Chapter_24 勝利を信じて臨む決戦
今まで色々な事があった、その全ての始まりがあの日、綺麗な金色の髪を持つ不思議で神秘的な彼女に出会った事から始まったと思う。
彼女の名前はエウカリス・アピュエース、通称エリス、綺麗で可愛い女の子だ。他人の為に涙を流せる彼女は全てを包み込む優しさを持っている。
彼女といる時間が俺にとってたまらなく貴重で尊い。
安らぎの時間を台無しにしようとしている奴がいる、エリスだけじゃない、他の人間を悲しませる奴。
俺はただ彼女と一緒に笑っていたいだけだ。
俺はただ彼女と話していたいだけだ。
俺はただ彼女と美味しいものを食べ、綺麗なものを一緒に見たいだけだ。
俺は……彼女が好きなんだ。
理屈じゃない、この沸き上がる感情は言葉に出来ない。始まりは贖罪の為だった、救えなかったあの子の代わりに守ろうとした。
今はそうじゃない、彼女との過ごした時間が代わりではなくエリスを守りたいと思った。もう彼女なしの人生は考えられない。
彼女を守る、そして彼女と戦う。俺達の明日を得る為に。
武器を掲げ、爆発する感情を言葉に乗せ、奴に、ファントムに向かう。
巨大な爪が落ちてこようとしている、俺とエリスに向かってファントムが切り裂こうとして来た。エリスを抱き抱えて退避、轟音と共に屋根の破片が飛び散る。退避しながらエリスが奴に光の槍を放つ。
だが、固い皮膚に弾かれた。
「そんな、利かないです!」
「ふははは! オレの皮膚は鋼より固い! 巫女、貴様の攻撃は怖くない!」
動揺を隠せないエリス、当たり前だよな彼女は戦闘経験がほとんど無いに等しい。手段を封じられて焦るのは無理は無い。
だが、そんなものは俺がふさいでやるだけだ。
「気をしっかり持てエリス! 弱点は必ずある、焦ったら負ける」
「は、はい!」
固い皮膚は確かに厄介だ、なら、それ以外を攻撃すれば良いだけの話。
「アリア! 奴の目を狙って撃ってくれ!」
「了解よマモ、あたしの射撃、優秀なんだから!」
両手に装備されている二丁の拳銃、アリアは狙いを定め、引き金を引く。銃声は連続して吠えた、しかしファントムは姿を消した。時空離脱を行った様だ。
「見えてます!」
エリスに奴の姿が見えている、光の槍を無数に発射、だがやはり全て弾かれ、奴は姿を現す。その場所は空、翼を羽ばたかせて飛び回っている。
「ふん、無駄な足掻きを……」
ファントムは空中からこちらを眺め、口から炎の塊を放つ。それを何度も。
空から炎の雨が降り懸かって来る。皆はそれを避けながらどうするかを考えていた。
「あの野郎め、あんな高くにいたんじゃ攻撃出来ないじゃねぇか!」
「僕に任せてもらおう、進化した能力、重力を使えばあそこまで行ける」
「なら私も行こう、ゲートを開けばあそこまで行けるはず」
エレオスとリヴァーレが空を睨みながらそう提案をした。なら、二人のお手並み拝見だな。
エレオスが重力を解放、身体の周りが蜃気楼の如く歪んで見える、おそらく体の周りに重力の効果があるのだろう。地面を蹴り、エレオスは空へと飛翔。
それに続き、リヴァーレが目の前の空間に手を翳す。すると空間に亀裂が現れ、その中へと入って行った。ファントムの真上、空中に絵画にひびが入るかのように亀裂が生じ、中から現れたのはリヴァーレだ、あそこに空間を繋げた様だ。
上と下からファントムに攻撃、エレオスの大剣を真直ぐに突きながら進む。リヴァーレはファントムの背中目掛け、落下を利用して蹴りを放つ。
「悪を貫け、アタンシオン!」
「私の攻撃、味わってもらう!」
リヴァーレの蹴りがファントムの背中に直撃した。だが皮膚は固い、背中の上から蹴り、拳の連打を発動する。
「ふははは! 無駄な事を!」
ファントムは身体を回転させ、リヴァーレを空中へと捨てる。そのまま地上へと落下、ゲートを開き地上へと戻った。
アタンシオンと共にエレオスがファントムに突撃する。
「馬鹿め、貴様の攻撃など利くものか!」
「やってみなければ分からない!」
