SCENE17
海辺・霧島写真館(夜)
湊の入院が決まり、荷造りを終えた陽向はその足で霧島の元を訪れた。
陽向がカウンターでコーヒーを飲んでいるが、味など感じていない様子。
店内にはジャズが静かに流れている。
大石「……あいつ、来週から入院ですわ」
霧島「……そう」
霧島は驚かず、静かにグラスを磨き続ける。
大石「『療養所』なんて綺麗な名前ついてますけど、要は隔離ですよ。……あいつ、まだ17歳やのに」
「俺、悔しいんです。卒業まで守ったるって言うたのに……結局、大人の理屈に負けて、あいつを檻に入れるんを手伝うてもうた」
大石、拳を握りしめ、カウンターを弱く叩く。
大石「俺は……無力です。あいつの隣におってやる資格、ないんかもしれん」
霧島「……檻じゃないわ」
霧島の手が止まる。大石を見る眼差しは鋭く、そして優しい。
霧島「シェルターよ。嵐から、彼の心を守るための」
「あなたが無力? ……そんなことない。あなたがいたから、彼はここまで『普通の高校生』でいられたのよ」
大石「でも、これからは離れ離れです。……毎日会えんくなる」
霧島「距離なんて関係ない。……怖いのは『離れること』じゃなくて、『忘れられること』でしょう?」
大石、図星を突かれて息を呑む。
一番恐れていることを、霧島に言い当てられる。
大石「……怖いです。環境が変わったら、あいつ、一気に進んでまうんちゃうかって」
「今度会うた時……俺のこと、覚えとるかなって」
霧島、温かいコーヒーを大石の前に押し出す。
霧島「大丈夫。……『記憶係』なんでしょう? 彼が忘れても、あなたが覚えていれば、二人の関係は消えない」
「行きなさい。笑顔で送り出してあげるのよ」
大石(コーヒーを見つめ、少しだけ顔を上げる)
「……はい。俺、あいつの前では絶対泣きませんから」




