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Chapter_26 エリスのお願い

 二つの月が現れた夜から二日後、今日もエリスに会いに神殿へと向かっていた。

 だが、最近エリスの様子が変だ、時々ぼーっとしている事が多い。多分、あの月が出てからだ。あれがなんなのかエリスは知らないと言うばかりだし、気になるな。

 神殿の近くに差し掛かると木の影から何かが飛び出た。

「まもる!」

「わぁ!」

 不意討ちを食らってしまい驚き誰なのかの確認が遅れた、だが聞き慣れたら声に眼前の人物を確認するとそこにエリスがいた。

「……エリス?」

「あはは、まもるったらあんなに驚くんだもん、面白いです!」

 あれ? 何でここにいるんだ? エリスは巫女で、危険が無い様に神殿にいる筈だろ? それなのに目の前にいる。

「何でここにいるんだ?」

「酷い言い方です! せっかく神殿を抜け出してまもるに会いに来たのにです、もうまもる何か知らないです!」

 ぷくりと頬を膨らませてそっぽを向くエリス、その仕草がまた可愛い、なんて考えて無いで謝らないと。

「ご、ごめんエリス、俺が悪かったよ」

「……じゃ、私のお願いを聞いてくれたら許してあげます」

 お願い? なんだろう?

「私とデートして下さい、そうじゃないと許しません」

「でえと? ……デート! 俺とエリスがデート!」

「嫌、ですか?」

「嫌じゃない、絶対そんな事無い! し、しようじゃないかデート!」

 驚いた、まさかエリスが俺をデートに誘うなんて。本当にびっくりだ。

 何があったかは知らないけど、あの夜から元気無かったからな、明るいエリスを見られて良かった。

「そうです、あと一つ、今日はどんなわがままも聞いて下さいね? 良いですか?」

「へ? あ、ああ、分かったよ」

「じゃあ、さっきのは許してあげます。それでは早速わがままです、……て、手を、私と手を繋いで歩いて下さい……いいですか?」

 潤ませた上目でそんなこと言われたら嫌とは言えないって、最高にエリスが可愛い。紅葉する二人の頬、俺とエリスの手が重なる。柔らかくて小さな手だ。

「ど、何処に行くんだ?」

「えっと……あはは、考えてませんでした」

「じゃあ適度にぶらつくか?」

「はい、それじゃ川の方へ行きましょう。ここら辺は大きな魚がいますよ」

 手を繋ぎながら二人は歩き出す。心臓がうるさい、エリスの手を握っいるから、余計に彼女を意識してしまう。

 エリスの歩幅に合わせて歩く。

「こ、ここらってさ、冬はどうなるんだ? 雪とか降るのか?」

「ゆき? まもる、ゆきってなんですか? それにふゆも分かりません」

 そうか、冬って俺の世界しかないらしい、雪を知らないのか。

「なんて言うかな、大気中の水蒸気が結晶になって、空から降って来るんだ。雨と違ってゆっくり落ちて来る、で、それが……」

 俺の分かる範囲で雪を説明して行く。その次は冬の事や四季を。

 エリスは興味津々で聞いてくれていた。

「まもるは物知りですね、幻想の大陸では天候に雪はありません。この大陸は気温が一年中暖かいんです、だから寒いのは夜だけです」

「へぇ、やっぱり違うんだな俺のいた世界とは」

 改めて、自分がいる場所が別の世界だと実感する。

 この世界にはまだまだ知らない事がたくさんあるんだろうな、なんだろう、色んなところへと行ってみたくなるな。

「……そう言えば、何でこの大陸は幻想の大陸と呼ばれてるんだ?」

「えっとですね、実は幻想の大陸と名前を付けたのはまもると同じ外の人間だったらしいです。その人は偶然この世界に来た、えっと……魔術師だったとか。自分とは別の世界、それはまるで夢の様、本当は触れる筈のない世界だったから、幻想に迷い込んだみたいだ。だからこの名になったそうです」