大剣がファントムと激突する。やはり固い皮膚に止められる。
「だから言っただろうが!」
「なら、これならどうだ!」
重力を四方へ解放していく、その力はファントムを覆い尽くす。
「何倍もの重力、それに耐えられるか?」
エレオスとファントムが地上にスピードを加速させながら落下し城の中へとめり込んだ、破片をばらまきながら。
「お兄様!」
巨大な穴を覗く、中は薄暗く下まで見えない。エレオスは大丈夫なのかと探していると薄暗い闇が急に明るくなる、それと熱を感じる、その光は上へと這い上がって来た。
それは炎、危険を感じ、離れる様に皆に言い、回避。穴から火柱が空を焼く。
「炎? ファントムの仕業かよ!」
「何て威力……ああ! お兄様!」
火柱からエレオスが姿を現す。火ダルマに何らながらこちらへと吹き飛んで来た、屋根に転がりどうにか炎が吹き飛ぶ、どうやら無事みたいだ。
「くっ危なかった、火を吐くとは」
「無事なのかよ、一体どうしてだ?」
「重力を発動し、熱を下へと送って直接炎に触れない様にしたんだ」
安堵を感じる、だが、火柱が吹き飛び、ファントムが姿を現した。くそ、無事だったか。
「貴様らにオレは倒せんぞ! ふははは!」
「やってみなきゃ分からないだろうが!」
と言い放ちファントムの背中を狙い、フォルティスが駆け寄り蹴りを放つ。ヒットするが皮膚に弾かれる。
「フォルス、オレを殺そうと言うのか?」
「その名で呼ぶな! 貴様なんかに呼ばれてたまるか!」
「ふははは、イデアの記憶を読むと……そうか、お前はこいつを父親の様に思ってるんだな、助けたいのだろうが無理だ! オレの能力である『支配』、取り付いた相手の能力を得る、完全に融合している、助けられるものか!」
能力で融合をしただと? もしそれが本当ならなんとかなるかもしれないな。
「もしかしたらイデアを助けられるかもしれない」
「本当か!」
リヴァーレが驚く、当たり前だ、フォルティスとリヴァーレにとってイデアが大切な存在だと行動を見ていれば分かる。
「助ける方法は、エリスだ」
「私ですか?」
「ああ、奴は能力で融合したって言ってたよな? エリスの『無効』を奴にぶち込むんだ、能力が無効になれば別れるんじゃないのかって思うんだ」
でもこれは仮説だ、本当に利くかは分からない。だが可能性があるのならそれに賭けるしかないんだ。
「なるほど、なら、どうにかして近付かないと」
リヴァーレがそう言うと、親父とプセバデスが話しかけて来た。
「なら、わしらで何とか道を作ろう」
「我らが何とかしよう、エウカリス、やってくれるな?」
「はい、イデアさんを助けます、そしてファントムを倒します、まもる、私を守ってくれますか?」
「当たり前だ、傷一つ、エリスには付けさせないよ」
決意し合う俺達、その後ろでリールが胸を貫かれたサージュを治療していた。どうやらまだ希望があるらしい。
「サージュを頼む」
「はい、源一郎さん。私に任せて下さいっ」
「行くぞ護、この戦いを終わらせる」
「分かってるよ親父、行くぜ、エリスをファントムまで通す!」
最初に駆け出したのは親父とプセバデスだった。刀と槍をファントムに向け、走る。
ファントムの気をフォルティスが引きつけてくれたおかげですぐに接近で来た。だが、二人にファントムが気付き、口から炎を放つ。
当たるかと思った時、信じられない事が起きた。炎が直角に曲がり、下へと炎が落ちて行く。
「炎は僕が防ぐ!」
エレオスが炎に重力をかけ、炎を下へと送ったのだ。これはチャンスだ。プセバデスと親父がファントムの顔目掛けて飛び、攻撃を仕掛ける。
「我が槍、噛み締めるがいい!」
「飛び穿て、弾剣!」
二つの攻撃がファントムの両目を抉る、痛みの咆哮を竜が放つ。
「がああああああ! 貴様らぁあああ!」
「今だ! 行くぞエリス!」
「はい!」
走る度に身体に痛みが駆け抜ける。超感覚の使い過ぎだろう、だがエリスに傷を付けないと約束した、痛みをこらえ、ファントムまで近付いて行く。
