァンクールを倒すために旅立とうと思います」
「え! お兄様!」
「エリス、必ずお前が幸せに暮らせる様にして見せるからな」
ヴァンクールを倒すか。よし、俺もやってみるか。
エリスが安心して暮らせる世界を目指して。
「俺も行くぜ! あいつらをギタギタに……」
「やめておけ、貴様では足手まといだ」
俺が足手まといだと?
「ふざけ……ないで下さい! 俺だって戦えるんだ!」
「あの時の戦いを観察していたが自分の力量を把握出来てきてない様だった。ま、説明するより実戦が一番手っ取り早いか」
実戦? なんだ俺と戦おうって言うのかよ。上等だぜ、相手になってやる。
「エレオス、この馬鹿と戦ってみろ」
「何? シスコンとだと?」
「……分かりました。君、外へ出ろ」
「やってやるよ!」
シスコンは確かに強いけどな、俺だって強い。エリスに貰った力もある。見てろよシスコンめ、ギャフンと言わせてやるぜ。
外へと出る。そんな二人の背中を見つめるエリス。ただただ心配な眼差しを放って。
下に降りるとエレオスが大剣を握り締め、切っ先を俺に向ける。
「来い、エリスが目覚めさせた力、見せてもらおう!」
「後悔するなよシスコン!」
刀を鞘から抜き取り、奴目掛けて構えた。ゆっくりと相手に近付いて行く。エレオスは俺の動きを目で追っている、警戒してるな。よし、力を発動させる。意識を集中させると感覚が広がって行く感じが芽生えた。よし、この感じだ。
予測。
相手の筋肉の動きを瞬時に読取り、どう動くのかを予測する力。エレオスはあの大剣を真横に振り抜くだろう。
イメージが頭に流れ込んで来る。行くぞ。
「うをおおおおおおおおおおお!」
突撃、すると予測通り大剣を真横になぎ払う形で振り抜いた。接近する巨大な牙を足に力を込め、地面を蹴り上へと逃げた。空中から奴に目掛け落下を開始。
「参の剣、流星!」
この技は空中から全ての体重を刀に掛け、強力なな一撃を与える一撃必殺を極意とした技だ。一番強力な技だ、一溜まりもないはず。
一閃、刀が標的を狙う、空気を裂きながら落下。
だが、刀は当たらずピタリと止まっていた。
そんな馬鹿なと思っている隙に奴は俺の腕を掴む、片手だけでそのまま俺を空中に持ち上げる。
「僕の力を忘れたのか?」
こいつの能力は『変化』。手に掴んだものの重さを自由に変化させるの力。
俺を掴んで軽くしているのか。しまった。
「後悔しても遅い!」
妙な感覚が体を震わせる。地面に吸い寄せられる様な感覚。
轟音がけたたましく樹木を震わせる、気付くと地面にめり込んでいた。急激に体重を変化させたのだ。
「があああ!」
痛い。ちくしょう、やりやがる。だがまだ俺は負けて無い。見ていやがれ今度はこっちから反撃を……。
「う! な、なんだ? 身体が……動かない!」
「君は馬鹿だ。後先を考えずに飛び込むからこうなる。君は今、何倍もの体重になっていると言うのに。筋力がそれに追いつかないんだ」
更に食い込む。くそ、全く動けないなんて。無理矢理にでも動いてやる。
「ぐ、くっ、ににに、ぐぅ……う、動け!」
「無理だ」
そしてドスンと一気に体重が何倍も増え、気を失いそうになる。ようやくエレオスは腕を掴んでいた手を放す。
重さが無くなり、楽になったが余り動け無い。
「ちくしょう、まだ、だ!」
「な! あれを受けてまだ動けるなんて……いいだろう。戦ってやる」
そう言うとエレオスは自分の腰を掴み、空高く飛び上がる。
自分を軽くして高くジャンプしたのか。エレオスは剣を振り降ろしながら恐ろしい速度で迫る。そうか、剣を重くしているんだな。
「くそったれ、来やがれーーーー!」
刀を上段に構えた。だが、身体が言う事を利かない。
落下する剣は衝撃と轟音を重ねながら地面を抉り、吹き飛ばした。
剣が落ちた場所は、俺の真横だった。
逸れた? 嫌、逸らしたんだ。その衝撃だけで吹き飛ばされたんだ。その先の木にぶつかり一瞬呼吸困難になって地面へ。
痛みが全身に巣食う。
「まもる!」
エリスが駆け寄って来た、震える手で俺に触れる。
「大丈夫? まもる……酷いです、お兄様、酷いです! こんな……」
「い、いいんだ、エリス……」
エリスの言葉を遮る。これは真剣勝負だ。
負けは、負けなんだ。
「どうだ分かったか貴様」