 魔術師か、そう言えば俺がこの世界に来る時、洞窟の奥は妙な模様が描かれていたな。今考えるとあれは魔方陣だったんだろうな。

 その洞窟の奥で血を垂らすと、ここへの道が通じる。

「そっか、それならその魔術師に感謝しないとな」

「え? どうしてですか?」

「だってさ、そいつがここへの道を作ってくれたおかげでエリスに出会う事が出来たんだ、感謝しないとだろ?」

 と言うと、エリスが何故か笑い出す。

「ふふ、まもる、今凄く恥ずかしい事を言いましたよ?」

「へ? えっと、う……いじめるなよエリス」

「あはは、でも、本当に感謝ですね。さ、行きましょうまもる」

 グイッと俺の手を引っ張ってエリスが先頭を走る。

 普通、男の俺が引っ張るのが当たり前の様だが、エリスが楽しそうにしていたのでそのまま身を預けた。

 楽しい時間が過ぎて行く。二人で川遊び、ずぶ濡れになる程に遊んだ。笑い声だけが二人の世界。誰にも干渉されない、たった二人だけの時間。

「あはは! まもるビショビショです!」

「誰のせいだよ、そう言うエリスだってビショビショだぜ?」

「わ、酷いんだ」

 二人でまた笑い合う。本当に楽しい。

 川から上がろうとエリスの手を取った時だ、エリスがつまずきそのまま一緒に倒れた。

「痛っ、大丈夫かエリス?」

「痛たた、ごめんなさいまもる……あっ」

 驚くエリスの声。同時に俺も驚く、俺は仰向けで岸に倒れていて、エリスは俺の上にうつぶせで倒れていた。

 俺を多い尽くす様に、そして互いの顔が近い位置に。

「あ、えっとエリ……」

 急だった、柔らかな感触を唇が感じる。それはエリスの唇、彼女からのキスに戸惑いを隠せない鼓動、心臓がバクバクと動いていた。

 長いキス、時間が止まった様に感じる。エリスがこんなに大胆だったなんて知らなかった。でも、そんなエリスもまた良い。

 愛しくて唇が別れる。

「……このままじゃ二人共風邪引いちゃいますね」

「そうだな……」

 俺だけが動揺している様だ、エリスは優しい笑顔をしながら頬を赤らめている。

「この近くに小屋があります、そこなら薪がある筈ですから、身体を暖められます」

「そっか、じゃあ行こうか」

 川から離れてしばらく森の中へと進む。そこに木で出来た小さな小屋が現れた。

 だいぶ遠くまで来たな、それにさっきまで晴れていたのに雲行きが怪しい。雨が降りそうだ。

「雨が降りそうだな、急ぐか」

「はい、急ぎましょう」

 小屋まで走ると、その途端に雨が降り出した。

 小屋に入る頃には土砂降りとなっていた。これは当分降り続けるだろうな。中はクワや草取り鎌などの農機具が置いてあり、狭くなっている。

 部屋の真ん中に四角形の穴が空いている。ここで焚き火をするんだろうな。

「まもる、この穴に薪を入れて火を熾します、あの薪を使いましょう」

 エリスが部屋の隅を指差している、そこに薪の束があった。それを使って火を熾す。でも、どうやって火をつけるんだ? 火を熾す道具なんて無いぞ?

「これを使います」

 と言って差し出して来たのは小さな石。真っ赤な色が特長だ。

「これは発火石と言いまして、水を掛けると熱を発するんです、凄い高温で、薪に入れるとその熱で火を点けちゃいます」

「へぇ、面白い石だな」

 石に雨水を掛けてやると放熱を始めた、熱の上がりかたが早いので火傷しそうだ。すぐ薪に投げ込むと煙が立ち上ぼり、火が付いた。

「すげぇ、こんな石で火が付くなんて」

「まもる、服を脱がないと風邪を引いてしまいますよ」

 そうだった、全身びしょ濡れだったんだ、俺は上着を脱いだ。でもどうする? エリスの前で下を脱いだら恥ずかしいしなと思っている時だ、エリスは何の迷いも無く服を脱ぎ捨てる。

 エリスはワンピースを着ていたから、それを脱いだらもう下着だけだ。すぐに顔を背ける。エリスが裸同然でいる、それだけで心臓が激しく鼓動した。

「えっと、タオルみたいなのは無いかな!」

 恥ずかしさを隠す様に辺りを物色し始める。すると、毛布が出て来た、多分ここで寝られる様に置いてあるんだろう。

「意外と綺麗な毛布だな、エリス寒いだろ? これに包まれよ……エリス? 話聞いてるのかエリ……」

 突然、エリスが後ろから抱き付いて来た。彼女の肌の温もりが直に伝わって来る。

「まもる、私の温もりを感じますか?」

 温かな彼女の熱が肌に直接伝わる。

「まもる、私の鼓動が伝わってますか?」

 トクン、トクンとリズムを刻んで伝わって来る。

「まもる、私が好きですか?」

「そ、それは当たり前だ、俺はエリスの事……」

「だったら……まもるの温もりを私に下さい」

 え? それって。エリスが俺から離る。その後すぐに下着を脱ぐ音が聞こえる。まさか、エリスは今何も着ていない状態?

 一体どうしたんだ? なんて言うか、いつものエリスらしくない。

「まもる、こっちを向いて下さい。私を……見て下さい」

「ち、ちょっと待った! ど、どうしたんだよ、いつものエリスらしくないぞ?」

「……まもるは私の事嫌いですか?」

「そんな訳ない! ただ俺は……そういった事は大切にしたいし、その、あの……」

 何をごちゃごちゃと言い訳をしているんだよ。本当は俺がふ抜けなだけなんじゃないのか?  でも、何かがおかしいんだ。ハッキリとしている訳じゃないんだけど、違和感を感じる。何かを急いでいる、そんな感じを彼女から感じるんだ。

 あの日から、二つの月からエリスの笑顔に少し陰を見る様な印象を受ける。気のせいだろうか?