その時、ファントムは見えない目をカバーするかの様に無差別攻撃を始める。身体を回転させ尻尾を降る。爪をむちゃくちゃに降り、まさに無差別。
「離れるなよエリス」
「はい、絶対まもるから離れません!」
気が付くと目の前に爪と尻尾が両方迫り来る。避けられない、エリスが結界をはったとしても、凄まじい力だ、攻撃を防げても吹き飛んでしまうだろう。それならここは……。
「エリス! 俺に掴まれ!」
身体にピッタリと抱き付いて来る、その瞬間に超感覚を発動した。周りの世界がゆっくりと動く、エリスはしっかりと掴まっている、行くぞ、身体が痛いがエリスを奴まで運ぶんだ。
攻撃を難なく躱す、障害が無くなり、後は走るだけ。
奴の目の前に到着、超感覚を解き世界は正常に動き出す。ファントムの腹の真下、エリスを届けられた。
「エリス!」
「はい! 無効よ、ファントムの全ての能力を無効にして!」
彼女の手がファントムに触れた。すると、奴が光だし、雄叫びをあげる。光の弾が奴からあふれ出る。恐らくはあれが奪って来た能力何だろう。そしてファントムの身体から人間の形をしたものが出て来る。こいつがイデアだ。
イデアを抱き締め、エリスを俺の身体を掴ませ、再度超感覚を発動、安全な場所まで移動した。
「がぁ! くぅ……」
超感覚を解いた途端に全身に痛みが苛む、やはり負担が大きかったらしい、呼吸が上手く出来ない。そのまま地面へと倒れた。
「まもる! 大丈夫ですか! まもる!」
「はぁ、はぁ、ぐぅ、がぁ、ぐっ……」
苦しい、身体が悲鳴をあげる。これは本当にヤバイ、そう思った時だ、エリスが俺を抱き締める。やわらかな感触、良い香りがする。
そこでようやく気が付く、痛みが引いて来る。これは、エリスが治癒を使ってくれている様だ。身体が動く、呼吸が出来る。
「痛くねぇ、ありがとうエリス」
「はぁ、はぁ、……よ、良かったです、まもる、い、痛いところはありませんか?」
汗を異常にかき、今にも倒れそうな声で俺に語りかけていた。
能力を使うと体力が必要になる。エリスは今日頑張っていたからな、これは使い過ぎだ。もう彼女は戦えない。そんな状況なのに俺を助けてくれたのか? エリス。
「エリス、本当にありがとう」
「は、はい、まもる……後は任せて良いですか? 私は……もう、限界です」
「ああ、後は任せろ、エリスの分まで戦って来る」
言い終えると、エリスはニコリと笑った。
さてやるか、俺のやるべき事を。
「ガアアアア! くそが! 貴様ら、許さないぞ!」
巨大だった竜は小型化し、人間サイズになっていた。これがこいつの正体か。イデアは助け出されて、リヴァーレとフォルティスが介抱していた。あれだけ若々しかった身体は老けていき、元の老人へと戻って行く。
ファントムの影響で若返っていたのか、取りあえず元に戻って何よりだ。
「殺す、この場にいる全員、殺す!」
「勝ってにほざいていろ! テメェに遠慮する事はもう無いんだ、覚悟しろよ? テメェを送り返す何て優しい事はしないからな!」
「その通りだ、エリスをよくも可愛がってくれたな、僕が消滅させてやる!」
俺とエレオスは奴に武器を掲げる、それは宣戦の印だ、貴様を必ず殺す、そう意味を込めて掲げる。
「殺す、殺す!」
ファントムが翼を広げ、突撃して来る。長い爪をむき出しにし、襲い掛かる。その爪を俺は刀で受け止め、奴を睨んだ。
「ぐげげげ、死ねぇ! 人間!」
「貴様なんかの為に……貴様の様な奴に……皆が傷付いたって言うのかよ!」
爪を弾き返す、ひるんだ奴に蹴りを食らわせ、透かさず暫撃を連続で切り付ける。
苦痛の叫び声をファントムがあげる。
「ぎゃああああ!」
「まだだ!」
エレオスがアタンシオンで奴を真横に振り払い、奴が吹き飛びバルコニーに激突、煙が空へ。
「くそがあああ!」
ファントムの口が光始める。だが、炎の色ではない、どす黒く、何やらヤバめの事態らしいな。
「がははは! これはオレの最強の一撃だ! 触れれば消滅する! 誰にも止められん! がははは!」