フォルティスがこちらへと歩む。こうなる事が分かり切ってたと言わんばかりの顔で。
くそ、俺が負けたなんて。
「貴様は弱い。エレオスは七の一族で一番の強さを持つ男だ。あの時戦っていたあの女は強い。エレオスが苦戦するくらいにな……」
くそ。俺は弱いのか? こんなんじゃエリスを守るって言った俺は何だったんだ。
ーー嘘つき。
ちくしょう、まああの事を思い出す。
強くなりたい。強く。
「ちくしょう、強くなりたい、もっと強く」
「まもる……」
エリスが悲しそうに見つめている。俺になんて声をかけたら良いか分からないからだと思う。
「ま、筋は良いから磨けば光る……おい、俺様の修行を受けて見る気は無いか?」
「修行……」
「そうだ。修行次第では今とは比べ物にもならないくらい強くなれるぞ? どうする?」
「俺は……」
自分が不甲斐なくて恥ずかしい。ただの口先だけの男だ。
ダカラアンナコトガオキタンダ。
ーー嘘つき。
コノコエガ、ミミカラハナレナイ。
「お、俺を強くしてく……して下さい、お願いします!」
頭を下げた。強くなりたい。エリスを守る為と、自分の弱さを断ち切る為に強さを求めるから。
「良し決定だ! これからは俺様を……そうだな先生は聞き飽きたから、師匠と呼べ、良いな!」
「は、はい、師匠! ……あの」
「ん? なんだ?」
「何で俺を弟子にしようと考えたんですか?」
こんな俺をどうしてフォルティスは思ったのだろう。
「あーー、この森はな、食べ物には困らないから住んでいるんだがな、娯楽が無いんだ。ちょうど良く、良いおもちゃに出会えたんだ、退屈凌ぎが出来た!」
お、おもちゃって、嫌な言い方だな。退屈しのぎで教えてくれるのか。
あはは、なんだか笑うしかないな、おい!
「マモルと言ったな貴様。いいか、壊れないでくれよ? 楽しみが減るからな!」
壊れるって、俺に何する気だ? ヤバイ、今になってとんでもない事を言ってしまったんじゃないのか俺?
後悔する事になりそうだ。
「よーーし、いじめは明日からだ。腹が減ったから飯にするか!」
今いじめって言ったよな? 聞き間違いじゃないよな?
俺、死ぬかもしれない。
「おいマモル、そんなところでじっとして無いで飯を作れ!」
おいちょっと待て、俺はケガ人だぜ? ちょっとは優しさの欠片くらい見せてくれてもいいじゃないかよ。
こいつは鬼か? 嫌、悪魔かもしれない。
「あ、あの師匠、俺、ケガ……」
「ケガ? それがどうした、俺様の腹を空かせたままにしたら…………」
したらの先はなんだ! 毎回怖いんだぞ、ちくしょうめ。動けるか? ゆっくりと起き上がろうとした。ぐっ、体に力が入らないぞ。
そう思った時だ、急に体が軽くなる。嫌、傷が治ったからだ。そうかエリスが力を使って傷を治してくれたんだ。
「大丈夫ですか? まもる。えっと多分、もう痛くないと思います」
「あ、ああ! ありがとうエリス、助かったよ!」
大丈夫と分かるとエリスが笑顔を振り撒く。くぅ、堪らなく可愛い。顔を赤くしてエリスを見詰めていたら、エレオスは目茶苦茶睨んでいるのに気付く。
ち、シスコンめ、良い気分が台無しだ。
「おい! 早く作れ!」
フォルティスの蹴りが俺の尻を攻撃する。
「痛ってぇええええええええええええ!」
「もたもたするな! さもないと次は…………」
また先を言わないんだな。早く作らないと命を取られる! 直ぐに走り出す。
「ふん、良い気味だ」
エレオスの野郎は嫌な笑いを浮かべながら俺を見ていた。
いろいろあったが何とか料理完成だ。ふぅ、生きてるよ俺、て言うか料理作るのに命懸けってアホみたいだ。
でも、修行になったらどうなるんだ? ああ怖い、想像したくない。
「ど、どうしたんですかまもる? すごい汗です!」
エリスの優しさが嬉しい。やっぱりエリスは綺麗な心の持ち主だ。
「大丈夫さ! 俺……」
話の途中、顔に衝撃が走る。痛い。何が起きたのか確認すると顔にスプーンを投げられて当たったんだ。無論、投げたのはフォルティスだ。
「貴様ら、食事中にイチャイチャするな!」
「い、イチャイチャ!?」
してないっての。あれ? エリスの顔が赤くなっている様な気が。
「あうぅ、私がまもるとイチャイチャ……」
なんか変な想像してないか?
