二色の百合
愚行権。今日知った言葉だ。早速行使する。
今年の春に野球部の男子に告白されて私は彼の彼女になった。
だけど彼は私ではなく野球ばかりみている。
ような気がする。
私は肌が白い。それは古来七難隠すというそうだ。
確かに私の肌はささくれて荒んだ色の私の心を隠してくれている。
そしてそれに騙された哀れな男子が私の彼氏だ。申し訳なさが先に立つ。
何を話しても何か言い訳をしている気分になる。
昨日、誰もいない学校裏にある芝生の広場で彼氏に何かをささやいた。
何を口にしたかは覚えていない。青春に恋愛を掛け算したようなセリフだった気がする。
今にして思えば贖罪だったのかもしれない。
私なりに勇気を振り絞った。
ような気がする。
彼氏はとまどいはにかんで一人駆けて行った。
愚行権、使わせてもらう。
いま私は褐色の健康的な肌色をした幼馴染と一緒に草っぱらに寝転がっている。
ここで昨日私は私の彼氏に甘い言葉をささやいた。
復讐のような自棄のような。
その草っぱらで私は彼女と寝転がっている。彼女の左手は私に伸び、私の右手は彼女に伸び、指を絡め、お互いあやしく動かしている。
人差し指が、中指が、互いを求めあい握ったりはなしたりつかんだりする。
人間の触感がこれほどに背徳を刺激するものかと感心する。
彼女の指の腹が私の掌をなぜるたびに私は虹を見た。
一粒一粒はただの水滴。離れてみれば七色。うまく言えない。
ただひたすらいとおしいという感情がこみあげ、全身を支配する。
横目で私を見る褐色の彼女も同じだと確信している。
彼女は私の持たないものを全部持っている。
たぶん、いや確実に彼女も同じことを考えている。
私は自分の肌の色が気に入らない。彼女もまた自分の肌が気に入らない。
私にはわかる。彼女は私がわかっていることをわかっている。
もっともっと健康的な肌が欲しかった。
私は彼女のエキゾチックな目を見据えた。見据え返された。
赤らむ頬
彼女は私の朱にそまった白い肌に自らの頬を寄せてくる。
静かな吐息が肌に触れる。
近づきたい。指だけじゃない。頬だけじゃ足りない。全身で、彼女を確かめたい。
できるなら融合したい。一体となりたい。どうすればいいのか。
唇。
なまめかしいさくらんぼ。
私の唇を彼女のさくらんぼに重ねたらどうなるんだろう。
この好奇心は、この好奇心は。
彼女が私の後ろ頭に手を回した。
負けていられない。私も彼女の後ろ頭に手を回す。
二人の両手は互いの頭を近づける。
唇はやがて・・・
ズザアアアアアアアア!!
二人の体の間に男が滑り込んできた。
「俺は!百合の間に挟まる男!!」
今まで読んでいた百合小説はどこへ?
って顔しているな!!
残念だが、この小説の結末はコレだ!
じゃあな、読者諸氏。アデュー!




