不良セクター!(パターンA)
新学期一番初めの席替えで、あろうことか、僕は一番近寄りがたいことで有名な『松岡 竜二』の隣の席になってしまった。近寄りがたい理由として最も多く挙げられているのはそのビジュアルだ。
イタリア人の母と、日本人の父を持っていいるためか、髪を染めているわけでもないのに金髪っぽい。しかも父は企業ヤクザをやっている。なのでコイツ自身が喧嘩に巻き込まれることも少なくはないと思う。一般的な言い方をすれば、不良である。
不良のはずなのにコイツはいつも朝来るのが早い。部活をやってないくせに早い。そして自分の席に行き読書をしている。ブックカバーで覆われているので何を読んでいるのかは不明だけど、よく笑いをこらえてる姿を見かける。そんなに面白いのか。その本。
まぁ僕も人のことを言えないんだけど。僕が読む本は専ら、ラノベである。よく聴く曲は、人工音声で作り上げられた曲ばかりで、映画鑑賞をしようものなら、魔法少女ものだったりするいわゆるオタクだ。
(あ、この本の続刊今日発売だ。帰りに本屋でも寄るか…)
なんてことを考えながら今日も退屈な日々を過ごすのだろう。と思うと急に気が重くなる。
松岡がさっきから聞いている曲がところどころ耳に入ってくる。この曲どっかで聞いたことあるな…
***
本屋に絶対、不釣り合いな人が入っていくとこを見かけた。
松岡だ…
経済の本とかでも買うのかな?
まぁ僕の行く方には来ないだろ。と思っていたのが運の尽きだったわけだがこの時の僕はまだそのことを知らない。
「……っ!」
ラノベゾーン(勝手に命名)に松岡が入っていくだとっ!?
「…」
しかも、目当てのモノを探している感じだ。って顔を綻ばせたぞっ!?なんだ?探してたものがあったのか?なら今すぐ立ち去ってくれ。
僕は、そう思いつつも好奇心で彼の持っている本を見てしまう。そして、硬直する。あ…あれは僕も買おうとしていた本つまりはラノベではないか…
あいつは雑食なのか?それとも…。真相を確かめるべく本を手早く買い、松岡の跡を追う。彼が途中で、横道にそれる。何だあそこで開けるのか…?
ってかいつの間にかコンビニの袋が増えてるし!
「いつまで隠れてるんだ?ほら出てこいよ。」
松岡が言った。バレていただと!?僕の影の薄さは目の前にいても呼ばれるほどだぞ!?ここまで思考がいったところで、猫が鳴いた
「ミャー」
「よしよし…腹ァへってんだろ?」
松岡竜二という人物のイメージが一気に崩れ去った。それは、例えるならドミノみたいに。松岡がドミノになって次々倒れている姿を想像してしまった
「……ッ」
さっきとは違う意味で息を止める。
ハァ……ハァ…。やっべ死ぬ。これ以上あいつに関わったら腹筋が割れて死ぬ!立ち去ろうとする僕に覆いかぶさるようにして出来た影。
「鎌北……どこから見てた?」
と、影の主が話しかけてくる。嘘をついたと発覚した瞬間殺られる!!と僕の野生の感が告げていたので、洗いざらい全て話すことに。話の途中から松岡が身悶えし始めたがそのまま話しきった
「俺の生態が知りてぇだとか言ったな。ここまで知られたら隠しようもねぇから言っちまうけどよ。俺可愛いモンには見境がつかなくなっちまうんだよ」
つまりは、こいつも僕と同類。オタクちゃんなのだ。朝聞いてた曲に聞き覚えがあるのも納得である。
「チッ…俺のひみつ誰にも言うんじゃねぇぞ」
彼は、竜二は恥ずかしそうにそっぽを向いていった。
――うん、と口にしたかどうかは定かではないが、僕の意志は伝わった。
竜二は優しく笑った
Fin.
どうでしたか?