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Chapter_23 光

 セヴンスセンス、七つの能力を持った神に選ばれし存在。

 世界と会話し、世界と繋がる。全ての知識を貯蔵する場所へと心が出向く。そこに到達出来るのは幻想の大陸では私だけ、家族も知らない巫女のみに許されたもの。説明しようが無いもの、手を伸ばせばそこに触れられるだろう、全能になることすら可能かもしれない。

 しかし無意味だ。

 私には必要はない。

 セヴンスセンスの副産物にしか過ぎない七つの力は私の使命の為のもの。他の誰もが七つの能力をセヴンスセンスと呼ぶがそれは違う。

 でもそう思わせていていい、本来のセヴンスセンスは世界と会話することそのものなのだ。

 きっと巫女である私以外は理解出来ない。

 それでも今は皆が認識しているセヴスンセンスが必要だ。

 『治癒』『覚醒』『心眼』『予知』『無効』、私はまだ5つしか知らない。唐突に分かる、だからまだ目覚めて無い能力は眠っている。

 自分では満足に使いこなせなかった、必要無いものだと心のどこかで思っていた。けれど今は、今だけはそれにすがるしかない。

 お願い、目覚めて。

 落ちて来る、私の頭上に白き刃が落ちて来る。

 いつもそうだ、助けられてばかりで何も出来ない。

 私も戦いたい、大切な人達が目の前で傷ついて行くのを指をくわえて見ているだけ。

 そんなの、もう嫌だ。

「やめろぉーー!」

「苦しめ、巫女!」

 イデア・グランデ、その見下ろす顔を視界に納めた、これが人を殺す時の顔なんだ。憎悪で歪んだ顔、何て恐ろしい。

 その凶悪で醜悪な敵に世界が哀れんだのだろうか、唐突に頭の中に何かを入れられた様に知らない事を知った。

 これがセヴンスセンスの6番目の能力なのだと。

 ここまでの思考の途中、白い剣は私に落ちた。





 過去を思い出す。


 その場所は真っ白な部屋、危険だからと外には出られずに退屈な毎日を過ごしていた。お兄様やシンとライが話し相手、外の様子を聞いたり、部屋にあるおもちゃで遊んだりして小さな時を過ごした。

 いつも楽しみにしている事があった、ライがしてくれるお話だ。大空の様に澄んだ短い青髪、少し小柄でいたずら好き。私を巫女じゃなくて、エリスとして接してくれた数少ない人。

『知ってるかエリス、この幻想の大陸の向こう側には外の世界があるんだ』

『外の世界ですか?』

『この世界と似ているが少し違うんだ。オレは一回だけ行ったんだぞ? 凄いだろう?』

 彼は世界を歩き、冒険をするのが大好きだ。私の番人になる前は旅をしていた。その話を聞くのが毎日の楽しみだった。

 あれ? どうしてこんな記憶を見ているの? 私に死が迫っているから?

『いいか、どんな事があっても諦めるなよ? 諦めたらその時に全てが終わる。これから様々な事がエリスに起きるかもしれない、屈するな、前を向け、愛した奴の隣りを歩け、そして……世界の再生を、いいなエリス』

 うん、そうだったね、諦めたらその時に全てが終わるんだよね?

