Chapter_10 終わる日々
「やめて下さいーー!」
太陽が寝床から這い出て小鳥のさえずりが響く迷いの森は必死の悲鳴が平穏を壊した、それはフォルティスの部屋から聞こえて来た。
やれやれ、またか。
何が起こっているのかは日常的なもう行事と言っても過言ではない事柄が教えてくれた、フォルティスは新作のコスプレをさせる為に寝起きのエリスを自分の部屋に連れ込んだのだろう。
「またやってるよ。エリス大丈夫かな?」
部屋から彼女の声が漏れる。
「ひゃん! 駄目です! ソレを脱がさないで下さい! あうっ、くすぐったいです! あ、ああっ、ひゃん!」
いつものように顔を赤くしてこの叫びを聞いている俺がいた。それと同時に一体今日はどんな格好だ? なんて期待もしている。
ようやく騒ぎも治まり、フォルティスの部屋のドアが開いた。
「マモル見ろ、今回もいい奴だぞ!」
そう言って嫌がるエリスを部屋から無理矢理連れ出した。そこに現れたエリスの格好は、水着のような胸元が開いたボンテージに鞭を持った女王様だ。彼女の顔は噴火寸前だった。
「あう、み、みみみ見ないで下さいまもる!」
鼻血が出そう、古典的なリアクションだが、本当に出そうなくらいエリスの格好が刺激的だった。
「なんだマモル、俺様の作品を見られないのか?」
「いや、そんな訳じゃ……」
これは遠回しに見ろって言ってるのか? 俺だって本心は見たいに決まってるだろうが! これは男なら誰だって思う事だろう。
よ、よし、見てやるぞ、エリスの恥ずかしい姿を。ゆっくりと隅々までエリスを凝視した。
「ひゃん! まもるがハレンチな目をしています! み、見ないで下さい!」
エリスは余りの恥ずかしさに持っていた鞭を構えて縦に放った。鞭は俺の顔面に当たる。
「痛ってええええええええええええ!」
動揺しているエリスは自分の部屋に駆け込んだ。それを見ていたフォルティスはニヤニヤと笑っていやがった。
狙ってたなこの野郎め。
「変態だなマモル」
「あんたのせいだろうが!」
叫んだ途端にフォルティスの逆鱗に触れてしまった。敬語を使うのを忘れていた! フォルティスの蹴りが直撃し窓の外に突き飛ばされそのまま落下し、地面へと埋もれた。
「痛てて……死ぬかと思った」
「ま、まもるがハレンチだからいけないです! 天罰です!」
ボンテージから白いワンピースに着替え、救急箱を片手に怪我の治療をしてくれていた。
エリスの能力で治せば早いと思うが、力を使うと体力をかなり使うようでめったに使わない。
ま、能力ばかりに頼るのもいけないからな。
「はい、終わりましたよ、まもる」
「ありがとうエリス。怪我の治療も上手くなって来たな」
「まもるがいつも怪我をするからです……」
曇った顔でそう呟く、心配で悲しそうな顔だ。
俺の事を心配してくれてるのか?
「おい、いつまでイチャイチャしてる、修行を始めるぞ」
と機嫌悪そうにフォルティスが自室から出て来た、今日はとことん苛められるな。
「すぐに行きます。治療ありがとう、行って来るな」
さて、今日も修行を頑張るか。天気も良いし、修行日和だろう。玄関のドアを開け外へと行こうとした時だった、エリスが俺の服の端を掴んで呼び止めた。
「どうしたんだエリス?」
「あの……今日はなんだか嫌な予感がして気持ち悪いです。気をつけ下さい」
「え? 嫌な予感ってどういう事だ?」
「私にも分かりません。でも、嫌な事が起きるかもしれないんです」
真剣な眼差しが俺を不安に染めた。あの日エリスに言われた言葉を思い出した。
一緒にいられなくなる。
この言葉がいつまでも俺の中で再生されていた。今日、この言葉の通りになってしまうのか?