「……エリス、何を急いでいるんだ?」

「え? わ、私はただ……まもるとの思い出が欲しいだけです……私は…………ごめんなさい、まもるを困らせてしまいましたね。今の事は忘れて下さい」

「俺こそごめん……」

「でも、キスは良いですよね?」

 エリスとキスをする。何度だってしてやる、いや、していたい。

 永遠にずっと。




 しばらくしてようやく外が晴れた。雲の隙間に太陽が顔を出す。服も火に当てていたから乾いている。

「晴れたな、エリス、そろそろ聖なる場所に戻ろうか」

「はい……あ、あの、まもる、もう一つお願い事があるんですけどいいですか?」

「なんだよ、今日は願い事を聞かなくちゃならないんだろ? なんでもいいよ」

 何だか言いにくそうにしているな、何をお願いしたいんだろうか?

「その、私、まもるがいた外の世界に行ってみたいんです。まもるが生まれ育った世界を見たいです……ダメですか?」

 まさかこんな事を言うなんて。でも、決戦の時に俺が言ったんだもんな、外の世界に行こうって。

 なら答えは決まっている。

「良いぜ、俺のいる世界をエリスに見せるよ。ただ、エレオスがなんて言うかが気になるけどよ」

「お兄様は私が説得しますから」

「そっか、なら親父に言わないとな。あれからずっと調べものに夢中だからたまには気分転換しないと参るぜあれじゃ」

「じゃあ直ぐに戻って、明日、外の世界へ向けて行きましょう!」

 明日っていきなりだな。でもいっか、エリスが元気になってくれるなら。

 急いで聖なる場所まで戻ると、エリスは「お兄様に頼んで来ます」と言って神殿へと走って行く。

「本当に元気になったな」

「あら? マモ、何しているのよこんなところで」

「アリアか、何って……どうしたんだよその荷物」

 アリアは大きな鞄を持っていた。

「あたしこれから帰るの、パパの仕事手伝わなきゃいけないから……でも仕事が終わったらまた来るわよ」

「そっか、頑張れよ」

「うん……マモ、元気にしているのよ?」

「俺は元気だけが取柄だ」

「そうね、じぁあもう行かなくちゃ。バイバイ、またね」

 そう言ってくるりと回り、アリアの背中が小さくなって行った。

 さてと、エリスを待つ間何をしていようか? 暇だ。

「こんなところで何やってるんだ護」

「ん? なんだ親父か……あ、丁度良かった、実はさ」

 丁度良く親父に会ったので、エリスが外の世界に行きたいと言っている事を話す。

「そうか、お嬢ちゃんがね……研究もそこそこ進んだし、わしは別に構わないがな。でも、明日とはまた急な話だ」

「確かに急だけど、エリスが行きたいって言ってんだ、良いだろ?」

「ふっ、どうやら本当にお嬢ちゃんにイカれたらしいな護?」

 ニヤニヤと嫌らしい笑いでそう言ってきやがった。この野郎め。

「何がイカれただ、クソ親父!」

「父親にクソ親父だとぉ? よくも言いやがったなクソ息子!」

 久し振りの喧嘩だ。本当に色々あったからな、喧嘩だが何だが嬉しい。しばらく言い合っていると、エリスとエレオスがやって来る。呆れ顔で。

「喧嘩か? どうせ君が妙な事を源一郎さんに言ったんだろう?」

「俺が悪いみたいに言うんじゃねぇ! ……エリス、どうだったんだ?」

「お兄様も付いて行くと言うなら良いと了承を貰いました! 明日出発しましょう!」

 エレオスと一緒なら良いか、確かにこいつなら付いて来るだろうな。

 でも、エリスは七の巫女だ、番人達が良く許したよな? この事をエレオスに伝える。

「僕が護衛するんだ、君なんかが守るよりよっぽど安全だ」

「テメェ、喧嘩売ってんのか?」

 エレオスが護衛すると言う事で納得させたんだろう。

「あの、まもるのお父様、明日、良いですか?」

「良いとも、お嬢ちゃんに外の世界を見せてやる」

「良かったです……じゃあまもる、明日に供えて準備をしてから私もう寝ます、明日までバイバイです!」

 と言って走りさって行った。まるで疾風だな。

「……僕も準備をするから。源一郎さん、護、では明日」

「うむ、では明日な、おやすみエレオス君」

 エレオスもエリスの後を行く。さて、明日いよいよ元の世界に戻るのか、本当に久し振りだ。

「親父、リリーも連れて行く気じゃないだろうな?」

「な、どうして分かった!」

 やっぱり、リリーは本当に親父に懐いている。

 俺にも懐いたな、お兄ちゃんなんて呼ばれているんだけど。でも、妹が出来たみたいで嬉しいと思った事は親父にはナイショだ。

