SCENE25
・海辺・霧島写真館(数日後)
引っ越しのトラックが遠くに見える。
私服姿の大石と、少し厚着をした湊。
店内。霧島が、現像したばかりの写真を確認している。
カランコロン、とベルが鳴る。
霧島「いらっしゃい。……今日でお別れ?」
霧島はすべてを察していた。
大石「はい。明日から、俺は大阪の大学へ。湊は……ま他別の海の近くの療養所へ行くことになりました」
大石、少し寂しそうだが、晴れやかな顔をしている。
湊は店内をキョロキョロと見回している。初めて来た場所だと思っているようだ。
大石「霧島さん。いろいろ、ありがとうございました。あの夜、ここに来てなかったら……俺、逃げ出してたと思います」
霧島「感謝するのは私の方よ。あなたたちのおかげで、この店も随分賑やかになったもの」
霧島、カウンター越しに身を乗り出し、湊を見る。
湊と目が合う。霧島は、何も言わずに優しく微笑む。
湊もつられて、ふわりと微笑み返す。
湊「……素敵な写真ですね」
霧島「ありがとう。……あなたたちも、素敵だったわよ」
霧島、大石に向き直り、一枚の封筒を渡す。
霧島「餞別よ。……いつか、道に迷った時に開けなさい」
大石「……はい。大事にします」
帰り際。ドアの前で大石が振り返る。
大石「霧島さん! 俺、立派なカメラマンになりますから! いつかまた、撮りに来ます!」
霧島「ええ。待ってるわ。……行ってらっしゃい」