俺がそんな運命を壊してやる。
「エリス、お前だけは何があっても守るから……だから心配するな!」
「ありがとう……まもる」
一体何が起きようとしているんだ? 不安を抱えながら俺は外へ向かう。
「何が起きるってんだ……」
「何をぼーっとしている、早く来い!」
声は家の下から聞こえた、そこを覗くとフォルティスがイライラしながら見上げている。切れてるよ、すいませんと謝りながら梯子を降りた。
「貴様……俺様を待たせ過ぎて殺す気か!」
「す、すいません師匠。さ、頑張りましょう!」
「まったく、調子の良い奴め……もういい、早く始めるぞ」
ふぅ、マジで殺されそうだった。フォルティスが本当に怒りを顕にしたらその瞬間に灰になるだろう……気をつけないと。
さて、修行の前にエリスの不安をフォルティスにも伝えた方がいいだろうな。
「あの師匠、お話が……師匠?」
なんだ? フォルティスが険しい顔をして森の奥を睨み付けている。
「……馬鹿な、何故だ……一体何故……」
「師匠? 一体どうしたんですか?」
「マモル、荷物をまとめてエリスとここから逃げろ!」
逃げろ? 逃げろって、一体どうしてだ。ま、まさか、ヴァンクールの奴等にこの場所が見つかったのか?
「まさかここがバレたんですか!」
「……おそらくな。何故バレたのかは知らん。だが、奥から数人の人間がこっちに近付いて来る」
人の気配を察知するのは俺よりも敏感だ、遥か遠くの気配まで分かるらしい。
だが、この迷いの森を難なく来るなんて。
「ぼけっといるんじゃない、何故ここまで来たのかを詮索するのは後だ! 早くエリスと逃げろ!」
「わ、分かりました!」
直ぐに梯子を駈け登り、家に入った。そこに彼女の姿が見当たらない、自分の部屋か? 慌ててエリスの部屋のドアを開け放った。
「エリス!」
「……え?」
開けた瞬間に頭が空になった。エリスが裸で着替えようとしていた。なんで脱いでいるんだ? 体のラインがくっきりと……じゃない!
「あっ、い、い、嫌あああああああ! まもるのハレンチーー!」
鉄拳が飛ぶ。それを顔面に食い壁に飛ばされた。
「痛っ! ご、ごごご、ごめん! って言うか何で裸?」
「あ、あのあの、お水を溢してビショビショになったから着替えてたんです。ひゃん! まもるの目がハレンチです!」
「い! 違う! 誤解……って、そんな事より、エリス、逃げるぞ!」
「え?」
「ここに侵入者が来たんだ、おそらくヴァンクールだと思う」
「そんな……これが嫌な予感の正体なんですね……」
「とにかく荷物をまとめてくれ」
「は、はい!」
俺もまとめないとな。直ぐに自分の部屋に行き、荷物をまとめた。
「行くぞエリス!」
「はい!」
二人で外に出て下へ降りた。フォルティスが俺達を見付けると、駆け寄りエリスを抱き締めた。
「エリス……この二か月、お前達と過ごせて悪くはなかったぞ……必ず逃げ切るんだぞ?」
「フォルティスさん……私、私……」
優しい抱擁の時間が過ぎて行った。これまでの事を思い出しているみたいだ。名残惜しそうに二人は離れた。フォルティスは俺の頭を撫でた。
「マモル、まだ修行の途中だが……前より格段に強くなった。必ず逃げ切れ!」
「……師匠」
俺達は森の奥へと走る、複雑な感情に胸が締め付けられた。フォルティスはそんな二つの背中を見詰めていた。
◆
逃げ切って欲しい。これが俺様の願いになっていた。
この二か月、騒がしくてあっと言う間に時間だけが走り去った。一言、本当に一言だけの感想が頭に浮かび上がる。
楽しかった。
「ちっ、来たみたいだな」
前方の奥から足音がざわめいている、俺様は右腕に装着した爪の武器『クロウ』を前方に構えた。いつでも来い、相手をしてやる。
その瞬間は直ぐに来た。わらわらと仮面を付けた兵士が数人束になって襲い掛かる。奴らも同じ武器か、しかし相手が悪い。クロウを空間を裂くように切り付けてた。時間は掛からない、数秒で奴等を舞うように沈黙させた。
「ふぅ……しかし、なぜここがバレた?」
「その疑問は私が教えよう、フォルティス」
その声は仮面兵士が出て来た所から放たれた、その場所を睨み付ける。
眼前に男が居た。白の短髪、凛々しい顔立ちと人を見透かすかの如き綺麗な瞳、水晶のような透明感。それを見た瞬間俺様の中で衝撃を生んだ。
どうしてだ? 何で“こいつは”そこに居るんだ!