 俺達も明日のために準備と就寝する。




 そして、夜明けがやって来た。

 清々しい朝だ。天気は晴れ、良い天気で良かった。これならスムーズに出発出来るだろうな。

 荷物を持ち、外へ出て見ると目の前にエリスが立っていた、さては待ち切れなくて早起きしたな? 朝の弱いエリスが良く起きられたよな。

「まもる、おはようです!」

「あれ? 良く起きられたよな? まだ寝ていると思ったぜ?」

「うぅ、まもるは意地悪さんですね! 酷いです!」

 頬を膨らませる彼女に懸命に謝罪するとなんとか許してくれた。あはは、やっぱりエリスは可愛いな。しばらくして親父とエレオスが来る。だが、親父に元気がない。

「どうしたんだよ親父?」

「はぁ、リリーが風邪を引いてな、連れて行けなくなったんだ」

 なるほどな、無理に連れて行って身体を悪くしちまうもんな、仕方ない。

 こうして出発する。フォルティスやリヴァーレに会って行こうとも思ったが、また帰って来るんだ、そのまま出発する事にした。

 エリスと楽しくお喋りをしながら歩いた。

「まもる、手を繋いでも良いですか?」

「どうしたんだよ今さら、良いに決まってる」

 柔らかく、小さなエリスの手を感じる。気が付けば森の中を歩いていた、この辺りだったかな? エリスと出会ったのは。

 さらに進み、洞窟が目の前に現れる。ここが外の世界と繋がっている場所だ。

「ここだ、この向こうが外の世界だ、いよいよ行けるな?」

「そうですね……もう直ぐです」

「久し振りだな、護、行き方は覚えているな?」

 行き方、洞窟の奥は行き止まりで、辺り一面に魔方陣の模様が描かれている。そこに一滴の血を垂らすだけで良い、そうすれば向こうへの扉が開かれる。

「覚えてるって」

 洞窟へと踏み入る。すると不意にエリスが俺の前に立つ。

「まもる、私の事好きですか?」

「へ? あ、当たり前だ、……どうしたんだ急に?」

「え? あ、えっと、何でもないです。えへへ、ちょっとまもるを困らせてみたかっただけです!」

「そ、そっか……」

 なんだよ、マジで可愛いじゃないかよ。

 こんなやり取りをしながら等々奥に辿り着いた。天井、右左の壁、地面、すべて魔方陣が描かれている。

「それじゃあ、わしが血を垂らすぞ?」

 親父が刀で親指を少し切り、魔方陣に血を垂らす。すると陣が光始め、何もなかった目の前の壁が真っ赤な光を放ち始める。

 これが扉だ。

「わしが先に行くぞ?」

 そう言いながら親父が光る壁の中へと入り、消えた。

「さてと、俺達も行こうぜエリス」

 行こうと足を踏み出した時だ、エリスが俺の背中に抱き付いて来た、抱き付く力が凄く強くて痛い。

 どうしたんだ?

「エリス?」

「わ、私……まもるが好き! 大好きです! 願うならいつまでも一緒にいたい。ううっ、どうして私達は出会ってしまったんでしょう、もし出会わなければ……ぐす、まもる、私を好きだと言ってくれましたね? でも、忘れて下さい。私を忘れて下さい、私を……嫌いになって下さい。私は最初からいなかったと思って下さい、お願いします……」

 え? 今なんて?

「何を言ってるんだエリス! 何を……」

 抱き付いているエリスを引き離して彼女の顔を見ようと振り替えると、柔らかな感触が唇に。それはエリスの唇だ、俺と口付けを交わす。

 そして唇が離れ、エリスは涙目で俺を見詰める。

「……まもる、さようなら、ごめんなさい」

「え?」

 次の瞬間エレオスが俺を突き飛ばす。そのまま扉へと吸い込まれて行く。

 エリスが見えなくなってしまった。

 何が起きたんだ? エリス?

 光りを抜けると、別の洞窟の中に出て来る。ここは俺がいた世界だ。訳が分からないがとにかく戻らないと。

 だが、扉が光りを霧散させ消失してしまう。

「な! ちくしょう!」

 自分の刀で指に傷を付け、血を垂らす。

 だが扉が開かない、いくら待てども開かなかった。

「どうなってるんだよ、エリス、エリス、エリスーー!」

 ただの壁を殴る、何度も何度も。頭の中にあの言葉が繰り返し再生される。

『さようなら、ごめんなさい』

 一体どうしてそんな事を?

 彼女を思いながら、血まみれの拳がただの壁を叩く……。


 

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