SCENE22
台風一過のような、突き抜けるような青空。
窓から差し込む朝日が、白いシーツを眩しく照らしている。
湊はベッドの上で、窓の外の鳥を目で追っている。
その表情は穏やかだが、昨日のことを覚えている様子はない。
ガラッ!!
勢いよくドアが開く。
大石が入ってくる。
昨夜のずぶ濡れの姿ではない。制服をピシッと着こなし、髪もセットし、何よりその顔には「太陽」のような笑顔が戻っている。
大石「おはようさん! ええ天気やな湊!」
湊、驚いて振り返る。
やはり、その瞳に「親友」を見る認識の光はない。
湊「……あ、おはようございます」
湊は少し戸惑い、申し訳なさそうに首を傾げる。
湊「えっと……昨日の、ボランティアの方……ですよね?」
残酷な忘却。しかし、今日の大石は怯まない。
眉一つ動かさず、スッとベッドの横に立ち、真っ直ぐに手を差し出す。
大石「ちゃうで。……初めまして、や」
湊「え?」
大石「俺は、大石陽向って言うねん」
大石は、湊の目を逃げずに見つめる。
大石「お前のクラスメイトで、隣の席で……お前の、一番の親友や」
湊「親友……ですか?」
(困惑して)
「すみません、私、どうしても思い出せなくて……。失礼ですよね、親友なのに」
大石「ええねん! 謝んな」
大石、躊躇う湊の手を取り、力強く、でも優しく握り返す。
その手は温かい。
大石「忘れたら、また覚え直したらええ。今日からまた、俺のこと知ってくれたらええんや」
「俺は、おもしろいぞ~? 飽きさせへんで!」
湊「……ふふ」
大石の底抜けの明るさと、掌から伝わる体温に、湊の警戒心が解けていく。
自然と口元が緩む。
湊「なんだか……大石さんといると、すごく温かい気持ちになります。……懐かしいような」
大石「せやろ? それが『心』が覚えとるってことや」
大石、鞄からりんごとナイフを取り出す。
大石「よっしゃ、今日は林檎の剥き方教えたるわ。俺、昨日YouTube見て練習してきてん! ほら、見てみ!」
不器用な手つきで皮を剥く大石。
それを見て笑う湊。
記憶はなくても、二人の間には確かに「幸福な時間」が流れ直す。




