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出来損ないのヒーロー

 この世界にヒーローなんかはいない。




そのことに気づく事は、当然というか、必然というか、自然の定理とでも言うべきだろうか? 小さくて弱い頃の私は誰かが守ってくれるという根拠も無い幻想を抱いていた。


「…………けて」


 暗くて、狭くて、赤錆の匂いが鼻を突いく、さっきまでそこにいた子の泣き声も聞える。もうここに何時間私はここにいるのだろうか。


「……助けて」


 何回もつぶいたこの言葉は誰にも届かない。


「助けて」


 ヒーローなんていないそんなこと知っている、それでもわらにもすがる想いでつぶやき続ける。


「助けてっ!」


 恐怖と不安で、次第に声も大きくなっていく。前の子の声も止んだ、次は私の番だ。


「嫌っ、やめて助けてぇっ!」


「暴れるな、さっさと歩け」


 黒服の男に頬をぶたれる、痛みがいっそう恐怖を増幅させる。


「嫌……、誰か……助けて」



 

「間に合ったか」


 この世界にヒーローなんていない。そんな私の定説はことごとく打ち砕かれた。


「誰だテメェ」


「言ったてしかたねぇだろ、お前みたいなモブキャラに」


「ん、だ……と……」


 私を抑えていた黒服の男は台詞を言い終わる前に崩れ落ちた、そして気づいたときにそいつは私のすぐ近くにいた。黒髪、黒眼、身長は175くらいの男。


「ハートの3、中々の数字だ」


 人差し指と中指の間に一枚のトランプが挟まれていた、それはやがて光になり消え去った。


「さて、帰るぞ」


「あなた……誰?」


「ん、俺? おれの名前は……」


「まてよ、誰だか知っらんが生かして返すか」


 他の黒服の男が部屋の中に侵入してきた。


「ったく、めんどくさい」


 トランプの束を取り出し、上から一枚をめくる。


「がっ」


 今度は台詞を言う前に吹き飛ばされる黒服の男。


「クローバーの2、いいねぇ」


 その指に挟まれていたカードは光になり、また消えていく。


「ほら急ぐぞ、また奴らに来られたらたまらん」


 彼は手を差し出してくた、こちらからも手を伸ばす。


「そうそう、俺の名は札切光ふだきりこうだ」


「私は……」


暗雲明(あんうんめい)だろ? 知っているさ」


 誰かが走ってくる、かなり近くをだ。


「ったく、しゃぁねぇな」


 またトランプを取り出す、また上から一枚引く。


「…………」


「…………?」


「よし……逃げるぞ」


「逃げるって、戦わないのさっきみたいに」


「いいから13秒だけ黙って逃げろ」


「わ、わかりました」


「まちあがれ!」


「ハートの13、ったくついてないよ」


 再びカードは光になって消えていく。


「いったい何なんですか、それ?」


「俺の能力(スキル)


「あぁ、知ってます、教科書に載ってました、たしか30年位前の革命で公に認められたって、本物初めて見た」


 またカードの束から1枚引く。


「何言ってんだ、お前も能力者じゃないのかよ?」


「違います、私はただの一般人です」


 顔に手を当ていかにもガッカリという仕草をしてみせる。


「おいおい、どういうことだおい」


「私も知りません」


「ったく、うげっ今度はダイヤの12かよ」


 表にしたカードが示した数字はダイヤの12。


「私が聞きたいですよ、何がどうして、こうなのか」


「後で話す、無事逃げ切れたら」


「意味がわか……」


 耳を突くような音が聞こえたと思うと、何かが真横が通過する。


「これって……」


「所謂、銃弾ってやつだな」


「だ、だいじょぶなんですか?」


「いいから逃げろ、とにかく逃げろ、さっさと逃げろ」


 いつ死んでもしかたないというそんな恐怖のせいか、涙が頬を伝う。


「ぐっ」


 急に光が跪く。


「大丈夫ですか?」


「撃たれた、痛い」


「ちょっと」


「いいからお前は逃げろ」


「そんな事できません」


「じゃあ逃げんな」


 きびすを返したように先ほどと違う事を言う。


「え?」


「もう逃げなくてもいい」


 一枚のめくられたカード、絵柄は。


「ジョーカー最高についてるね」


 いつの間にか追手の足音も、銃音も、光が打たれた傷も全て消えている。


「さて、行こうか」

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