「エリス?」
「はうぅ、イチャイチャ……い、いけない事です!」
と叫んで両手で真っ赤な顔を隠す。一体どんな事がエリスの妄想の中で起こっているんだ? ちょっと気になる。
「なははは、こいつ可愛いな!」
何やらフォルティスがエリスを気に入っているらしい。嫌な予感がする、これで何回目の予感なんだか。
俺達は食事も終わり、一息ついていた。その中エレオスがフォルティスと何やら話をしている。
「先生、僕は明日ここを立ちます」
「そうか。エレオス、死ぬなよ?」
「……はい」
修行を受けて俺もいつかはエリスを守れる様くらいに強くなりたい。ヴァンクールの魔の手を阻む為に。
アノトキノコトヲ、クリカエサナイタメニ。
「さて、風呂入って寝るか。おい、エリス……だったな、俺様と風呂に入るぞ、良いな!」
「えっと、は、はい」
エリスが困惑していた。フォルティスと風呂だと? ヤバイって、絶対いじめられるぞ!
「さて……と」
フォルティスがおもむろに服に手を掛けて脱ぎ始める。
しかも俺達の目の前で。
「「うわあ!」」
俺とエレオスは直ぐに反対側を向き、目を瞑って、両手で目を隠す。
「な、ななな、何やっていやが……じゃない、何やってるんですか師匠!」
「あ? 何って、風呂に入るんだが?」
いや、そうじゃなくて、何で服を脱いでるんだよ! 慌てるだろうが! 俺達が居る目の前で脱ぐなんて非常識だ。
「なんだぁ? 女の肌を見た事無いのか貴様は? 別に貴様達の様なガキに見られたからってどうって事はないがな。さてと、エリスも脱げ!」
「ええっ! あ、あの、私は……ひゃん!」
何が起きてるんだ? 耳を澄ますと、服を脱ぐ音が聞こえて来る。それとエリスの悲鳴が。
つまり、俺の後ろで、エリスは、う、生まれたままの姿になっているのか。
「良し、風呂場はこっちだ付いて来い」
「あう、あうぅ……ふ、二人共み、見ないで下さいね」
そう言って二人の足音が遠ざかって行く。
ヤバイ、し、心臓がバクバク言っていやがる。一体いつまでこうしてればいいんだよ。
「……先生は昔からあんな人だ。周囲の目と言うものを全く気にしない。僕も昔はどれだけ大変だったか」
なんだろう、シスコンは気に食わない奴だけど、ちょっと同情して来たな。は! 同情している場合ない、俺はこれから大変な目に合うって事じゃないか! 嫌だなマジで。
とその時、風呂場の二人の会話が聞こえて来る。
『ひゃん! や、やめて下さい! あうーー!』
『本当に貴様は可愛いな、どれ、俺様直々に可愛がってやる! 覚悟しろ!』
『え、何するんですか? ひゃん! あ、だ、駄目です……そんなとこ触らないで下さい! ひゃーーん!』
そんなとこって何処だよ。
この会話を、顔を赤くしながら聞いていた。地獄だ。
翌日。早朝、エレオスが旅立とうとしていた。俺達はそれを見送る。
「それでは行って来ます」
「ああ。エレオス、鍛練は忘れずにやるんだぞ?」
「はい」
エリスはエレオスに近寄って行く。大丈夫だよとエリスを心配させない様にエレオスは笑う。そして俺と目を合わせ睨む。
「君、エリスに手を出したら僕は許さないからな!」
「なんだとコノヤローーめ!」
やはり手を出すと言う意味をエリスは分からない様だ。
その様子を見ていたフォルティスはエリスに何やら耳打ちを。
「いいかエリス、手を出すって言うのはな……」
耳打ちを聞いているエリスの顔がみるみると赤みを増して行き、プルプルと震え出す。
「あうっ! そんな……ま、まもるはそんな事……うう……は、ハレンチです!」
そう言って、両手で顔を隠す。一体なんて教えやがったんだ?
朝からドタバタしていたが、ようやくエレオスは旅立って行く。
エリスが幸せに暮らせる世界の為に。
俺は今出来る事をしないと行けない。守護四神将は強い、奴等からエリスを守る為に必ず強くなってやる。
「エリス」
「はい、何ですかまもる?」
「俺……強くなってエリスが笑っていられる世界を作るから……これは約束だ」
「まもる……嬉しいです。ありがとうございます」
二人の間に約束の絆が生まれた。優しい朝の中で交わした約束。
必ず俺は……。
「良し、早速修行に入るか。ま、朝だし軽く、二十キロ走るかな」
「……え?」
二十キロが軽くだと? じゃあ、本格的になったらどうなるんだよ。
「俺様の修行は辛いぞ? 辛すぎて大変な事になるかな。例ば…………」
またその先を言わないのかよ。
こうして俺の修行が始まる。一体どうなるんだこれから?