 今私に迫り来る兇器、避けるのは無理、でも諦めない。だって、まもるやお兄様、皆が諦めてないから。

 私が諦めてどうする。

 ありがとうライ、あなたの言葉が私に勇気を芽生えさせてくれた。敵に向かう心、諦めない心、そして、まもるやお兄様と大切な人達と共に歩いて行く、それが世界を救うんだ。

 目覚めて私の6番目のセヴンスセンス、みんなと戦う力を私に。





 それは誰もが目を疑った事だろう。何故なら、私、エウカリス・アピュエースの頭上で白き剣がピタリと止まっているからだ。

 イデアが止めた訳では無い、私が止めた。手を使わずに。

 私の周りを光が漂っている、光の粉、そんな言葉に出来る現象。

「な……に? 何だこれは?」

「私はもうただ守られるだけのか弱い存在じゃありません。私の力、『粒子』よ、集まりて槍に形を成せ!」

 一粒一粒、光の粒子が私の身体を駆ける。これは極小の粒子、それを集めて槍などの形にすれば攻撃だって出来る。

「行って!」

 粒子が集まり、槍の形を成してイデアに迫る、その速さは光の速さと同じ速度。

「がぁ! くっ、攻撃が見えないだと?」

「す、すげえ、エリスがイデアを圧倒している」

 関心するまもる、でも油断出来ない。

「馬鹿な、こんな馬鹿な事、認められるか!」

 瞬時、イデアが姿を消す。時空離脱を行い時の流れから離脱したんだ。

 攻撃が迫って来る。だが、イデアが考えていたものとは違う予想になった。私の周りを粒子が広がり、球状の結界を貼っていた。これならどんな攻撃も効かない。

「何だと、馬鹿な、儂は王になる存在、貴様の様な奴に!」

「イデア・グランデ、私はあなたを許さないです、人々を苦しめた報いを受けて下さい! 皆さん、私が彼の時空離脱を防ぎます、その隙に倒して下さい!」

「……本当にエリスなのか? 凛々しく見える」

 まもるが驚いている、そうだよね今までの私とちょっと違うかもしれない。でも、この戦いを終わらせる為に私も戦う。

「儂の時空離脱を防ぐだと? そんな事、無駄に決まっている!」

「無駄かどうか、あなた自身で確かめて下さい」

「なら、見せてみろ!」

 また姿を消した。その場にいた全員が息を飲む。セヴンスセンスのある能力を使えば良い。

 見えている、イデアが私の背後へ移動している、まもる達には見えてないだろうけど、私には見える。

「そこです!」

 光の粒子が小さな球体となり、弾丸となってイデアへと放たれた。そのスピードは光速、人間には捕らえられない速さ。

 弾丸はイデアの左肩を貫通し彼を止めた。

「ぐっ、ば、馬鹿な!」

「私の能力の一つ『無効』、これは第六感からなる力を無効化します、この力を発動するとあなたの時空離脱は私には効きません! だから、あなたは私達に倒されるんです!」

 戦う意思を携えた私をお兄様が見詰めていた。

「さすがは僕の妹だ……護、セヴンスセンスは能力者での頂点、彼女こそ、この世界で最強なんだよ」

「エリスが頂点……」

「これはチャンスだ、護、行けるか?」

「何とかな親父、エリスが頑張っているのに俺が頑張らないでどうするんだよ!」

「あはは、マモはやっぱり男の子だね、行こう、この大陸のみんなの為に!」

 突進する影が三つ、まもるとまもるのお父様、それにお兄様だ。大剣アタンシオンをイデアに打ち込む、だが躱される。透かさずまもるのお父様がもの凄い突きでイデアに迫る。

「ふん、これくらい」

 また消え、時空離脱を行った。でも私の目には見えている。イデア目掛け、光の槍を打ち込む。

「がっ!」

 時空離脱が解け、まもるの横にイデアが現れる、それを彼が見逃すはずがなかった。

「水龍!」

 流れる様に、イデアの足を切った。深く食い込んだらしく流血が溢れでた。そして、アリアの銃撃。

「一気にいくわよ!」

 だが、弾丸は一発身体をかすめ、残りは白い剣に弾かれる。

 この時イデアは気が付いてなかった、真後ろに現れた私のお父様プセバデスに。

「我が槍、噛み締めるがいい!」

 嵐の様な突きの連続攻撃、そして前方からまもるのお父様が進行。猛撃はまだ終わらない。

「飛び穿て、弾剣!」

 イデアはプセバデスの攻撃を避けるのに必死、そして衝撃、赤い血しぶきが舞う。

 これはイデアのものでは無かった。

「がは!」

「な!」

 驚愕するまもるのお父様、突かれた剣に誰かが貫かれていた。そこは胸、血が溢れ出ていた。震えながらその人は胸を貫かれながら刀を握り締めていた。

