第五話:フロンティアで楽しい拠点作り
俺たち四人は、フロンティアの街から遠すぎず、近すぎない、静かな森の平地に立っていた。
「うーん、どう思う?」
「街からほど近くて、よろしいかと。」とシーナ。
「主が決めたなら、それでいい。」と男らしいミリア。
「どうせ主様は遠いとか言い出すんだから街中で」とガンド。
「…おい、ガンドお前さあ…」
「あ、いや反対ってわけじゃありませんぜ!?もちろ・」
「ガンドの意見は最高だ!即採用だ!よーし街に行こうぜ」
俺はニヤリと笑った。
緩く自由に生きると決めたんだ。
どうせなら街中に建てて、快適に過ごしてやろう。
しかし、ふと我に返る。
「…いや待てよ」
俺はソフト帽のつばを上げた。
「街中の空き地にいきなり家を建てたら、土地の権利関係がクソめんどくさいことになるな。税金、住民の苦情、衛兵の立ち入り、やだやだ、めんどくさい」
「シーナ、ミリア」
俺は指示を出した。
「商人ギルドへ行くぞ。昨日、儲け話もっていってるし、俺たちの快適な拠点探し、手伝って貰ってもいいんじゃない?」
――フロンティア・中央商人ギルド
俺は3ピースのスーツにソフト帽を纏い、三人を伴って商人ギルドのギルド長室を訪れた。
ギルド長は、昨日5億金貨という巨額の取引を成立させた俺の顔を見て、満面の笑みで迎えた。
「これはダイキチ様!昨日は誠にありがとうございました!あれほどの品を扱わせていただき、ギルドの名声は高まるばかりです!」
俺は椅子に深く座り、まるで雑談でもするかのように話を切り出した。
「いやあ、ギルド長さん。実は、俺、このフロンティアの街中に家を建てたいんだけどね。どうせ住むなら、一番快適で、誰も文句言わない場所がいいんだよね。でも、土地の権利とか、移住の手続きとか、ああいうのって、本当に面倒でしょう?」
俺は、ギルド長の顔をまっすぐ見て、アイテムボックスから、ジルコニアの5カラットの指輪をだした。
「そこでさ。ギルド長さんの顔を立てて、一番面倒がない土地を、俺に紹介してくれないかな? もし、そこにちょっと邪魔な建物があったとしても、俺がちゃちゃっと片付けてやるからさ」
ギルド長は指輪から目を離さずに、俺の意図を察した。
この男は、金は出すが、一切の面倒を嫌う。
そして、邪魔なものは力で排除するのだと。
「な、なるほど…!ダイキチ様のような方には、煩雑な手続きは無用です。実は、フロンティア中央の商業地で、長年係争地になっており、古びたまま放置されている『旧物資管理支所』がございます。場所は最高の立地ですが、呪いがあるだの、権利が複雑だので、誰も手を出せない場所でして……」
「呪い? 権利? 面倒な話だねえ」
俺はカラカラと笑った。
「じゃあ、しようか。さっさと権利書を俺の名義にしてよ。そして、誰も邪魔しないよう、ギルドの人間を配置してくれない?。ああ、払いはその指輪で足りるかな?」
ギルド長は歓喜した。
長年の負の遺産を、金で処理し、さらにまた名声が高まる品を売れるのだ。
フロンティア・旧物資管理支所跡地
俺たちは、衛兵や野次馬の視線に見守られ、最高の立地にある古びた建物の前に立った。建物はボロボロで、見るからに「曰く付き」だ。
「よーし、ここが俺たちの新しい拠点だぞ。」
「ご主人様、この建物は……」
シーナが眉をひそめた。
「心配すんな。邪魔だから片付ける」
俺はソフト帽を深く被り、邪魔だから片付けようと思う
ブツン……
音もなく、塵一つ残さずに、古びた建物は空間から消滅した。ギルドの人間は目を丸くしているが、何も言えない。
曰く付きの雰囲気や空気感まで片付いている。
俺は衛兵たちに向けて、ニヤリと笑った。
「ちょっと掃除して。チャッと均して、と。さてと、ログハウスをだすぞー。」
「(アイテムボックス、ログハウス出す)」
音もなく、最新鋭のウォシュレット付きログハウスが、フロンティアで最も立地の良い場所に出現した。
俺はログハウスの中に入り、冷蔵庫からビールを取り出す。
「いやあ、やっぱ街中は快適だわ。ガンド、お前は娼館に行ける券をやろう。ミリア、シーナ、お前たちはビールだ。面倒なことは全部終わらせた。あとは緩く過ごすだけだ」
いやー、美人に挟まれて飲むビールは最高!!