「り、リヴァーレ! 貴様が……どうして?」
「久し振りだな、何年ぶりだろうか……しかし“この場所”は変わらない」
こいつはリヴァーレ・グローリア。俺様と共に同じ師の元で修行をし、互いを高め合った存在。
「リヴァーレ、貴様はヴァンクールなのか? でも何故なんだ! 何故貴様がこんな事を……」
リヴァーレはゆっくりと歩む。一歩、また一歩、近付く度に心臓が一気に血液を運ぶ。変わらない顔立ちと眼差し、昔のままのあいつだ。
「私はヴァンクール守護四神将の一人だ。久し振りの再会だな。さぁ見せてくれ、私が愛した君の顔を……」
リヴァーレが俺様の頬に手で触れる。何故か動けない、こいつは一緒に高め合った存在、そして俺様が愛したたった一人の男。
「美しい……君は変わらない美しさを奏でている」
「や、やめろ! 質問に答えろ!」
「理由を聞き出す方法は昔から知っているだろ?」
「……ああ、貴様を倒して訊き出してやる!」
互いは後ろへと跳ぶ。まったくの同時に着地、そして、地面を蹴るのもまた同時。
爪を真横にふり抜く、リヴァーレは体勢を低くして回避、即座にクロウを装備した腕を掴まれ投げ飛ばされた。空中に浮いてしまった体、地面が上に見えるが関係なしに蹴りを放った。
蹴りは奴は手で掴み、防ぐ。
「ちぃ!」
「やはり、君は昔より強くなっているな!」
遠心力を味方に奴は蹴りを滑らせ俺様の腹に食らわせた。激痛が走る、痛みが支配する、だが蹴った足にクロウで切り付けてやった。
「く、やるな!」
「タダでは食らってやれない!」
こちらの攻撃は浅い、切り付けた瞬間に足を引きダメージを減らしたのだ。
さすがだリヴァーレ。
「……リヴァーレ、お前の妹は元気にしているのか?」
「ああ、……お前は昔から自分の妹の様に可愛がってくれていたな。ふっ、子供好きも変わらないか、だから巫女を守るのか?」
「あいつらは可愛い奴だ。だからいくら貴様だろうとあいつらを傷つける事は許さない!」
馬鹿だけど、真っ直ぐで正義感の強いマモル。
間抜けだけど、可愛くて優しさを持っているエリス。
あの二人はもう俺様の大切な存在になっていた。だから、あいつらだけは守ってやる。俺様の命を賭けてだ。
「リヴァーレ、何故貴様がこんな事をしているのかは知らん。だが、あいつらの為に貴様を倒す!」
「フォルティス、それはもう遅い……」
「何?」
「別の隊が今頃巫女に接近している頃だろう」
「くぅ……リヴァーレ、貴様は変わってしまった! 優しい貴様は何処にいった!」
誰よりも優しくて、純粋で、濁りのない目を持っていた貴様は何処に行った、何故変わってしまったんだ!
「人間は常に変わるものだよ、フォルティス。私も……変わらなければならないんだ」
一瞬、気が動転していた俺様は油断をしていた。リヴァーレはその隙間を見逃さなかった。
瞬時、俺様の目の前に現れた腹に衝撃を与えた。
「がっ、ああっ……」
気が遠くなり始める、このままじゃ気絶してしまう。
「フォルティス、悪いな……おい!」
リヴァーレは森の奥へと呼び掛けると、数人の兵士達がわらわらと現れた。
「この女を城に運べ、傷を付けるなよ」
「はい、リヴァーレ様」
マモル、エリス、逃げろ。
微かな願いを託して意識が溺れた。
◆
走る。緑が視界を生め尽くす世界を二人だけで走っている。風を切る感触と、エリスの手の感触だけが俺に伝わる。
手を繋ぎ、エリスを引っ張りながら走っていた。
「少しきついだろうが我慢してくれエリス」
「はぁ、はぁ、大丈夫です。これでも前よりは体力があるんです」
息を切らしながらエリスは手を強く握り締める、不安と恐怖の感情を手に表しているかのように。
しばらく走り、エリスに疲れたが見え始めた、少しだけ休むか。
「少しだけ休もう」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、……ご、ごめんなさい、私は足枷ですね」
「そんな事ない! エリスは足枷何かじゃねぇよ!」
叫ぶのと同時に、草むらを走る足音を耳がキャッチした。人数は三人程。くそ、もう追いついてきやがったか。
「ぎゃはははは、見付けたぁ!」
唐突に前方の草むらから男が飛び出す、続いて仮面兵士が二名出現。男は灰色の長い髪、体格はやや細目の奴だった。
「見付けたぞぉおーー、巫女だ! これを連れて帰ればリヴァーレ様が喜ぶ!」
エリスを俺の後方へと移動させ、鞘から刀を抜き取り、奴に向けた。こいつらにエリスを連れて行かせる訳にはいかない!