「何て事だ……サ、サージュ」

「がは! ぐっ……」

 貫かれたのは守護四神将の一人、サージュ・ボンだ。ガクガクと震えながら、顔が青ざめていく。

「そ、総帥を……イデ、ア、様を……ボクは守るんだ……守るんだ……ボクはあなたのおかげで……生きて、これ……」

 そう言った後、目の光が失われた。自分の命を引き換えに彼を助けたんだ。

「わ、わしは何と言う事を……」

 またイデアが消える、今度は攻撃を仕掛けず、距離を取った。

「ふふふ、あはは、あっははははは! 儂は生き延びた、サージュ、お前は本当に良い駒だった、最後の最後で役立つとはな、あははははは!」

 その言葉にまもるのお父様が怒りをぶつける。

「貴様、サージュは貴様を慕っていたんだ! 純粋に貴様の為に働いた! 貴様は、貴様は、何とも思わんのかぁーー!」

「思わない、あれは単なる駒だ」

「貴様! わしは認めない、貴様の様な奴を!」

 悲惨な光景を眺めていたフォルティスは意思を奮い立たせていた。

「くっ、人の命を何だと! リヴァーレ、俺様達でイデアを止めるぞ!」

「ああ、フォルティス、私達で……偉大だった師匠の狂をこれ以上見たくは無い」

 フォルティスとリヴァーレが二人並んでイデアを睨む、そんな二人をエルマが悲しそうに語りかける。

「お兄ちゃん、お姉ちゃん、今笑っている人がおじいちゃんなの? どうして……こんな事になったの?」

「エルマ……それは私達にも分からない、でも、これ以上師匠を悪者には出来ない。止める、例え……永遠に別れる事になろうと。えっと、リールだったかな? 妹を頼む」

「はい、分かりましたっ、二人共、気をつけて」

 リールにエルマを預け、二人はイデアへと走る。

 あの二人とイデアが親しいらしい、本当は辛いだろうに。それでも向かう、この世界を守る為に。

 リヴァーレが先に攻撃の為ゲートを開き、その中へと拳を放つ。ゲートの出口はイデアの背中に出現、中から現れる拳がヒット、能力の使い過ぎだろうか、イデアの動きが鈍い。

「行け、フォルティス!」

「ああ!」

 俊敏な動きで直ぐにイデアの懐に飛び込み、蹴りを放った。風を切る音と共に腹に食い込む。

「ぐっ、馬鹿な」

「あんたはやり過ぎたんだ、イデア・グランデ、俺様が止める! あんたの馬鹿げた幻想を!」

「ふざけるな!」

 時空離脱、私は見逃さない。光の槍を無数にぶつける。身体中に傷が増えて行く、時空から現れ地面に転がり込んだ。

「ぐっ……数が多過ぎるか……くくく、はははは」

 突如イデアが笑い始めた。一体何がそんなにおかしい? 彼は私を見つめて笑っている。何なの?

「巫女、お前が本気で止めようと言うのなら、何故儂の急所を狙わない? ふはははは、巫女よ、お前は人を殺した事が無いな?」

「……そうです、私は人殺しは嫌です」

「なら、儂をどうする? 儂を殺さなくればこの戦いは終わらないぞ?」

 私は人殺し何て嫌だ。例えそれが罪人であったとしても。

 決意をした筈だったのに、改めて殺さないのかと訊かれたら、何も言えなかった。イデアを倒さなくてはこの大陸に未来は来ない。私は……。

「悩む事無いぜエリス、俺がこいつを倒してやる」

「まもる……」

「ふ、少年、お前が儂を殺すのか?」

「殺さない。お前には罪を償ってもらわなければならない。リヴァーレやエルマ、フォルティス師匠の事、エリスの事、七の一族を襲った事、全てを生きて償わせる! 殺す事だけが全てじゃない!」

 まもる、あなたは大きくなったみたい、身体じゃない、心が大きくなった。

 私もあなたを見習いたい、自分で決めた意志を突き通す強い心を。

「戯言、ふん、もう良い……“芝居”は終わろう」

「あ? 芝居だと? テメェ、何を言っていやがるんだ?」

「疑問に思ったか少年? 儂が……嫌、オレが今まで“イデア・グランデ”を演じていると言う事だ」

 イデアを演じていた? どういう事なの?

「それを話す前に、帝国ヴァンクールが出来た訳から話そう。数百年前、この世界にあるものがやって来た。それは外の世界とは別の世界から来た……もう一つの別の世界」

「はぁ? テメェ、いきなり何を言っていやがる! 外の世界じゃない、もう一つの世界だと? どこだよそれ」

「ここにいる誰もが知っている筈、その世界とは……『ヘルヴェルト』こちらの世界で『地獄』と名の付く世界だ」

 地獄? 人間の魂の輪廻を繰り返す場所の事? そんな世界から来た者って何?

