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SCENE10
・通学路の坂道
自転車を押して歩く二人。
空は紫色に変わり、一番星が見え始めている。
大石「あー、喉渇いたわ。お前なんか奢れや~」
湊「ええ? 大石が勝手に行ったんじゃないか」
大石「人聞き悪いなぁ。命の恩人やぞ?」
湊「ふふ、わかったよ。ジュースでいい?」
穏やかな会話。ふと、大石が立ち止まる。
前方の街灯がチカチカと点滅している。
大石「……なぁ、湊」
湊「ん?」
大石「もし、また怖なったら、すぐに俺を呼べ」
大石、前を向いたまま言う。
大石「俺はどこへも行かん。お前が俺を忘れても、俺はお前を覚えとる。……今日、あそこで誓ったんや」
湊、大石の大人びた横顔を見つめる。
湊は、そっと自分の小指を、ハンドルの上の大石の小指に重ねる。
湊「……うん。信じるよ、記憶係さん」
大石「……おう。任せとき」
大石が自転車に跨り、ペダルを強く踏み込む。
「乗れ! 後ろ!」と言われ、湊が荷台に飛び乗る。
坂道を下りていく二人。
湊(この温もりを忘れる日が来るなんて、この時の僕は、まだ信じられずにいた)