「小僧、おとなしく巫女を渡せ! そうすればこのセイ様が見逃してやるぞ」
「誰が渡すかよ、ガリガリ野郎!」
「だ、誰がガリガリだ! 行け! お前ら!」
仮面兵士が襲い掛かって来た。右と左から同時に攻めて来る。
どっちが速い? よく観察すると右の奴が足が速い。足に力を込め、疾走した。右の奴に刀の峰で顔面を砕く、素顔が現れながら気絶し、透かさず左の奴に狙いを定めた。
真横に刀をふり抜き横腹に一撃、力無くとその場に倒れた。
「へえ、中々強いな小僧……だが、これならどうだ?」
ガリガリは息を激しく吸い込み、口の中に溜め、勢いよく吐き出す。吐き出た息は赤く、熱を持った炎へと変わった。咄嗟にエリスを抱き締め、その場から飛び、避けた。
「火を吹きやがった、テメェは覚醒者か!」
「ぎゃはははは、その通りだ! 俺は炎を口から出せる。小僧、お前を黒焦げにしてやるぜ!」
「ち、厄介な力だ! エリス、木の影に隠れてくれ!」
「は、はい!」
エリスが隠れたのを確認してから応戦する、ニヤニヤと嫌らしい笑いを浮かべる奴がキモイ。集中だ、奴の動きを観察するんだ。
「くぅらぁえぇーーーー!」
先程と同様に息を吸い込み、炎を吐いた。直線を描きながら俺に食らい付く。それを左に回避、当たりはしなかったが奴は連続で炎を放つ。俺の力『予測』を使い、何とか躱して行く。
「……そうか、分かったぞ奴の弱点」
激しい攻撃の中で奴の動きをじっくりと観察していた。前の俺ならただ突っ込むだけだったんだろうな。
奴は炎を吐いたら次に撃つまで数秒の空白時間がある、そこを狙えば勝機がある。
「ぎゃはははは! 逃げるだけかぁ? 小僧、かかってこいよ!」
「へ、口ばかりベラベラ動かしやがって、ただ当てられないだけなんだろ? ヘタクソ!」
「な、何だと! き、貴様! お、おお俺の最大技、受けろ!」
怒り狂い、溜める息がでかい。そして巨大な炎が放たれた。まるで蛇の様にジグザグ動く炎が走った。
避けられるか? いや、避けないといけない。よく炎の動きを見ろ、予測。右下から抉る様に俺を襲う、そう見えた!
その通りに炎が迫る、後退せず、前に出た。炎は俺の背中を通過していく。無防備な奴の姿が目の前に映った。今だ!
強く大地を踏み付け走り出す。刀を下にだらりと構えながら奴を目指した。思った通り、炎を吐いて次を吐くまでに時間が掛かる様だ。
奴が息を吸い込み始める。だが、それはもう遅い。
「覇皇極心流剣術壱の剣、水龍!」
足を切り裂いた。出血はそんなに酷くはないが痛みで動けない筈だ。透かさず空中に飛翔。
「参の剣、流星!」
刀の刃を峰にし、落下を利用して脳天に強力な一撃を放った。
「がはぁ!」
白目になりながら泡を吹いて倒れた。
「ふぅ、これで終わりだ!」
まったく、ウザイ奴だったぜ。修行のおかげで今まで以上に身軽に動けた。二か月は無駄ではなかった。
木の裏からエリスが飛び出して来た。大丈夫ですかと、掛け声と共に俺に駆け寄って来た。
「大丈夫、大丈夫。あんな弱い奴、敵じゃなかったよ」
「よかったです……でも、森に火が……」
奴の攻撃が森に火を点けたのだ。燃え盛る木々、緑の景色を赤色が浸食して痛々しい。早くここを出ないと俺達もヤバイな。
「急ごうエリス、ここから離れるんだ!」
「はい、まも……」
エリスは名前を呼び掛けたが目を見開いて俺の後方を見つめていた。
この時、俺は気付いていなかった。
「馬鹿にしやがってぇーーーー!」
俺の後方には奴が叫び声を上げている。後ろを向いた瞬間に目の前が真っ赤に染まった世界があった。
炎がもう目の前まで迫っていた。
「危ないです、まもるーー!」
衝撃、気が付くとエリスが炎が当たらない場所に俺を突き飛ばしたと理解する。そのまま炎はエリスを襲う。
「な、エリ……」
名前を呼び掛けている途中なのに、無情にも炎はエリスを悲鳴と一緒に包んだ。
「エリスーーーーーー!」
エリスが、炎に……焼かれた? そんな、そんな馬鹿な!
