死のくじ引き
「さぁ!どうぞ!1枚引いてください!」
七三にスーツ姿の男は突然、目の前に現れた。
とてつもなく大きな抽選箱の中には、三角形のくじ引きが大量に入っていた。
抽選箱を挟んで向かい側には、髪の毛を七三にまとめたスーツ姿の男。男は笑顔で繰り返して言う。
「ささ!どうぞ!どうぞ!」
「……。」
俺は抽選箱から1枚引いて、三角形の長辺から半円状にちぎりとって中身を確認する。
中身は白紙。
七三の男が言う。
「あらー!残念でしたねぇ!」
「……。」
その日から、その男は毎日現れた。
部屋の中、寝室、職場。1日を通して、最低でも5回。多い時だと10回以上。
その度に、俺は抽選箱の中から1枚くじを引く。
毎回出るのは白紙のハズレ。
「残念でしたね!ハズレですねぇー!」
「……。」
男は今日も言う。
そうして、10年が過ぎた。
抽選箱の中のくじ引きは、まだまだ大量にあるが、初めの頃に比べると、ほんの少しだけ減った気がする。
そして、俺は変わらず、毎日ハズレのくじを引く。
さらに5年が過ぎたある日、俺は初めてその男に声をかけた。
「……これって。アタリってあるんですか?」
すると七三の男は笑顔で答える。
「勿論!ありますよ!」
だが、その日もハズレのくじを引いた。
また5年が過ぎたある日、今度は七三の方から話しかけてきた。
「あちゃー!今日もハズレですね!大丈夫ですよ!60年、毎日引き続けても、ハズレの猛者も居ますから!頑張って下さい!」
「………。当たったらどうなるんですか?」
俺のその質問に、七三は変わらず笑顔で答えた。
「死にますよ!」
「……。」
それでも俺は毎日くじを引いて、さらに15年が過ぎた時。
いつも通りにくじを引いて、長辺から半円状にちぎり取って中身を確認する。
中はいつもの白紙ではなく
"死"の文字が書かれていた。
七三の男が言う。
「おめでとうございまーす!!アタリましたね!!!」
「……。」
それでも懲りずに、その日の晩にくじを引こうとすると、抽選箱の中身は"死"と書かれたくじ引きだけで溢れ返っていた。
七三の男が言う。
「あちゃー。ごめんなさい。一度当たると、だいたいこんな感じなんですよね。」
「……。」
俺は"死"と書かれたくじ引きを1枚引いた。
その日から七三の男は現れなくなった。
男が現れなくなってから、息が出来なくなっていった。1人でトイレにも行けなくなった。
そして、翌年。
俺に"死"が当たった。
56歳だった。
題材:タバコ