「地獄って悪い事をした人間が死んだら行くところだろ?」

「……そうか、少年、お前は外の人間だったな、外の人間達にはそう言い伝わっているみたいだな。こちらの世界は魂の輪廻を繰り返す場所と言われている。さて、その地獄からやって来たもの、それはこちらの世界と地獄を繋ぐ門、『ヘルズゲート』より来た、その者とは地獄の住人」

 イデアは笑いながら何かを説明していく、彼は何がしたいの? 地獄の住人? 一体、その話が何だと言うのだろうか。

「地獄の住人、その名の通りそこに暮す化け物の事だ。そいつは一人の人間に取り付いた、その人間が帝国ヴァンクールの最初の王、それからこの大陸を我がものにすべく支配しようとした。だが、それは叶わなかった」

「私の先代、七の巫女ですね?」

「そうだ、当時の七の巫女が化け物の正体に気付き、戦いを挑んだ。戦いの末、巫女はヘルズゲートを開き、化け物を戻した……その時の力で日蝕が起きる様になったがな」

 この日蝕は化け物を向こうに返す時になったって言うの? これが本当なら、どれだけ凄い力が働いたのか想像出来ない。

「さて、ようやく本題に入ろう。イデア・グランデ、帝国ヴァンクールの血を受け継ぐ人間、ある時、そいつと出会ったものがあった、それがオレだ、オレの名はファントム、ヘルズゲートより来た地獄の住人! このイデアの身体はな中々使い心地が良かったぞ!」

 そう叫んだと同時に身体が変化していく、背中からは羽根が生え、爪が生え、牙が生え、皮膚が赤く硬化していく。

 まさかイデア・グランデは、地獄の住人に身体を乗っとられていた?

「な、何だこりゃあ……ば、化け物になりやがった」

 驚きを隠せないまもる、それはここにいる全員がそうだ。この私だって驚いていた。

 イデア……じゃない、彼に取り付いたもの、ファントムと名乗っていた。ファントムはイデアの身体を変化させ、巨大な竜の様な化け物へと変化させる。

 巨大な鱗に覆われた身体、長い尻尾、鋭い爪、むき出しの牙、それはおぞましい形。

「がははは! 驚いたか人間共! 貴様らはここで死ぬんだ!」

「……そんな、まさか、イデアが……師匠が取り付かれていただと? 馬鹿な! 俺様は信じないぞ!」

「信じないだとフォルス、なら目の前の現実はどう見る?」

「黙れ! 貴様にフォルスと呼ばれてたまるか!」

 竜があざ笑う。その眼はぐるりと動き、私を見た。

「憎い、オレを地獄に送り返した七の巫女! ふん、イデアは優しい性格だったな、この世界をどうこうするとは考えて無かった、だが帝国の血を引いている、こいつの一族はオレにとって取り付きやすい人間だった。だからこいつに取り付き、またこの幻想の大陸を支配する! だがその前に七の巫女! 貴様を喰い殺す! 恨みだ! 死ね!」

 巨大な口が私目掛け迫り来る。食べられてしまう訳にはいかない。私の使命を果たすまで死ぬ訳にはいかない。

 光の粒子を身体の周りに球状に展開、光の結界、そして光の槍を作る。

「待ちやがれ!」

 一撃、まもるがファントムの顔に刀で攻撃。その攻撃でファントムがよろめく。

「何勝ってな事ばっかり喋っていやがるんだよ、勝って過ぎる理由だ、テメェにエリスを殺らせる訳にはいかない、そして、イデアの身体を返してもらうぜ!」

 私の感情が暑くなるのを感じる。彼が格好良く見える、いや、格好いいんだ。心が格好いい。

 だから私は彼を好きになったんだ。

「嘘だ!」

 突然の叫び声、その場所を見ると、バルコニーから出て来る彼女がいた。守護四神将の一人、カーラ・オディウム。ふらふらと今にも倒れそうにファントムに近付いて行く。そんな彼女を心配そうに叫ぶアリアの姿があった。