「嘘だぁあああああああああああああ!」
炎を纏ったエリスは静かにその場に倒れた。炎はその間も燃え盛っている。
嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ! エリスが、エリスが……死んだ? そんな馬鹿な。
「ヤバイ、巫女を殺っちまった、ど、どうしよう……俺殺される……」
「貴様……貴様が……エリスを、貴様がぁ!」
憎しみを爆発させ、飛び掛かった。奴は動揺していたが、炎を吐いて応戦。そんな攻撃が当たるかよ! 一瞬で間合いを取り、刀で奴の顔面を叩く。また白目を向き、気絶しながら地に落ちた。
こいつが、エリスを……。
膨れ上がる憎しみ、奴の喉元に刀の刃先を向けた。殺してやる。天高く刀を掲げた、いつでもここから落とせる。
「許さねぇ、貴様だけは!」
刀を天空から落下させた。落ち行く先は奴の首。
「人殺しはダメです! まもる!」
その声に刀は奴の喉元に刺さる前に止まる、怒りを和らげて行く声は、エリスだ。すぐにその場所へ視線を送る。すると心配そうにこちらを伺うエリスがそこに居た。
傷や火傷などは無く、全くの無傷だったが、服が黒焦げになっていた。
「エ、エリス! 無事だったのか! ……でもどうして? 火ダルマになったのに」
「それは私の力のおかげです」
「力って……」
そうか、新たなセヴンスセンスの力を理解したって事か。
確かこれで5つ目だな、今までにあった能力は『治癒』『心眼』『覚醒』『予知』だったな。今度の能力は一体どんなものだ?
「私の理解した力は『無効』、第六感からなる力は私に利かないんです。あの人から出た炎は第六感から出たもの、だから私が炎に包まれても利かなかったんです」
だからエリスの服だけが黒焦げで、身は無事だったって訳か。何にせよ、よかった……エリスが無事で。
エリスの笑顔を眺めるだけで安堵が込み上げて来る。そんな中、気が付くと俺はエリスを自然と抱き締めていた。
「ふえっ! ま、まま、まもる?」
「無事で……本当によかった……」
「まもる……」
はっ! な、何やってるんだ俺は! 馴々しくエリスに抱き付くなんて、今頃になって恥ずかし感情に支配されていく。さっとエリスから離れた。
「ご、ごめん! その……えっと、嬉しくてつい」
「あ……その……わ、私も……」
何かを言い掛けたその瞬間、黒焦げになっていた服がパラパラと崩れ落ちて行った。
“全部”の服が落ちた。
「あぅ? …………あ!」
エリスはようやく事態を把握した。そう、黒焦げの服が全部地面に落ちて、生まれたままの姿になっていた!
エリスの肌が全部見えている! 真っ赤な顔をして俺は直視してしまった。
「き、きゃあああああああああああああああああ!」
素早く両腕で胸を隠し、その場にしゃがみ込んだ。俺も反対側を向いて肌を見ない様にした。
「ご、ごめんエリス!」
「うぅ……こ、こっちを見ないで下さいね?」
後ろからガサゴソと音が聞こえる。多分荷物から予備の服を着ているんだろうな。
それにしてもなんて綺麗な体……あああああああ! 何考えてんだ俺は! 嫌らしい、エリスをそんな風に見るなんて俺の馬鹿野郎!
「あの、もう向いてもいいですよ」
振り返ると水色のワンピースを来たエリスがいた。やっぱり何着ても似合うな。
「……って! 見とれてる場合じゃない! エリス、ここを離れるぞ!」
周りは火が回り始めて俺達を囲みそうな勢いだ。急いでその場を後にした。
◆
まさかフォルティスが巫女を匿っていたとは、私、リヴァーレは驚いていた。
「リヴァーレ、巫女はどこに行ったんだい?」
傍らにいたカーラが質問する。
「森の奥だ。私でもこの先は分からない。色んな場所に通じているからな、森の周辺の村を調べた方が早い」
「そう、ならあたいに任せな、この森の周辺の村に潜入している部下から情報を仕入れるからさ」
フォルティスの事は後回しだ。今は巫女を捕まえる事が先だ。
私達は巫女を追ってこの場を去った。