「くっ、あの異常な力、どうする……」
「エレオス、俺に任せろ、あいつに食らわせてやるよ、俺のオリジナルの技を……」
親父とリールはサージュのところに。リヴァーレとフォルティスとカーラはイデアのところ。エリスにはプセバデスがついていた。それぞれが怪我をし、傷付いて動けるのは俺とエレオスとアリアだ。
奴があの攻撃を放ったら、ただでは済まなくなる。一瞬で終わらせなくては。時間を掛けたら危ない。
「マモ、大丈夫なの!」
「ああ、出来る! 奴を葬る!」
「なら行け! 神代護! 僕らの意志、君に預ける」
やってやる、こいつを倒して、明日を手に入れるんだ。
「ま、まもる!」
エリスがめい一杯の力を込めて俺に叫んで来る。力を使い過ぎて大変なはずなのに。
「勝って下さい! わ、私、まもるが好きです! 大好きです! まもるとまた一緒にこの時を、この空の下で生きていきたいです!」
「ああ、俺も、エリスが大好きだ!」
行くぞ、さあ前を向け神代護! 大切な人が、人達が俺の背中を見てるんだ、恥を見せるな!
「覇皇極心流剣術改、無の剣、空牙閃光!」
この技は俺にしか出来ない。何故なら超感覚と併用して行う技だ。超感覚を使い、全速力で一気に敵まで近寄り、敵に刀の突きを打ち、更にあいた拳を刀に叩き込み、更に力を乗せる突き。
空牙、空間を駆け抜る牙の一撃。
閃光、その名の通り閃光となって敵撃つ。
空牙閃光、俺が考えた技だ。この世界に一つしかない技。この技はエリスがいたから出来た技だ。エリスが俺の第六感を解放してくれたおかげだ。
だから、この技は俺とエリスが生んだ、最強の一撃だ!
「死ね! 人間共ぉーー!」
「させるかぁ!」
空牙閃光を発動した。
全ての力をこの一撃に。
全ての感情をこの一撃に。
全ての気持ちのこの一撃に。
「うをおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
奴の目の前に着く。瞬殺に刀を穿つ、ズブリと胸に食い込み、それ目掛け全力で刀を殴る。更なる衝撃が重なる。
閃光の如く、奴を、ファントムを貫く!
「があああああああああああああああああああああああああ!」
「お、俺の勝ちだぁ!」
「馬鹿な! オレが人間に、人間なんかに! 信じない、オレの野望が!」
「くだらねぇ、テメェの野望何かより、あいつらと……エリスと笑い合う方が何倍も、何十倍も、貴重何だよ! 消えろ! この世界から、この幻想の大陸から消えろ!」
「馬鹿な……馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な……オレはゲートを通じて多元世界を……十字の……縦と横を……この手に……」
倒れ崩れていくファントム、空の彼方に奴の最後の攻撃、光線が放たれた。それと同時に光が見えて来る。日蝕が終わり、光が世界に降り注ぐ。何て綺麗なんだ、これが世界の声なんだ。
「まもる!」
ふらふらとエリスが駆け寄って来る、エリスは頬を濡らしながら俺の胸に飛び込んで来た。満開の笑顔を片手に。
「良かった、良かったです、私、まもるが無事で本当に良かったです! 本当に……ひぐっ、うぇ……うわああああん!」
「エ、エリス!? な、泣くなよ、俺は無事だったし、皆も無事何だぜ? あーーあ、エリスの泣いてる顔ってクシャクシャで、変顔で面白いな!」
「ひ、酷いです! 意地悪なまもるは嫌いです! ……でも、今回は許してあげます、今回だけですよ? 良いですね?」
これだ、この笑顔を見るために俺は頑張って来たんだ。
「ふん、エリスを泣かせるとは、命知らずだな君は」
「お兄様、やっと……終わりました」
「ああ、さあ行こうか、父さんや、みんなが待っている。ま、君はどうでもいいが」
「何だと! シスコン!」
いつもの日常が帰って来た。
「あはは、マモ可愛い」
「何だとアリア!」
「まもるの怒った顔、変です!」
「な! エリスぅ」
「さっきのお返しです!」
行こう、エリスと楽しい日々へ。