「カーラ! 駄目よ近付いちゃ! あなたが思っていたイデアじゃ無かったのよ! カーラ!」

 アリアの言葉に耳をかたむけない。ゆっくりと進み、ファントムの前に立つ。

「イデア様、嘘だよね? あたいが、あたいがこの身をささげるって誓った、あのイデア様何だよね? あたいの顔を綺麗だって言ってく……」

 衝撃、ファントムは長く固い尻尾を横から払う様に打ち出し、カーラを吹き飛ばした。宙に舞い、そして屋根の外まで吹き飛んだ。

「カーラ!」

 アリアが叫ぶ、だけどカーラは屋根の外に落ちずにすんだ。何故ならまもるが超感覚を使い、彼女を助けたからだ。

「おい、大丈夫か?」

「……嘘だ、あたいの知っているイデア様はこんな事しない……あたいが忠誠を誓ったのは……こんな化け物じゃない」

「ふん、邪魔な虫けらが、貴様はもう用無しだ。もういい、こんな世界くらいオレ自身で支配してやる、七の巫女、貴様を食らって能力を貰うぞ! それがオレの能力だ!」

 そんな事の為に人の心を弄び、傷付け、みんなを不幸にしたの? ここに暮らす皆はただ静かで平和に暮らしていきたいだけなのに。それを壊そうとするなんて。

 まもるはカーラのが泣く姿を見ていた。こんな悲しむ人間をこの大陸に増やす気なの?

 ファントムを睨み付けたまもる、怒りをその身に纏いながら激怒を口から放つ。

「うるさいんだよテメェ、ペラペラと長話しやがって、地獄だ? 恨みだ? そんなのどうだって良いんだよ! ただテメェがこの世界にいらないってのがはっきりしている! 何人だ? 何人泣かせて来た! 何人傷付けて来た! ふざけるな! 本当に頭に来たぜ、来いよ、倒してやるから! テメェに幻想の大陸にいてもらっちゃ迷惑なんだよ! ……覇皇極心流剣術、神代護、テメェを倒す男の名前だ! 覚えて逝きやがれ!」

「私もまもると同じ気持ちです、人の心を踏みつぶすあなたを許せません。この世界は私達の世界です、あなたは干渉するべきじゃないです!」

 それぞれの怒りがファントムに集中していく、過去、先代の七の巫女がファントムを止めた様に、私も止めなくては。

 光の粒子を身体の周りに放ち、戦う準備を始める。まもるも刀を握り締める。他のみんなもそれぞれの武器を、拳を握り締める。

「フォルティス、私に力を貸してくれるか? 師匠を助け出す力を」

「当たり前だリヴァーレ。俺様達……いいや、みんなでファントムを倒し、師匠を助ける」

「ああ、そうだな」

 決意し合うフォルティスとリヴァーレ、自分達の師匠を助ける為に。

「わしは許せん、サージュはまだ子供何だぞ? その子を……貴様は許してはいけない、いけないんだ!」

「あたしだって許せないわよ! 女を……女を何だと思ってるのよ! アリア・シャルマンの名において、あんたを撃ち抜いてやる!」

「私だって許せませんっ! カーラさんの気持ち、踏みにじるなんて……このハンマーで天罰を受けさせますっ!」

 まもるのお父様、アリア、リールがファントムへの怒りを吐き出す。

 そして、私のお兄様も怒りの感情を剥き出している。

「僕が見て来た物の中で、ファントム、君が一番醜い。身も心も全て。皆の怒り、それを感じて地獄へと送り返す! もちろん生きたままだと思わないでくれ! アタンシオンが君を裂く!」

「ふん! 貴様ら全員食い殺してやる! ふははは! 皆の能力を得ればオレは最強だ!」

 不愉快な笑い、この場に響いて行く。絶対に負けない。

 その時、まもるが私の側まで来てくれた。

「エリス、全部終わったら、俺と外の世界に行かないか? エリスに見せたいんだ、俺が生まれ育った町を、世界をさ」

「……はい、楽しみにしています、まもるの世界、私も見たい」

 気が付けば彼と手を握りあっていた。温かくて大きな手、怖い気持ちが薄れて行くみたいだ。

 彼となら何でもできそうな気がする、世界を救う事だって。

「行こうエリス! 最後の戦いだ!」

「はい!」

 最終決戦が今、始まろうとしていた。



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